私は、俗にいう捨て子だ。まだ乳を飲むこともおぼつかない頃に、教会の前に棄てられていた。そして、同じく教会の前に棄てられていたらしいロイとは生まれた時から一緒に居る。
けれど、ロイと私の身体が違うのは、薄々勘づいていた。
元々教皇様が、私はこの身体の所為で捨てられていたのだ、とおっしゃられていたのも、今になってみればよく分かる。
ロイは私よりもずっと体格も良くて筋肉もついている。一方の私はといえば、筋肉はつきづらいし、全体的に細く丸っこく、基本が女性なのだ。
なによりも下半身が違う。私には、所謂性器が二つある。男性の性器と、それからその後ろには隠れるように女性の性器が。産まれた私を見た母親は、さぞかし驚いたことだろうと思う。珍しい白銀の髪に翆の目、それだけでも人の噂を呼ぶだろうに、よりによって性器が二つもついているのだから。
棄てられたのも致し方ない、とも思う。こんな子供は、誰だって不気味でいやなはずだ。だから私は親の愛情というものを諦めていた、何もかも、諦めていた。
けれどもロイは、幼馴染の大切なロイは、私がそんな身体だということも気にせずに一緒に暮らしてくれている。教皇様も、こんな私を可愛がってくれる、非常に有難い存在だった。
二人と出逢えてなければ、私はきっとどこかで野垂れ死にでもしていたか、さもなくば見世物小屋にでも売られるか、好事家の貴族にでも買われるかしていただろう。
そうならなかったのは、ひとえに教会に私を棄てた両親のお陰だから、それだけは感謝しなければならないかもしれない――最も、両親というものに、何の感情も持ってはいないのだけれども。
そんなある日。私は胸に違和感と苦しさ、そして痛みを覚えて目が覚めた。
そして、着替えようと衣服を脱いで裸になると、胸がほんのりと膨らんでいることに気が付いた。そういえば、ここ数日乳首が疼いていたのを、思い出した。
それはまるで女性のような膨らみで、私はぞっとした。
またこのおぞましい身体が変わってゆくのかと思うと、ひどく怖かった。その恐ろしさに、私はとっさに、ロイを探した。
「ロイ!ロイ!!どこにいるの?!」
ロイは私よりも早起きをして鍛錬をしていた。
私の叫び声を聞くとすぐさま駆けつけてくれて、混乱している私を落ち着かせるために、優しく抱きしめてくれた。私はロイに抱きしめられると、どんなことがあっても落ち着けるという事を、よく知っていたからだ。ロイの体温と心音を感じると、私の恐怖心はあっという間に消えてなくなってくれる。
「テメノス、どうしたんだい?朝からそんなに大きな声を出して。びっくりするじゃないか」
「ロイ、ロイ……私の……身体が……」
そう言って、恐る恐るロイに私の胸を触らせる。ロイの体温を感じた瞬間、顔から火が吹き出しそうなほどに熱くなっていた。恥ずかしい、恥ずかしくてたまらない。どうしてだろう。今までロイに触れられたって、そんな感情は持たなかったのに。それもこれも、この身体が変わってしまったせいだ。
ロイも膨らみに気が付いたのか、私の顔をじっと見て、それからにっこりとやさしく笑った。
「大丈夫だよ、テメノス。何も怖いことなんてない。ただ、君が、大人になっているというだけだよ」
ロイの優しい言葉を、私はオウム返しにして問う。意味が、わからなかった。
「私が、大人に?」
「そう。君は今でもとっても可愛らしいから、きっと綺麗なひとになるんだろうね。ああ、でもそうしたらお嫁に出さなきゃいけなくなるな……それは、ちょっと、いやかなり嫌だな……でも君の秘密を知ってるのは僕と教皇様だけだから、僕がお嫁さんにしたっていいのか……」
ロイは何やら独り言のように小さくぶつぶつと呟いている。その様に不安になり、ロイの名を呼んだ。
「ロイ?」
「あっ、ごめん、なんでもないよ。それより朝ごはんを食べよう。準備はしてあるんだ。大丈夫、何も心配しないで、テメノス」
ロイがぽんぽん、と優しく頭を撫でてくれる。その温もりに少し安堵を覚えるけれど、自分自身の未知な変化に対する大きな不安が拭いきれることはなかった。
「うん……ロイが、そういうなら……」
怖さが拭えない私はロイの衣服をきゅっと握って俯く。
「テメノス~?何時までもそんな顔をしていると、美人が台無しだぞ?」
揶揄うようにロイが私の鼻をつついてから、ちゅ、と頬に口づけをしてくれた。ロイの唇は暖かくて好きだ。ロイにこうやって口づけをしてもらえると安心する。私が私でいられる気がするからだ。
「ロイ、もっと、して?」
「……仕方ないなあ……」
こうやっておねだりをすると、ロイは唇に口づけをしてくれることを知っていた。いつもは額や頬、鼻ばかりだけれど、唇に唇が重なると、胸がどきどきする。今日も、膨らんできた胸の奥がどきどきした。ロイの端正な顔が間近にあって、それもどきどきする原因なのかもしれない。
さりげない口づけを角度を変えて繰り返して、そうして私たちは離れた。
「さ、ご飯を食べよう。そしたら教会に行って、今日の仕事をしないと」
「うん。ありがとう、ロイ。私、少し落ちついたよ。教皇様にもお話をしないといけないかな」
「そうだね。君の場合は特別だから、ちゃんと報告しておいた方がいいと思う。きっと、喜んでくれるよ」
私の胸は日に日に膨らんでいった。
それが怖くて、不安でたまらなくて、痛くてロイに訴えたこともあったけれど、ロイは大丈夫、としかいってくれなかった。触れるのだって怖い。
本当に大丈夫なんだろうか。それに、気が付いたらつるりとしていた股の間もなんだか襞のようなものができている。私の身体は一体どうなってしまうのだろう。やっぱり怖い、とロイに伝えよう。そうしてロイの笑顔を見れば私は安心できるから。
「テメノス、こんな夜中にどうしたんだい?」
「ロイ……胸もだけど、股もおかしいの、ロイ……なんだか、裂け目が大きくなってきていて……怖い」
かたかたと震えながら言う私をロイは何も言わずに優しく抱きしめてくれた。そして背中をさすってくれる。
やっぱり、彼の体温は何よりも安心できた。
それと同時に、今は胸の奥がどきどきした。
ロイに触れられて、私は緊張している?それにしてはちょっと違うような気もする。ロイに触れられて、嬉しかったことはあっても、どきどきするようなことなんて、今までなかったのに。
「君は人と変わってるかもしれない。でも、僕の大切な家族だよ。僕はテメノスがどんなふうに大きくなって、綺麗になっていくのか、楽しみなんだ。だから、大丈夫。教皇様も仰っていただろう?心配はいらないって」
「でも……」
「う~ん、そしたら今日は一緒に寝ようか?」
ロイの大胆な提案に、私はびっくりする。確かに、小さい頃はロイと一緒に寝ていた。けれど、私の胸が膨らみ始めた頃から、別々に寝る様に、と教皇様に言われていて、私たちは律儀にそれを守り続けていたのだ。
「でも、教皇様はもう一緒には寝るなって……」
「大丈夫、一晩位バレやしないって」
悪戯っ子みたいなロイの顔を見ていると、恐怖心は吹き飛んでいた。そして私はロイと一緒の寝台に入って毛布を被る。それでも少し窮屈で、私はロイに背後から抱き着いた。
「テ、テメノス、……それは、ちょっと……」
「駄目?」
「ダメ、ではないんだけれど……その……君の……ああもう……寝よう、寝よう!」
ロイがハッキリしないのは珍しい。けれども私はその時のロイの葛藤の意味などわからずに、逞しい背中に安堵して眠りについたのだった。
ロイの葛藤の意味が本当にわかったのは、数年後だった。その頃には私の胸もそれなりに膨らんではいたけれど、一般的に言えばまだ小さい方だった。
腰はますます細くなって、肩も足も腕も、なんだかロイと比べると丸くなっている気がする。それででも股の間には二つの性器がついているから、やっぱり私はいびつなんだと思う。
その日、私の股から血が出てきたのだ。私は真っ赤に染まった下着とシーツを見て青褪めて、またロイを大声で呼んだ。
「ロイ!どこにいるの?!ロイ!」
「テメノス……っ、……それ、は……」
今度はロイはすぐに来てくれて、それからすぐさま私のシーツと下着を洗濯してくれた。そして私を教皇様のところへ朝食も食べずにつれてゆき、事の次第を話したのだった。
「ふむ……やはり、そうか……。以前からそうかもしれぬとは思っていたが、テメノスは妊娠できるのかもしれんのう」
「妊娠……」
私は、言葉の意味がよくわからなかった。ロイはわかったらしく、顔を白黒させて深く考え込んでいる。どういうことなのだろう。
「ロイ、妊娠って?」
「テメノス、つまり、……その、……君は、子供を身籠ることが出来る、っていう、ことだよ」
「子供を?」
「そう……だね……」
ロイの元気がない。どうしてだろう。
「ロイよ。これからは余計気をつけねばなるまい。お前も、テメノスの事を良く見ておいておくれよ」
「はい、教皇様。テメノスは僕の大切な、家族ですから」
そういうロイの横顔がどこか大人びていて、別人のようで、なんだか私はまた胸の奥がどきどきしていた。
「ねえ、ロイ。私とロイとでも、子供は作れるの?」
それからしばらく経った日。晩御飯が終わってから、ロイに、私は尋ねてみた。するとロイは驚いた顔をして、慌てる。
「て、テメノス?!何を急に……」
「だって私は、ロイ以外には……身体を見せられない」
「……それも、そうか」
ロイは小さな言葉を口にする。その内容が良く聞き取れなくて、私はロイに近づいた。ロイはまだ私を見てくれない。なんだか不穏な空気を感じて、ロイの顔を覗き込むと、恐ろしく真剣な顔をしていた。
「ねえ、ロイ?」
「そっか。そうだよね。……君は、最初から僕のものだったんだ……ねえ、テメノス。これからすることは、教皇様には内緒だよ?いいね?」
ロイはそういうと、顔を上げて私の目をじっと見つめてきた。私は、よくわからないけれど、頷いてみせる。
するとロイは私の衣服を脱がし始めた。私は意味が分からなかったけれど、ロイのやることだから、とされるがままにしていた。
最初は法衣を。そして、次に薄いチャーチスモッグを。下着まで手がかかると、ロイは少しためらった様子だったけど、意を決したようにすっかりと取り払ってしまって、生まれたままの姿でロイの前に立つことになった。
胸はふっくらとそれっぽく見えるくらいには膨らんでいて、ツンと立ち上がった桜色の乳首が乳房の割に少し大きく、ぷっくりとした乳輪も空気に晒されてやたらと目立つ。
腰はロイよりもずっとずっとほそくて、全体的に身体は小さい。
何より股の間には外性器がついていて、その後ろには襞のある割れ目があるのだ。
ロイは私の裸になった姿を頭のてっぺんから爪先まで視線で眺めてから、満足げに、とても優しく微笑んだ。
「テメノス。綺麗だよ……君は、とっても、綺麗だ」
「そんなことを言うのは、ロイだけ。多分、世界中でも、ロイだけだよ」
哀しそうにそういうと、ロイは頭を撫でてくれた。
「そうだね。君のこんな姿を見ていいのは、僕だけだから。綺麗だよ、テメノス」
ロイは私の肩にゆっくり触れると、寝台へと横抱きにして運んで寝かせてくれた。
シーツの海に静かに私は落とされて、続けてロイが乗り上げてくる。ロイは異端審問官の法衣を着ていたけれど、それを私の前で脱ぎだした。
「ロイ、いいの?折角教皇様から頂いた、異端審問官の制服なのに」
「いいんだよ、これからすることには、必要がないから」
「これからすること?」
「うん。分からないことだらけで、少し怖いかもしれないけれど、大丈夫。僕の言うことを聞いてくれるよね、テメノス?」
「うん、ロイの言うことなら私は聞くよ。怖くもない。だって、ロイのすることだもの」
そういうとロイは私にゆっくりと口付けをしてくれた。それも、唇に。
それがとても嬉しかったのだけど、今日の口付けはちょっといつもと違っていた。ロイは私の下唇を食んで、舐めてきたのだ。
それから舌が入り込んできて、私はびっくりしたけれど、ロイの舌が私の舌を絡めとるから、同じようにすればいいのかと思ってロイの舌に私の舌を絡め返した。するとロイは驚いたようで、少し鼻を鳴らしてからにっこりとして、舌先で私の歯列をなぞってきた。私はどうしていいかよくわからなかったもだけれど、ロイと同じようにしたくて、ロイの舌を舌先で追った。すると、唇の脇から唾液がこぼれてきて、ぽとりと落ちる。それが透明で、なんだかとても奇妙な気持ちになってきた。気持ちがふわふわになって、身体の芯の部分が、疼くような気がする。
「ふ、ぁ……」
鼻にかかった、変な声がする。ロイに変だと思われていないだろうか。
「テメノス、初めてのキス、上手だね。もしかして、誰かとしたことあった?」
「そ、そんなこと、ない!正真正銘ロイが初めてだよ!」
私は必死に否定すると、ロイは悪戯っぽく笑った。
「ごめんね、意地悪言っちゃって。あんまりにも上手だからびっくりしたんだ」
「もう!ねえ、ロイ。キス、続けて?もっと、して欲しい」
「うん、わかったよ、テメノス……」
ロイはそう言うと、また唇を重ねてくれた。けれども今度は私の膨らんだ胸にロイの大きな手が当たっている。そしてふにふにと柔肉を揉みしだくような動きをしていて、胸に触れられているはずなのに、なんだかお腹の奥が疼くような、熱くなるような奇妙な感じがした。
「はぁ……ん……っ、なに、これ……ぇ、脚の間と、お腹が……お腹の、奥、ヘン……」
「テメノス、おっぱいで感じてる……可愛いね……」
「感じ、る?」
「そう。気持ちがいいってこと。おっぱいにも、キス、してあげるね」
そういうと、ロイは私の乳首に唇を当てて吸い付いてきた。熱くてぬるぬるとした感覚に乳首が含まれる。すると、また、お腹の奥の方が変な感じが強くなった。それに、股の間が濡れている気もして、なんだか気持ちが悪いし、ムズムズする。
「ロイ、ロイ……なんだか私、おかしいの。お腹の奥の方が、変で……股の間も、濡れきて……気持ち悪い……」
「テメノス、落ち着いて、大丈夫。それが、感じてるってことなんだよ。テメノスが、今、おっぱいで気持ちが良くなってる証拠。もっとしてあげるね」
ロイが私の乳首を口に含んで転がしながら、もう片方の乳首を指先でころころと転がしたり、押したり、引っ張ったりすると、乳首から背筋にかけてぞくぞくとした感覚が走った。そして、また股の間がじわりと濡れて、何か得体のしれない熱いものが奥からとろりと流れてくる感じがした。絶対に、おかしい!こんなの、知らない!
「ロイ、怖い、私、おかしい……!ねえ、奥から何か、流れてくる、なに、これ、ロイ!」
「テメノス、怖がらないで。大丈夫、大丈夫だから……可愛いよ。それはね、テメノスが感じて、気持ちよくなってる証拠だから……大丈夫、怖くないよ」
ロイは私の胸から顔を上げて、もう一度唇に口付けをしてくれた。そうすると、私は少し安心できると知っているから。ロイの唇は温かいから。
そしてロイはまた私の胸を、今度は舌先で舐めまわし始めた。さっきよりは淡い感覚だけれども、乳首がぴんと立ち上がってしまって、ぬらぬらと濡れているからか、部屋のろうそくの光に照らされて、ひどく目立っていて、なんだか恥ずかしい。足の間もさっきからずっと濡れっぱなしで、ぐちゃぐちゃで、落ち着かない。それに何よりも、脚の間がじんじんと熱くて、かなわない。
太ももはもうびしょびしょに濡れていて、シーツもきっと濡れてしまっている。それに私の股の間にある外性器がゆるく立ち上がっていて、こちらも透明な汁がてらてらと滲みだしていた。私、本当にどうしてしまったのだろう。
「ロイ、ねえ、ロイ……おかしい、おかしいよ、私……こわいよ」
「おかしくないよ。これが、気持ちいいってこと。ねえ、テメノス。そろそろ僕も気持ちよくなっていいかな?」
ロイが私を落ち着けさせるように頭を撫でてくれてから、額にキスをくれた。薄暗い中でよく見れば、私の膨らんだ胸は、ロイのキスの痕でいっぱいになっていた――紅い痕が沢山ついている、それだけのキスをされたのだ、と思うと、なんだか変な気持ちだった。嬉しいような、恥ずかしいような。
「ロイが?うん。私が出来るなら、気持ちよくなって欲しい」
「本当に?ありがとう。そしたらテメノスの初めて、貰うね」
「私の、初めて?」
「そう、君の処女、貰っちゃうよってこと。だって君は僕の大切な家族で、お嫁さんだから」
「私が、ロイの、お嫁さん……?」
ロイの言ってることがいまいちわからないけれど、ロイのお嫁さんだということは素直に嬉しかった。
お嫁さん、という言葉に私は笑顔になる。だって私はロイが大好きだったから。ロイ以外の男の人の事なんて、考えたこともなかったから。ロイはいつだって私に優しくて、私の事を見てくれていて、一緒にいてくれて、それが当たり前だったから。何よりも、ロイの傍は暖かくて、安心できるから。些細な物事を共有して、一緒に笑って。それが幸せだと感じていた。
家族っていうのは、きっとそういうものを言うんだと思っていたから。
「そう。お嫁さん。テメノスは僕のお嫁さんになるんだよ」
「うん、私、嬉しい。ロイのお嫁さんになれるの、とっても嬉しい……!!」
私の言葉に、ロイは少し驚いたみたいで、それから満面の笑みで応えてくれた。その笑顔を見て私も嬉しくなって、ロイの身体に触れてみたくなった。
「ねえ。ロイ。私もロイに触っていい?私も、触りたい」
「わかったよ、テメノス。そしたら僕も服を脱いじゃうね。ちょっと待ってて」
そう言ってロイは手早くズボンと下着を全部脱いでしまった。ロイの股の間にあった性器は、私よりずっと大きく立ち上がっていた。
「ごめん、怖いよね。君があんまりにも可愛いから、僕も我慢が出来なくなっちゃった。テメノス、痛い思いをすると悪いから、少し慣らそうか?」
「慣らす?」
私の言葉に、ロイはにっこり笑って頷くと、私の股に顔を埋めて私の濡れた割れ目を舐め始めた。
「ふふ、テメノスのここ、ピンクでとっても綺麗な色だ……」
するととんでもなく鋭い感覚がそこからぴりっと走って、私はびっくりして身体を震わせてしまった。ロイに触りたい、と思っていたのに、そんな余裕はなさそうだ。
「やぁんっ、ぁ、は、ロイ!何、コレ?!そんなところ、舐めちゃ、駄目っ!」
「テメノス、落ち着いて、ここを解さないと、僕のが入らないから……」
「ロイ、のが……?ロイの、……それ、が?」
それ、とは立派にそそり立っているロイの性器だ。
私の物とは全然違う、もっと大きくて、グロテスクで、どくどくと脈打っていて、見るからに怖い。でも、ロイは大丈夫だという。わけもわからず、私は泣きそうになっていやいやと首を振ると、ロイはまた頭を撫でてくれた。
「怖がらないで、テメノス。大丈夫だから。テメノスの女の子の部分は、こうやってゆっくりと優しくしてあげれば、僕のこれがちゃあんと入るんだよ」
そう言いながらロイは私の割れ目を、襞ごと指先で下から上までなぞるように動かして、それからゆるく立ち上がっていた外性器に触れる。ロイが触れる瞬間、その瞬間ごとにたまらなく背筋にぞくぞくしたものがのぼっていって、お腹の奥がずくりと疼いて、仕方がない。それにひっきりなしにくちゅくちゅと濡れた音がして、私は怖くなって、ロイにしがみつきたくなった。
「あぁんっ、やっ、なにっ、怖い……!何か、来る……!ぁあああああんっ!」
一瞬、目の奥で何かがはじけたように、真っ白になった。
「可愛いテメノス、可愛いテメノス……大丈夫だよ……それが、気持ちいいってことだから。全部、僕が教えてあげるから……。君を、女の子にしてあげるね……テメノス……」
「私が、女の子に……?」
「そう。君が、君と僕の子供を産むんだよ」
「私……が?そんなこと、できるの?」
「うん、出来るよ。だから、これからやることは、その為の準備。ね、びっくりしないで、僕に全部任せて……」
ロイの言葉を聞いていると、不思議と恐怖心が薄らいできた。
何よりロイは優しいし、笑ってくれているから、私も自ずと笑顔になれる。それに、ロイはたくさん口付けもしてくれた。だから、私は安心してロイに身を任せることにした。なんだか私じゃない声が出ちゃうのは、びっくりするけれど仕方ないのかもしれない。
「ほら、もうテメノスのここ、僕の指を二本も入っちゃってるよ……トロトロで、あっつくて、僕のおちんちんを待ってくれているんだよ……」
くにくにと私の濡れた襞を弄びながら、ロイが言う。その動きに都度感じてしまって、私の奥からとろりと熱いものがどんどん零れ落ちてきて、外性器もふるふると触れる。
「んっ……ぁ、そうなの?私のそこは、ロイのおちんちんを、待っているからそうなっちゃったの?」
「そう。僕のおちんちんが入りやすいように、テメノスの身体が準備してくれているんだよ、本当に可愛いテメノス……本当に、可愛い。大好きだよ」
「ん、うん、ロイ。私も、大好き……来て、ロイ……」
思わず言ってしまったセリフに、ロイは面食らったみたいで、けれども少し顔を赤くしながら、また私のおっぱいを揉みながら割れ目に指をゆっくりと入れて動かしていた。
「あ、ぁん……やだ、変な声……出ちゃう……おっぱい、きもちい……そこも、すごく、きもちい……」
「ふふ、テメノス、素直になってきたね……可愛いよ……本当に、本当に可愛い……」
ロイは私の割れ目に三本目の指を入れて、くちゅくちゅとかき混ぜ出した。するとびっくりするくらい気持ちのいい場所があって、私は思わずシーツをぎゅっと握って、歯を食いしばっていた。
「テメノス、声、我慢しないで?僕に、君の可愛い声を聞かせて欲しいな?」
「や、でも……変な声……しちゃう、からぁ……あぁあんっ!」
「可愛いんだから、もっと聞かせて?ね?」
「やぁあああ、きもちい……もっと、もっと、ロイ、もっと、やって……ぇ!」
私は「気持ちいい」が分かってしまって、気が付けばもっと、もっと、とロイの指を気持ちのいい場所にあてるように腰をうねらせていた。
ロイはその間もおっぱいも弄ってくれて、もっと気持ちがいい。でも、お腹の奥がすごく疼いて、仕方がない。そこをロイが弄ってくれたら……そう思うとゾクゾクしてきて仕方がなかった。
「ろい、もっと、おく……おくが、切ないの……っ」
強請るように言いながら腰をくねらせると、ロイは深く溜息をついてから、言った。
「わかったよ、テメノス、そしたら僕のおちんちんを入れようね……ゆっくり、優しくやるから……怖がらないで」
「ん……怖く、ないよ、ろいの…だから……」
くちゅ、とロイが私のあそこにおちんちんの先端部分を押し当てる。ソレだけでも意識がふわふわとなるくらい熱くて、気持ちがいい。
ロイはそのまま、躊躇わずに、にちゅにちゅと音を立てて私のナカに入ってきた。
「や、あ――――、やぁんっ、いや、痛い、いたっ、痛いよ、ロイ……っ!」
「テメノス、テメノス、大丈夫、大丈夫だから……」
ロイは私を抱きしめてくれた。ロイは温かくて、優しい。だから、こわくない。こわくない。ぬちぬちといやらしい音が繋がった箇所から聞こえてきて、頭がおかしくなりそうだった。
「んっ、……でも、少し……痛く、なくなってきたかも……なんだか、変な感じ……なんだかふわふわして、蕩けちゃいそう……」
「そうかい?それならよかった……テメノス、少し、我慢してね」
「うん……っ、あっ、ロイが、はいって、きて……いっぱいに、なる……お腹の、奥……っ」
ロイの太くて熱いものが、私のお腹の中に入ってきている。
それがわかると、なんだか切なくなって涙が出てきた。
どうしてだろう、怖いわけじゃないのに。お腹をさすると、ロイのものが入っているのがわかって、嬉しかった。それなのに、涙がぽろぽろと零れてくる。
「テメノス、どうしたんだい?大丈夫かい?」
ロイが優しく私の前髪を梳いて、撫でてくれた。その手のひらの温もりが嬉しくて、もっと涙が零れてくる。どうしてだろう。お腹の中にロイのおちんちんが入りきって、気持ちよくて、それなのに、どうしてだろう。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだから……つづけて?」
ロイはわかった、というと私のナカで動き出した。ぐい、ぐい、とロイのおちんちんが出たり入ったりしているのがわかる。その度に私のナカがロイのおちんちんを離さないように、捕らえて奥にいかせようとしているのもわかる。私は苦しくて、嬉しくて、気持ちよくて、よくわからなくなって、私じゃないような声ばかりを上げていた。
そんな私を気遣ってか、ロイは私のおっぱいや唇に口付けをしてくれたり、撫でてくれたりする。そんなロイがとても愛おしくて、大好きで、私は頭が一杯になっていた。
「テメノス、テメノス……ナカで、出すよ……僕たちの、子供、作ろ?」
「んっ、あんっ、ぁっ、はぁんぅ、んぁっ!うんっ、んっ、こどもっ、つく、……って……!ナカに……だし、て……いっぱい……っ!」
「テメノス……!!可愛いよ、愛してるよ……僕の、僕だけのテメノス……!!」
「あぁ―――っ、きてる、きて、あっ、あんっ、熱いっ、熱いのがっ、きてる……っ!!私のナカにっ、いっぱいっ!」
お腹の中にいっぱいロイの熱いモノを受け止めて、私は頭の中が真っ白になって、意識を飛ばしてしまった。
「テメノス、テメノス……大丈夫かい?」
「ろい……?わたし、どうしちゃったの……?」
気が付くと、ロイが私を抱きしめて、頭を撫でてくれていた。二人とも裸で抱き合っているから、なんだか恥ずかしい。でも、もっと恥ずかしいところを見られているから、もう今さらかもしれないけれど。ロイは私のおっぱいを優しく撫でてくれていた。
それにしても、まだ私たちふたりは下半身でつながったままだった。熱がそこからじわじわとあがってきて、変な気持ちになってしまう。
「テメノスのおっぱいは可愛いね……僕はこれくらいの大きさが好きだよ」
そういって、おっぱいに小さな口付けを落としてくれた。私のおっぱいは、どう見繕っても小さいほうだと思うけれど、ロイはその方が好きなのだろうか?だとしても、ロイ以外には見せる人はいないから、ロイが好きだと言ってくれるならそれだけでいいんだけれど。
「ロイ、私のおっぱい、小さくない?」
「そんなことはないよ……乳首も綺麗な色だし、僕は、好きだな」
ロイはそのまま乳首を口に含んで、転がしだした。片方の手はもう片方のおっぱいをゆっくりと揉みしだいていて、それがまたお腹の奥に響いて、性器が濡れてしまう。
「ぁんっ、そんなことされたら、またお腹の奥が……」
「ああ、ごめんごめん、テメノスが可愛くてつい、ね……」
「でも、最初は怖かったけど、きもちよかった……。ね、ロイ、もう一回、してくれる?」
私はそういうと、ロイは驚いた顔をしてから、また私の頭を撫でて頷いてくれた。その双眸は、とても優しい光をたたえている。
「そうだね、君が望むなら、何度でも。子供が出来るまで、何度だって、ね」
「うん、もっと、して……」
私は今度は噛みつくようにロイの唇に口づけをした。ロイもまた、応じる様に私の舌に舌を絡めてくる。蠢く舌先はとても熱くてそれだけで酔ってしまいそう。トロトロになった口の中から零れ落ちる涎が肌にかかって、そこが熱を持つ。熱は鎖骨に、胸元にぽたぽたと落ちていきながら、汗と一緒に流れてゆく。
私はロイのてのひらを胸元に持って行った。
「ねえ、ロイ。おっぱい、もっと、……触って?お願い」
「ふふ、わかったよ。可愛いテメノス」
ロイはそう言って、また私のおっぱいを揉みしだきだした。ロイの手は優しく優しく私の柔肉を揉んでくれる。けれどもその柔らかい刺激がとてももどかしくて、私は腰を動かしてもっと、と主張した。ロイの逞しくて大きくて熱い手のひらに、乳首を押し付ける様に、わざと動いてみせた。
「テメノス……初めてなのに、えっちなんだから」
「いいの、ロイとしかこんなことしないんだから、えっちでも」
えっちだっていい。ロイとこういうことが出来ることが、私は嬉しかった。ロイが触ってくれることも、喜んでくれることも、何もかも。
必要のない子供だった私は、今ここにはいない。
ロイに必要とされている、それだけで私の心は高まるのだ。
「ぁんっ、ちくび……もっと、して……ちくび、たべちゃって……」
ぐいぐいと腰を動かすのは、ロイのおちんちんがまだ私のお腹の中に入っているからだ。もっとロイが欲しい。もっと、もっと。
下半身からくちゅくちゅと濡れた音がして、その音で私は余計に高まってしまう。おっぱいが揺れるのも気にせずに身体を動かすけれど、ロイが腰をしっかりと抑えていてくれるから、私たちはつながったまま。
私のお腹の中で、ロイのおちんちんがまた大きくなっているのがわかった。その熱と大きさにお腹の中が圧迫されて、はくはくと空気を吐き出すと、ロイが私が苦しそうにしていると思ったのか、口づけをしてくれる。私がだいじょうぶ、とちいさく呟くと、ロイは頷いて、おっぱいへの愛撫を再開してくれた。
ロイの愛撫はとても優しい。おっぱいの肉をゆっくりと全体的に揉んだり、下から持ち上げて親指で乳首を刺激したり、乳首を手のひらに収めてゆるゆると揉んでみたり。そんなおっぱいへの刺激だけで、私はすっかりと濡れてしまって、私の性器からはたっぷりの汁が両方から溢れてきて、シーツもロイや私の太もももぐちゃぐちゃにしていた。
「ん、おっぱい、も、お腹の中も、きもちい……っ」
「テメノス……可愛いよ……愛してるよ……また中に……出して、いいかい?」
「うんっ、ロイのこども……ほしいから、こづくり……しよ?」
精一杯の笑顔を浮かべると、ロイは何か詰まったような、困ったような表情をしてから、ロイのおちんちんがよりいっそうお腹の中で大きくなった。
「テメノス……!もう、我慢が、出来ない……っ!」
そういうと、ロイは私の腰をしっかりと掴みながら、突然がつがつと動き出した。急変したロイの行動に、私はついていけず、がくがくと揺さぶられるままに、けれどもロイとは離れたくないので必死に細い腕でしがみついていた。
「あんっ、ぁっ、あっ、やっ、ろいっ、すごいっ、やっ、はぁっ、おかしく、おかしくなるっ、おちんちんっ、おく、きてっ!!」
「テメノス……僕の、テメノス……ッ!!」
ぱちゅん、ぱちゅん、と濡れた音が、肉がぶつかり合う音がいっそう激しくなる。ロイの動きが加速して、私のお腹にはロイのおちんちんのかたちがぽっこりと浮かび上がってきた。私は嬉しくなって、そこをそろりと撫でる。するとロイの表情が一気に変わった。動きも、加速する。
「んぁああっ、奥に、おちんちんっ、きてる……っ、おく、きて……あぁぁ―――――!!」
「テメノスっ、テメノスっ、ごめ、僕、もうっ!!」
どくどくどくどくっ!すごい量の熱い飛沫が、私のお腹の奥に注ぎ込まれてゆく。それを感じ取って、その都度私の身体はビクビクと動いて、痙攣した。気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい……!
そして熱い飛沫をたっぷりと感じながら、私は意識を飛ばしてしまっていた。
「テメノス……ごめんね。激しく、やりすぎちゃったね」
「……ろい?わた、……し」
「うん。あのあと気絶しちゃったんだ。ごめんね」
ロイは申し訳なさそうな顔をして、私を抱きかかえながら頭を撫でてくれている。けれど、ロイは別に悪くない。私は首を横に振って、ロイの胸に頬を寄せた。
「ううん、ロイは悪くないよ。それに、ロイとの子供、私、欲しかったから……それに、ロイと私だけの秘密もね」
「……テメノス、君って人は……本当に……」
ぎゅっと、抱きしめられた。私は多幸感に包まれて、ロイの逞しい胸に頬を寄せると、ロイは優しく抱きしめてくれた。触れる温もりと聞こえてくる心音に安堵して、私は目を瞑る。何度も聞いたロイの心臓の音に揺さぶられながら、私は眠りの縁に落ちていった。
本当にそのまま、永遠にこうしていられればいいのにと、願いながら。