ティンバーレインの城下町を見に行こう、と言い出したのはどちらだったか。
旅を終えたテメノスは、聖堂機関の弱体化に伴う配置転換及び体力回復のために大聖堂の守備に回されたクリックと共に、ティンバーレインへと向かっていた。
 勿論、仕事ではない。
まとまった休暇がとれたからである。それもこれも二人の友人であるオルトの功績だった。無論二人とも休暇のために馬車馬のように働いたのは言うまでもない――聖堂機関が起こした事件は大きく取り沙汰され、猫の手も借りたいほどの忙しさだったが、それも漸く一息つき、結果二人揃って休暇を貰った。
 副機関長オルトにはひと月ほど休んで来い、と言われた。ひと月とは大盤振る舞いだ、と憎まれ口を叩くと、ならばもっと働くかと返されてそれ以上の言葉を交わさず素直に聖堂機関を後にした。優秀な彼のことだからきっと二人が羽を伸ばしている間もあくせく働いているに違いない。そんな友人の温情に感謝しながら、二人は雨の降る森の中を歩いていた。
 リーフランドでもティンバーレインのある地方は鬱蒼としており、多湿で雨が多い。今日も例に漏れず朝からしとしとと雨が降り、これ以上濡れてしまっては風邪をひいてしまうだろう。
 二人とも傘代わりに手に入れた大きな植物の葉の下、ぬかるみをゆっくりと歩いていた。どこか雨宿りできそうな大きさの洞でもないかと周囲を探しながら歩いていると、前方に丁度いい洞のある大木が見えてきた。二人は顔を見合わせると、頷き合い、少し足早に洞へと向かう。
 そこは、大木の根が絡まり合うように空間が出来ており、中はかなりの大きな空洞で、焚火をしても大丈夫そうだった。
 空を見上げればそろそろ日も暮れそうだ。魔物の心配は以前ほどはなくなったものの、情勢が安定しているわけではない。当然物盗などの危険もある。腕はたつ二人だが、しばらく雨の中、しかも慣れない土地を歩き続けていて、正直なところ休みたかった。

「テメノスさん、今晩はここで過ごしましょう。ティンバーレインの城下町は逃げないですから」

 クリックの提案に、テメノスはほっとしたように表情を緩ませて頷く。旅慣れているとはいえ、慣れない土地で雨の中では、疲れただろうとクリックは考えていたが、どうやら正解だったらしい。

「そうですね。これ以上濡れてしまっては、身体に障りかねません。こんなところで風邪をひいてしまっては、オルト君に面目が立ちませんからね」
「濡れた衣服はこの枝にかけて干しましょう。着替えはないですけど……」

 クリックはそこで言い澱む。そしてテメノスからあからさまに視線を逸らし、雑念を払うように頭を振ってからさっさと自分は上半身裸になると、鎧を整頓し始めた。視界に入った濡れた白い肌を見たくないわけではない。むしろ、見てみたい。だが、そこはぐっと騎士の精神でクリックは堪えた。

「クリックくん?どうしたの?」
「あ、い、いえ。僕は鎧の整備もしないといけませんから」

 問うてくるテメノスへの返事もおざなりに、ガチャガチャとわざとらしく音を立てて、濡れてしまった甲冑を麻布でごしごしと乱暴に拭いてゆく――気を付けていなければ湧いてくる雑念をどこかへとやろうと、クリックは甲冑に集中した。
 すると、自分から意識が外れたと分かったのか、テメノスは悪戯な笑みを浮かべ、ふふ、と小さく笑って、無防備に鎧の手入れをしているクリックの身体に背後から抱きつき、遠慮なく大胸筋を揉みしだきだした。

「それにしてもクリックくんのおっぱいは見事ですねえ」
「ひっ、テメノスさん、手、冷え切ってますよ……身体もつめた……」

 冷たく細い指で無遠慮に触られて、背筋に冷たいものが瞬時に走り、クリックはビクリと身体を震わせた。

「私も一応鍛えて入るつもりなのですけど、全然筋肉がつかなくて。昔からそうなんですよ、ロイと同じ訓練をしても、逞しくなるのはロイばかり。私はずっとこんな貧相な身体のままです」

 ぶつくさと文句のようなものをいいながら、テメノスは無遠慮にぺたぺたとクリックの胸筋を触ってゆく。その触り方は、感触を確かめているというよりは……と、少々沸騰しかけた頭で混乱しながらクリックはされるがままになっていた。

「あ、あの、テメノスさん……」
「へえ、思ってたより筋肉ってずっと柔らかいんですね……本当に羨ましい。ねえ、もうちょっと触っていい?」

 肩越しにひょい、と顔をのぞかせて真顔で言われて、クリックは思案した。
 嫌ではない。テメノスの無造作な触り方は、先程から気付いていたがそこに潜んでいる意図も汲めなくはないのだ。そもそもテメノスはこういう悪戯はあまりしない性質だから、余計にそう思えた。
 なにせ、クリックはテメノスに懸想していい加減時間も経っている。
 最初は一目惚れだった。
 聖職者ならざる物言いの態度のくせ、ここぞという時は本当に神の御子なのだと思わせる静謐で美しいひと。最初こそその造形と内面のギャップに苦い思いこそしたけれど、そのには芯には熱いものがあり、その熱はひどく神聖で高尚なものに思えた――そう、クリックはテメノスが好きだった――異性に恋をするように、テメノスというひとに魅了されていた。男性であるとか、年が離れているだとかは関係なかった。ただ、純粋に好きだったのだ。  好きな相手に触れられて、嬉しくない筈がない。  けれど、これは望んでいた状況ではない気がする――というかどちらかといえば自分が触りたい。テメノスは法衣だけを脱いで法衣の下着は脱いでいないのだが、それがよくなかった。チラリと背後を見れば、ぺたりとくっついている狭間に情欲を誘うような薄い半透明の下着が白い肌に張り付いており、桃色の愛らしい乳首がぷっくりと膨らんでいて、当然だが濡れているから余計に艶やかだ。乳輪も大きくてふっくらしていて、今すぐ食べてしまいたい。殆ど誘っているようなものではないか、とやや働かなくなってきた頭でクリックは考えていた。

「クリックくん?私の胸なんかじっと見て、どうしたの?」
「あ、いえ、その……テメノスさんのおっぱいが、すごく、……その、……えっちだなって……」
「は?」

 果てしなく呆れたような声が返って来る。それはそうだろう、いきなりそんな話題を二人きりの時に出す方が、どうかしている。というか、その気があると言っているようなものではないか。

「いえ!その、そんな、ぴったり布がくっついて濡れて透けた乳首が目立っててすごくおいしそうだなとか、すごく艶やかだなとか、舐めてみたいなとか、触ってみたいとか、そ、そんなことは考えてませんから!」

 慌ててばたばたと手を振って否定するが、事既に遅し。テメノスは翆の瞳でクリックを睨み、乙女のように身体をしならせて胸元を両腕で隠してみせた。

「クリックくん、全部声に出てますよ……そんなに私のおっぱいに触りたいの?えっち」

 訝し気に問われ、クリックは顔を熟れたトマトのように真っ赤にして、かくかくと壊れたおもちゃのように頷く。

「さ、触らせていただけるのなら……触りたいです……」

 素直に白状せざる得ない状況で、無駄に張る意地を持ち合わせてはいない若き聖堂騎士は、解告のように言葉を吐き出した。実際、そんな気持ちだった。
 想い人の素肌を見たい、それは若い盛りの男ならば、当然だろう。何なら既にクリックの下腹部は重く熱を持ち、どくどくと生ぬるい期待に脈打っている――そんな性急な自分自身を呪いながら、クリックは断罪を待つ罪びとの心地で次の言葉を待った。

「まあ、私も無遠慮に君のおっぱいにべたべた触ってしまいましたしね。おあいこということで、特別に許しましょう」

 はあ、と溜息をおとしながらもテメノスは桜色の艶っぽい唇に人差し指を宛てて、妖艶な笑みと共に言うと、クリックの大きな手をとり、自分の胸に当てる。

「どうです?私のおっぱい。立派ではありませんけど……それにしても、君の手、ごつごつとしていて逞しい……」

 ふう、と濡れた吐息が吐き出され、声も心なしか甘い。どことなくとろりとしたテメノスの瞳が、クリックの大きな手を追っていた。

「は、あ、あの……」

 そのままクリックはテメノスの胸を下着越しに弄り始めた。剣だこのある大きな手のしっかりとした太い指が、ぷっくりと膨らんだ乳首を掠めた瞬間、テメノスの口から甘く小さな声があがり、びくり、と肢体が震えた。見れば、白い肌は一瞬にして朱に染まり、翆の瞳は水の幕を張り、唇が小さくきゅっと結ばれている。男性にしては華奢な拳もぎゅっと握られており、両足はかくかくと小鹿のように危うい。
 その一瞬にして、クリックは悟った。

「テメノスさん……乳首、弱いので?」
「い、……言わないでください……恥ずかしいので……」

 先ほどまでの余裕はどこへやら、顔をほんのりと紅く染めて恥じらう様子はまるで乙女の様であまりに可愛らしく、クリックの手はいっそう止まらなくなってしまった。
 思い切って下着越しに乳首をつまみ、コリコリとつま先で弾いてみたり、乳頭部分に指を押し付けて引っ搔くと、乳首は硬くしこり、テメノスは更に甘い声を出して誘ってくる。心なしか腰元も揺れているような気がした。

「ぁんっ、……クリックくん、触り方、やらしいです……」
「テメノスさんのおっぱい、可愛いですね……乳首も綺麗な色で、……食べちゃって、いいですか?」
「な……何?」

 テメノスの疑問に応えるように、クリックはテメノスの乳首を口に含んで舌先で転がしだした。

「やぁん、あっ、あんっ、ちょっと、まって……!」
「まふぇません!!」
「やっ、そのまましゃべらないで……ぁあんっ‼」

 クリックは器用に舌で乳首を転がしながら同時に乳輪もぶあつい舌でねっとりと舐る。
 もう片方の乳首には指先が添えられてころころと転がしたり、潰したりと刺激を馬鹿みたいに繰り返すと、テメノスの腰が浮いてきた。
 上下左右にゆらゆらと揺れるそれはひどく艶っぽく、上等の踊り子の踊りに見える。身体の動きに合わせて薄布の下着が揺れて、まるでヴェールのようだ。その秘められた奥を隠すヴェールは半透明で、脚の付け根の部分はほんのりと布が持ちあげられており、先っぽはしとどに濡れていた。それがまた、艶めかしさを際立たせる。
 それを見たクリックは更に愛撫を深める。くちゅくちゅとクリックが乳首を舐める音が洞穴内に木霊して、テメノスの耳を犯してゆく。薄い布越しの刺激がもどかしいのか、テメノスは時折か細い声で欲求を口にするのだが、その都度快楽の波に飲み込まれ、甘い嬌声しか飛び出てこなかった。
 狭い洞の中、しっとりと濡れた空間に響くのはテメノスの濡れた吐息と声、そしてクリックの荒い呼気のみだ。
しとしとと振る雨の音は、どこかへ消え去っていた。焚火は熾火になり、絡み合う二人を細々と照らしている。その灯りもまた、テメノスのしろい肢体を娼婦のように引き立てるのに一役買っていた。

「クリックくん、あの、直接……ちくび……触って、いいですから……ぁんっ、もっと、……強く……してぇ!」

 甘ったるい声で乞うさまは聖職者というよりも娼婦で、クリックの頭はすっかりとのぼせていた。実際、テメノスもそうだったのだろう。クリックの逞しい両肩にしがみつくように両腕を回し、胸をクリックに押し付けてきた。その力で余計に乳首が刺激され、テメノスは何度もびくびくと肢体を痙攣させ、甘イキを繰り返していた。
 そのあまりにも扇情的な姿にクリックの雄も熱を持ち、布地をもたげている。が、先にテメノスだ。若い雄は、その欲を必死に抑えながら愛おしい人に愛撫を繰り返した。甘い乳首を舐めとり、舌先でつつき、時折歯で甘噛みをし、指先で転がし、すっかり膨らんだ中央部分に爪を立て、感触の違う乳輪をゆるゆるとなぞり、唾液でてらてらと光らせてからもう一度ぐるりとなぞる。はぁ、と熱い吐息がかかるのがくすぐったいのか、テメノスは身体を都度捩りながら嬌声を上げていた。

「あぁんっ、もっとっ、もっと……!ちくび、さわって……つよく、してぇ!!」

 そんなテメノスの痴態、そして甘い声に、クリックも下肢がいい加減苦しくなってきた。ここに、ふっくらと膨らんでいる乳輪やピンと立ち上がり濡れている艶っぽい乳首に、自分のモノをこすりつけてみたい、という欲求が出てきてしまった。

 今まで必死に我慢してきた反動か、こんな風に痴態を見せつけてくるテメノスに己の白濁を掛けてみたいという欲求が堪えきれなくなり、クリックは下着を脱ぎ捨てると、グロテスクに立ち上がったペニスを、迷うことなくテメノスの胸元へと持って行った。

「く、クリックくん?!」
「ごめんなさいっ……ごめんなさい、テメノスさんのおっぱい、いやらしすぎて……僕っ、もう、もう、我慢できませんっ!!」

 言葉と同時に、どくどくと熱く脈打つものをテメノスの胸元にこすりつけ出した。

「ぁあ、やんっ、おっぱいにっ……あっついのが、ちょくせつ、やんっ、あ、……はぁっ、ぁん!!」

 テメノスの痩身が弾けるように動く。その肌の艶やかさと、下着の少しざらついた感触に包まれて、まるでテメノスの胸を犯しているような気になり、クリックは増々興奮して腰の動きを速めた。淫らな音をたてながら、クリックのペニスは質量を増し、先走りの汁がテメノスの下着の胸元を濡らし、そこだけがくっきりと見えていた。
乳首だけが浮き出ているさまに、クリックの興奮と熱は止まらない。

「テメノスさんっ、テメノスさんっ、ごめんなさいっ、テメノスさんのおっぱいっ、すごく、気持ちいいですっ!!」

 テメノスの胸はクリックの先走りと汗とでぬるぬると滑り、そこに薄い下着の感触がひっかかり、程よく気持ちが良いのだろう。一方テメノスはといえば、胸を無茶苦茶に犯されて先ほどから嬌声しか上げることが出来ないでいた。

「あはぁん、あっ、あっ、やぁっ、クリックくんっ、はげしっ、もっと、もっと……!」

 クリックは腫れぼったくなって膨張した乳首に己のペニスの先端をこすりつけだした。その刺激で、またしてもテメノスは追い込まれてしまい、快楽を逃がそうと脚をばたつかせ、股間を刺激する。このままでは出てしまう。実際テメノスの綺麗なピンクのペニスからは我慢汁が垂れだしていて、ぴんと立ち上がり非常にいやらしかった。

「テメノスさんもっ、感じてくれてるんですねっ……それなら、こっちも……っ!」

 クリックはさっと器用に後手でテメノスの勃起したペニスを掴むと、ゆっくりと、丁寧に揉みだした。その瞬間にテメノスの身体が再び、跳ねた。

「ひゃぁんっ、やめっ、両方はっ……はっ、あぁっ、やめてっ、わたしっ、おかしくなるっ!!」
「もう、……おかしくなってください……テメノスさん……可愛い……」

 尚もふにふにとテメノスのペニスを刺激しながら、胸の間にペニスをこすりつけて荒い息と共にクリックは告げる。テメノスは翆の瞳に大きな水滴を貯めながらクリックを見上げている。頬は紅潮し、目元も紅い。はくはくと呼吸に合わせて開かれる唇も赤く染まっていて非常に扇情的だ。クリックは限界を感じて、そのままテメノスの胸と顔に射精してしまう。同時にテメノスも射精してしまい、自ら腹を汚していた。

「やんっ……クリック、くん……」

 大量の精液が飛び出してきて、テメノスの顔と胸にしたたり落ちる。テメノスはぱちぱちと瞬きをしながら、一瞬何が起きたのか把握できなかったようだ。

「ご、ごめんなさい、テメノスさん……テメノスさんの顔があんまりにも可愛くて……いやらしくて……我慢できませんでした……」

 バツが悪そうにそう言いながら、クリックは慌てて干してあった自らのマントでテメノスの顔と胸元を清めてゆく。

「や、ぁんっ、まだっ、乳首触られると……っ」

 触れた箇所が悪かったのか、それとも濡れた下着が引っ掛かったのか、テメノスが甘い声を上げる。その表情は蕩けたままで、桜色の唇はトロリと開かれており、翆の瞳も茫洋としていた。これでは後処理どころではない。

「テメノスさん……これ以上、煽らないでください……これ以上煽られると、本当に我慢が出来なくなっちゃいます……」
「だって、君の手つきがいやらしい……」
「そんな!僕はテメノスさんを綺麗にしているだけですよ、それ以上の事なんて、考えて……」
「考えてないわけがないじゃないですか……ほら、おちんちんをこんなにして……悪い子」

 しっとりとした空気の中、ぴん、とゆるく立ち上がりかけていたペニスを爪先で弾かれ、クリックは唸る。確かに、胸でしごいたペニスは一度射精したくらいではおさまらなく、テメノスの肌に触ることで再び熱を持ち始めている。

「うっ……ごめんなさい……」
「若いですからね、仕方ないです……付き合いますよ」
「え。テメノスさん、それって……」
「何度も言わせないで。気が済むまで、付き合ってあげる、と言っているんです」
「お、おっぱい以外にも、触って、いいんですか?」

 恐る恐るといった様子で聞いてくるクリックが可笑しいのか、テメノスは小さく笑う。

「今更ですよ、クリックくん……私の事、こんなにぐちゃぐちゃにしておいて、それを言うの?」
「そ、それは……その……が、我慢できなくて……全面的に僕が悪いです、ほんとうにごめんなさい……」

 しゅんとなってしまったクリックが哀れに思えたのか、テメノスは優しく撫でる。

「ほら、そんなにしょげないで。私の気が変わらないうちに、ね?もっとして?」
「テメノスさんっ……!」

 その言葉に感極まったクリックは、そのまま勢いよくテメノスを抱きしめた。

「く、クリックくん、きつい……」
「好きです、大好きです……ずっと、こうしたくて、ずっと、夜はテメノスさんで抜いてました……本当は穢しちゃいけないってわかっていながら……。それが、……それが、現実になって……僕……僕は……」
「ほらほら、泣かないの。今度は私が上になってあげますね。ふふ、ちゃあんと見ててね?」
「テメノスさんが……上……?」

 きょとんとしているクリックをゆっくりと右手で押し倒すと、テメノスはこれまた身体を見せつける様に、ゆっくり、クリックの逞しい身体に乗り上げた。そして、クリックの逞しい胸元に触れながら後孔とクリックの位置を確認して、クリックのペニスに双丘がこすれる様に座り込んだ。

「テメノスさん!?」
「ちょっと、慣らさないと駄目だから、待っててくださいね……」

 そのままテメノスはクリックの腹筋の上に座ると、位置をずらして後孔を自らの指で解しだした。これでもか、と秘所を見せつける様に。
 紅くひくひくと蠢くテメノスの秘所は、テメノスの先走りの汁とクリックの汁とが混ざりてらてらと濡れていて、まるで女性器のように見える。くぱぁと細く白い指で割り開かれ、ナカに蠢く媚肉が今か今かと熱いものを待ち望んでいるように内部へと蠢き、そこにテメノスは二人の先走りの汁を塗りこんでゆくものだから、まるで愛液のように透明で粘着質な液体がトロリと零れ落ちてきた。クリックはぐっと唇を噛み、耐える。
 今すぐぶちこんで犯したい、という欲を、必死に抑えていた。だが、ペニスはそうはいかない。熱を持ち脈打つ立派な一物は、早く牝の胎内に入りたいと膨れ上がり、先程からテメノスの後孔をノックしている。その都度テメノスが甘い声を上げるものだから、最早視覚の拷問に近かった。

「ぁ……んっ……はぁ……ん」

 しかも濡れた下着はそのままだからざらついた感触がクリックのペニスに触れたままで微弱に動き、何よりぷっくりと膨れた乳輪と乳首もテメノスが自分で弄っていて恍惚とした表情を浮かべているさまを下から見上げているお陰で、若いクリックにとっては目に毒すぎた。
 見てしまってはいけない、でも、もっと見ていたい。
 相反する感情が渦巻いて、結局テメノスに魅入ってしまい、クリックのペニスは再び勃起してずくずくと熱くなり始めている。

「ふふ、私を見て……クリックくんのおちんちん……興奮してる……」
「テメノスさぁん……あ、あんまり煽らないでくださいよ……」

 押し倒して、思い切り後孔を犯したくなる、とは流石に言えなかったが、妄想の中で夜毎犯していて、自分の下で喘いで身体をくねらせ、淫らに踊る姿を想像しているクリックには、本当に目に毒すぎた。赤い乳首に今すぐ噛みつきたい。後孔に、この怒張を早く挿れてしまいたい。そして思い切り犯したい。散々に舐りたい。犯したい。嬲りたい。欲は際限なく膨れ上がり、暴発しそうになった時、テメノスが腰を上げた。

「んっ、……そろそろ……大丈夫かな……。クリックくん、挿れますね……?」
「は、えっ?」

 突然の言葉に疑問を抱いたクリックを他所に、テメノスは妖艶な笑みで応えて、身体を、ゆっくり、じっとりと沈めてゆく。

「は、あぁ……んっ、……苦しっ……クリックくん、君、大きすぎます……んぁっ、ぁああっ」

 ずぷ、ずぷ、とゆっくりと胎内にペニスを埋めてゆくさまが、あまりにももどかしくて、思わずクリックは腰を突き上げていた。

「やぁあんっ!クリックくん、ちょっと待ちなさい!私が上に乗ると言ったでしょう!」

 不意打ちを食らったテメノスは、ぴしゃりとクリックの大胸筋を叩く。

「痛っ!でも、もどかしくて、もっと刺激が欲しくて、我慢できないんです!テメノスさん、ごめんなさいっ!」

 テメノスの細い腰を両腕で掴むや、クリックはずちゅん!と思い切りテメノスの後孔に自らのペニスを収めた。

「あああ――――――っ!!やんっ、そんな、急にっ!!痛っ、クリックくんっ!」

 急速にかけられた圧に、テメノスは悲鳴を上げた。
 けれどもクリックは止まれない。腰を上下に動かして、テメノスの熱い胎内を貪る。夢想が現実になったのだ。止まれるはずがなかった。ぐちゅぐちゅと濡れた音が耳を犯す。結合部には鮮血と泡がまじり合ったものがあふれ、繋がった身体を汚していた。ごり、ごり、と聞いたことのない音が聞こえ、クリックはテメノスの身体を拓いているのだ、と自覚した。ならばと、クリックは侵入をすすめる。テメノスの両腕をしっかりと握り、がつがつと容赦なく腰を何度も、何度も、乱暴に打ちつけた。

「あんっ、やんっ、強いっ、クリックくんっ、ちょっとっ、もうっ、わたしっ、おかしくなるっ、あぁんっ!!」
「テメノスさん!テメノスさんっ!!僕、僕、もう、もうっ……!!出ちゃいますっ、射精しちゃいたいですっ……!!」
「ぁ、あんっ、あんっ、クリックくんっ、いいですよっ、胎内にっ、……ナカに……っ!出して……っ!!」

 結合部がぱちゅぱちゅと音を立てて、ぎゅっと握られた手から温もりを感じて、尚もクリックは腰を動かす。クリックと同時にテメノスも腰を動かし、イイところを探ろうと必死に身体を捩った。
 そしてごちゅん!と最奥へと届いた瞬間、テメノスは空に息を吐いた。音にならない声を漏らしたそこに、クリックのたっぷりの精液が迸り、流し込まれる。

「テメノスさんっ……沢山……精液……受け取ってくださいっ、孕んでくださいっ!!」

 テメノスは生理的な涙を流しながら、天を仰いでいた。白い喉が逸らされ、汗がつたい、口端からは唾液が零れ落ちる。脳天を貫くような快楽に、テメノスは意識を飛ばしてしまった。