熱射病

 どうしてこうなってしまったのだろう。今更のように回らない頭で考える――多分酔った勢いで、というか大方そうなのだろうけれど、やれるだのやれないだの下世話な話になってしまい、お互い譲らないままにアビスにある小部屋に引きずり込まれて、押し倒されて、今こうしてアッシュはユーリスと唇を重ねている。
 普段から豪語する通り、ユーリスの口づけはとても巧く、それだけでも熱が飽和してしまって何も考えられなくなりそうだった。けれどアッシュだって経験がないわけではない。そんなユーリスに必死に食らいついてゆこうと舌を絡め、唇を動かす。互いに蕩け合いそうになる口づけをどれ位続けたろう。酒精も混じった口づけは甘ったるくて、どこか苦い。それでも互いに昂った身体は触れることを求め合ってか、ユーリスの手は器用にアッシュの上着を脱がせてゆく。同時にもつれ合いそうになりならがアッシュもユーリスの衣服を脱がし、二人上半身裸になると、荒い呼気を互いに吐きながら互いの肌を舐めまわし、堪能した。

「んっ、ゆーり、す……っ」

 先に根を上げたのはアッシュの方だった。薄桃色の乳首にカリと、噛みつかれて器用な舌先で食まれてしまうとどうしても上ずった声が出てしまう。ユーリスの細い指先はもう一方の乳首も円を描くように愛撫し、こちらは決定的な刺激は与えてはこない。そのもどかしさと矛盾した動きにアッシュの腰が自然に揺れて、解放を望む――その一方疼く後ろ側を悟られないようにとするのだが、男に抱かれ慣れてしまった身体はどうしても反応してしまうのだ。それをわかっているのだろう、ユーリスはニヤリと人の悪い笑みをつくりながら、アッシュの乳首を未だに愛撫し続けている。

「イッちまえよ、どうせ胸だけでイけんだろ?」
「……ッ」

 こういわれると反抗心が疼いてくるのだが、それ以上にユーリスの与えてくる快楽の波が押し寄せてきて思考を頭の中から奪ってしまう。ユーリスの美しい瞳は獲物を捕らえた牡の目で、やけに赤い舌が這いずり回る様はいやらしく、それを見ているだけでもアッシュは達しそうになってしまい、必死に耐えていた。

「我慢すんなよ……気持ちいいって、顔に書いてあるぜ」

 悔しいが、事実だった。ユーリスの愛撫は本当に快楽を引き出すのが巧く、先ほどから薄い胸を揉まれ乳首を愛撫されるだけでアッシュの性器は立ち上がり先走りを漏らして震えている。腰が疼いて仕方ないし、もっと強い刺激が欲しいとねだる様にゆらゆらと揺れ動く。

「いじ、……わる……」
「あー?悪いな、俺様、生憎優しくはできねーからな」

 特にお前のこととなるとな。意味深げな言葉に笑みを深めながら、ユーリスはアッシュの下肢に手を伸ばす。すっかりと立ち上がって震えている性器を刺激され、アッシュは甘い声を思わず漏らしてしまった。

「かーわいいの。なあ、もっと声きかせろよ……」

 くくっ、と猫のように瞳を細めて笑うユーリスに反抗心だけは芽生えても、ユーリスの与える快楽には逆らえない――そのまま下半身を覆う衣服を脱がされて一糸まとわぬ姿になったアッシュを上から眺めて、ユーリスはそれは満足げに笑った。

「俺様ほどじゃねーけど、お前の肌も綺麗だよな……自然体でそれだってんだから、少しずるいよな」

 ぼそりと面白くなさそうに呟きながらユーリスはアッシュの性器に口をつける。

「ユーリス、ダメ……!」
「ダメ、じゃねーだろ。こんなにもの欲しそうにして……」
「そっちじゃなく……」

 これ以上言わせる気か、とアッシュは潤み切った若草色の瞳でユーリスを睨むが、逆効果でしかない。ユーリスの嗜虐心をそそるだけの効果しかなかった。ユーリスはアッシュの性器を口に含むと、舌先と指を使って巧みに昂らせてゆく。

「あっ、……ん、っ……やめ……っ」

 アッシュはユーリスを制止しようとその頭に手を掛けようとするが、ユーリスは巧みに交わしながらアッシュを昂らせてゆく。だが、突然アッシュの性器から口を離し、先走りを指で舐めとり唾液と混ぜると、男にしては細く綺麗な指先をアッシュの後孔へとあてがった。

「あっ……?!」

 快楽の奔流から突然投げ出されたアッシュは涙目でユーリスを伺うが、ユーリスは変わらずに人の悪い笑みを浮かべたままだ。

「なあ。お前、コッチの方がいいんだろ?」

 くち、と後孔の入り口に指先を宛がいながらユーリスはアッシュに口づけをしてくる。唇と舌を絡み合わせながらユーリスはぐい、とアッシュの胎内へと指を差し込んだ。

「ん、あ、……あ、入ってる……」

 はぁはぁとこちらも甘い呼気を吐き出しながら、アッシュは堪える様にぶるりと身体を震わせた。その間にもユーリスの指先は器用にアッシュの胎内を弄り、確実に快楽を引き出そうとしている。放置されたアッシュの性器からはしとどに液体があふれ出して腹を汚し、薄い胸は上下して必死に酸素を求めているようだった。

「なんだよ、ずいぶんと解れてるじゃねーか。さては自分で準備してたな?」

 意地悪気にユーリスが舌打ちするが、アッシュは息も絶え絶えで答えようがない。ただこくこくと頷き、早く、と尻を差し出すように動かすのみだった。

「ったく、俺様が折角ゆっくり解してやろうと思ったってのによ……!」

 どこか悔しそうにしながらも、ユーリスはすっかりと立ち上がった己の性器をアッシュの後孔に押し付けた。

「ならとっとと入れんぞ」
「はっ……いい、よ……」
「くそっ……これだけで熱いな、お前……」

 先端部分を少し挿れただけだというのに、媚肉が纏わりついて離れない。もっと刺激が欲しいと言わんばかりに求められ、ユーリスの美しい顔が歪む。

「うっ……ぐ……たく、お前は……!」
「あ、ぁ……入ってる……ゆーり、す……!」
「動くなって!畜生っ……はっ……く……ッ!」

 そのまま思い切り性器をアッシュの胎内に押し込むと包み込まれるように熱く、気持ちがいい。セックスなど数えきれないほどしてきたし、どちらの経験もあるが、アッシュとのセックスほど気持ちが良いと感じたことは今までなかった。身体の相性、というやつなのだろうか。正直こうして挿入しているだけでもどんどん快楽に追い立てられて辛いほどだ。

「くそっ、お前、ほんと……どうなってんだ……」
「や、そんな、……しらな……」

 ぱん、ぱん、と容赦なく肉がぶつかり合う音がそう広くはない部屋に響く。同時に二人の放つ甘い声も木霊して、壁の作りの脆い箇所からはきっと声が漏れているだろう――それでもかまわなかった。昂る快楽に、ユーリスは自分を抑えられなかった。

「くっそ、ぐっ………う……!」

 ぐいぐいと性器を押し込んでも、押し戻す圧が強くそれでいて蕩けそうな肉の熱に包まれて最高に気持ちがいい。自分の口から洩れる信じられないくらいに甘く獣じみた声に耳を犯されながら、自分もたいがいにおかしくなっているな、とユーリスは残されているなけなしの理性で考えていた。
 アッシュの腰を強く抱きながら、ユーリスは腰の動きを速める。もうイきそうだ、中に出してしまえ。後先のことを考えず、ユーリスは押し倒した身体を乱暴に揺すりながら荒い息を吐き出していた。

「はぁ……はぁ……くっそ……アッシュ、出すぞ……!」
「ユー、リス……いい、……よ……」

 アッシュの甘い声に頭を殴られたような感覚に陥りながらも、許された行為にユーリスは夢中になった。ガツガツと腰を打ち付け、欲を昂らせてゆく。アッシュの胎内でパンパンに膨張した性器から、大量の精液がその中に放出される。

「ぐ……うっ……」

 ぶるり、と身体を震わせてから、ユーリスはアッシュの腰から手をようやく退かした。けれども性器はその胎内に入ったままだ。射精後の脱力感はあるものの、未だに昂る熱は収まってはいない。酒精がそうさせるのか、はたまた目の前に横たわっている甘い果実のように赤く染まった白い肌が目の毒なのか。ユーリスはアッシュを抱き起すと、そのまま口づける。

「アッシュ、……もういっぺん、いいか?」

 ユーリスの獣のような眼差しに、甘く蕩けた若草色の瞳は頷いて答えるのだった。 
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