ベレスはおもむろに身体を起こすと、隣で横になり甘い息を吐くエーデルガルトを促す。情事の直後のけだるさからか、いまだ放心状態から抜け出せていないらしい彼女に笑みを向ければ、不安そうに見上げてきた。
「大丈夫、私はここにいるから」
「せんせい……なに、を?」
困惑するエーデルガルトをよそに、ベレスはしなやかに伸びる脚にてをすべらせる。突然の行動にエーデルガルトから小さな悲鳴が漏れるが、構わずにベレスは白く美しく整った彫刻のような造形の足の甲に、口づけを落とした。
突然のベレスらしくはない行動に、エーデルガルトは薄手の夜着を胸元に寄せたまま、困惑の表情を見せている。
「師……あなた、その、……」
「私の意志も、こころも、いのちも。全部、君のものだよ、エル」
エーデルガルトの大きな瞳が、こぼれおちんばかりに見開かれる。なぜなら、ベレスは主というものを持たない主義だったからだ――というよりも、そういう感情が抜け落ちていたから、というのもある。だが、ガルグ・マクで教鞭をとり生徒たちと接するうちに、そして女神ソティスと触れ合ううちにベレスの中に心が確かに芽生えてきていた。
そして、強く思ったのだ。エーデルガルトの隣に、立ちたい。共に歩みたい。この、寂しすぎる少女の傍らに、在り続けたい、と。
それは、もしかすれば何らかの因果の末の想いなのかもしれない。ベレス自身驚くほどに何故そう思ったのか理解していないのだ。ただ、天命といってもよいほどに強い意志でもって、ベレスはあの時レアからエーデルガルトを守りたいと思った。
教会の欺瞞や不透明さに疑問を持っていた、であるとか、そのやり方が好きではない、であるとか、そういった感情も少なからずあったが、何よりも強かったのは、自分自身の願いだったからだ。考えるよりも先に、身体が動いていた。
だから、考えてみれば、あの時から自分はこの少女に永遠にとらわれていたのかもしれない。