踊り子アッシュ君に欲情しちゃうシルヴァンの本

 あの白い脚は目に毒だ、と常日頃思っている――実際戦場で何度も目にすると、否が応でも身体が反応してしまう自分が居て情けない、とシルヴァンは痛感していた。
 アッシュの衣装の話だ。基本的にアッシュは後方支援の弓兵部隊で活躍しているのだが、ベレスの采配により時折戦場で皆を鼓舞するため踊り子として戦う時もある。そもそも白鷺杯にアッシュを出場させようと言い出したのもベレスで、最初は何の冗談かと思ったのだが(本人も動揺していた)、結局はベレスの指導の下アッシュの踊りの技術は上達し、白鷺杯で優勝して特別な衣装を勝ち取ることが出来た。
 それは良かったのだが、その衣装がよくなかった。よくない、本当にあれはよくない、とシルヴァンは敵を屠りながら心の中で独り言ちる。まずとにかくあの脚や腕が視界にチラチラと入るのがよくない。アッシュの素肌は男性にしては白く綺麗ですらりと伸びた脚はその動きと相まって美しいとすらいえた。ましてベレスの指導を受けた特殊な踊りは確かに味方を鼓舞するだけの力がある。だが、アッシュに長年懸想しているシルヴァンにしてみれば別のものも想起させてしまい、本当に良くなかった。まして衣装は極薄で、魔道の加護がかかっているらしいがとてもではないが戦場で着るような衣装ではない。アッシュのしなやかな体躯の線が丸わかりで、シルヴァンの胸中はとてもではないが穏やかではなくなってしまう。それでも、五年前はまだよかった。アッシュは少年で、年齢的にも手を出してはいけないと心の中で歯止めがギリギリ効いたからだ。だが、五年という月日を経て再会したアッシュはそれは美しく成長しており、再会の折には目もまともに合わせられないほどで、フェリクスやイングリットには散々からかわれたものだ。
 それほどに美しく成長したアッシュが、極薄の美しい衣装を着て戦場で華麗に舞う姿を見て、シルヴァンは身体が熱くなっているのを自覚していた。正直早くこんな盗賊の討伐など終わらせてしまいたかった。そしてその後は――「シルヴァン!危ない!」聞き覚えのある声に我に返れば、敵兵の脆そうな刃がシルヴァンに切りかかってきていた。とっさのことで反応できずシルヴァンの愛馬が嘶く。しまった、と思った時には敵兵の眉間に鋭い矢が突き刺さっており、シルヴァンの愛馬が落ち着く頃に敵兵は命を失っていた。

「……シルヴァン、どうしたんですか?君にしては珍しく戦闘中に呆けて」

 その声は呆れているようでもあり、責めているようでもあった。シルヴァンは答えも返せず、今の今まで懸想していた(それもどちらかといえば卑猥な方向に)相手に助けられた情けなさにああ、と小さく項垂れ巧く助けてくれた礼すらいえない始末だった。まさかお前に見とれていて失態を犯した、などと誰が言えようか。

「いや、なんというか、……すまん、助かった。敵はこれで全部倒したのか?」
「そうですね。殿下が敵将を倒してくれたおかげで散り散りになって逃げたようです。徒党を組んでいるような相手でもないので深追いはしないと先生が」
「そうか、そりゃよかった……」
「本当に、よかったですよ。戦闘中に珍しく呆けてる君が、最後の一人にやられなくて。僕がたまたま近くにいたから……」
「ああ、そのことは本当に助かったよ。ありがとな、アッシュ」

 巧く対話をしているつもりでも、シルヴァンの視線はアッシュの白い素肌に吸い込まれてゆく。そしてふつふつと下腹部に溜まる熱は容赦なく、正直言って今すぐこの場を離れたかった。だが、アッシュと話をするという機会を逃したくもなくてとりとめのない会話を続けてしまっている自分は大馬鹿野郎だ、と思う。これが恋というものか、と場違いな溜息すらつきたくなった。

「それじゃ帰るとするか」
「そうですね、皆引き上げるようですし、僕たちも帰りましょう」

 結局出てきた言葉はそんな陳腐な、それでいてアッシュと共に居たいという欲が先走ったもので、下腹の熱を修道院までどうごまかしたものかとシルヴァンは頭を抱えながら帰路につくのだった。



 そして、その夜——というよりも修道院に着き皆と別れてすぐ、シルヴァンは自らの部屋へと直行した。さっさとこの熱を解放してしまわないと、アッシュが欲しくてたまらなくなる。アッシュには五年前に告白しているのだが、結局のところそこから戦争が始まり別れ別れになってしまい、未だ彼とどういった関係なのかと問われて答えられる自信がない。
アッシュはシルヴァンの気持を知っていて、再会した時も特にその事には触れず、今の今まで来ている。アッシュの気持を知りたい、というのが本音だが、同時に知ることが恐ろしかった――もしもアッシュが色よい返事をしてくれなかったらどうしよう、最早この世の終わりだとまでシルヴァンは思い込んでいる程に想いを拗らせていた。
 鎧一式をなんとか脱ぎ捨て、そんな風に一人部屋で悶々としていると、控えめに部屋を叩く音がした。こんな時分に誰だろうか、普通ならば夕食でも取っている時刻だろうに――そう思いながら客人を招き入れようと扉を開くと、昼間に姿のままの――つまりは、踊り子の格好のままのアッシュがそこに立っていた。

「あ、アッシュ……?!どう、したんだ……?なんでまだ戦装束を……」
「……君が思い詰めた顔をしてたから、急いで来たんですよ。何か、あったんでしょう?」
「あ、ああ……そういう、ことか」

 一瞬不埒な妄想をしてしまい、そんな自分に再び嫌気がさしてシルヴァンは溜息をつく。アッシュは純粋に戦闘中様子がおかしかったシルヴァンを心配して急ぎそのままの格好で来てくれたのだろう。

「大丈夫なんですか?顔色もなんだか熱っぽいみたいですし……」
「い、いや!大丈夫だ!大丈夫だから!!」

 そのままの格好で近づいてくれるな!と心の中で念じ腕を振るのだが、アッシュには残念ながら届く訳もなく、あっさりと部屋に入られて至近距離まで近づかれてしまう。これはシルヴァンの方にも下心がなかったとは言えない――あわよくば、くらいの思いはあったが、まさか本当に至近距離で額に手を当てられ、熱まで測られるとは。

「……少し、熱いみたいですね……水でも……」

 と、そこまで言ってアッシュはあることに気づいたのか、言葉を止める。アッシュの視線はシルヴァンの下腹部に向いていた。ああ、もうおしまいだ。しっかりと反応している下半身に気づいたアッシュは、どこか呆れたように溜息を吐いて独り言のように言葉を落とした。

「ああ、そういうことだったんですね……戦闘時の昂りが治ってないから焦って部屋に戻って抜こうとしてたんですか」

 少しの沈黙が落ちる。その少しの時間が、シルヴァンには地獄のように感じられた。
 だがアッシュはそうではないのか、さらりとシルヴァンの股間を見てもう一度溜息を落とした。

「それなら僕が抜きますか?」
「は?え?は?はあ?」

 思わぬ言葉にシルヴァンは思い切り間抜けな反応をしてしまう。まさかとは思うが。性だの欲だのに縁のなさそうな、清廉潔白なアッシュの口から出た言葉とは思えない。

「……シルヴァン、君が何を勘違いしてるか知りませんけど、僕は君が思ってるほど子供じゃないですよ、それに別に君のことが嫌いなわけじゃないですし……」

 最後の方は、ぼそぼそと口の中に溶け込むように聞こえにくく、けれどもシルヴァンの耳ははっきりとその言葉を聞き取っていた。

「な、なん……え?アッシュ、どういうことだ?」
「あ!いえ!その……」

 下半身的に緊迫しているにも関わらず、自分よりも細い肩をがっと掴んでシルヴァンはアッシュに向かって叫んでいた。今アッシュは何を言った?何と言った?頭の中で何度も反芻して、間違いではないことを確認してからシルヴァンは口を開く。

「アッシュ、俺の事、嫌いじゃないって……」
「……あの、ですから……嫌いじゃ、ないのは……」
「好きだってことか?好きでいてくれた、ってことでいいのか?」
「なんだって君はそんな風に思考回路がこういう時は単純になるんですか!で、でも確かにその……」
「その、なんだ?」
 こうなっては、はっきりと言質を取っておかねばなるまい。五年前は有耶無耶になってしまった結果が今のこれなのだ。戦闘中にアッシュの素肌を見たくらいで興奮して勃ってしまうくらいには拗らせたのだ。だからこの際ハッキリさせてほしい。というか、してもらわないといろいろな意味で困った事態になってしまう。こんな至近距離にアッシュがいるのだ、正直ギリギリの理性で襲い掛からないでいることを褒めて欲しいくらいだ。

「……好き、ですよ……。好きです…、君のことが!前から!告白される前から! ああもう、言うつもりなんてなかったのに……」

 何故だか泣きそうなアッシュを、シルヴァンはぐっと欲を抑えながらも結局我慢できずに抱きしめていた。至近距離でアッシュの匂いがする。もうその事実だけで興奮して仕方なかった。

「……なんだ、だったら五年前、そう言ってくれれば……」
「そう言ったってどうにかなりました?君と僕の身分も道も違うんです、やれることだって違います、だから、僕は僕の気持に蓋をしているつもりで」

 ああ、相変わらず面倒なことを考えるやつだなとシルヴァンはだんだんイライラしてきた。というよりも我慢が限界だった。感情よりも欲が先走って行動してしまうなど最低な事なのだが、最早自分でも止められそうにない。その証拠に、目の前にある薄い唇に気づけば噛みつくように口づけをしていた。

「んっ、シル、ヴァ……」

 アッシュの声にならない声が漏れるが、シルヴァンは漏れる熱い声にすら欲情しながらアッシュを寝台へと押し倒した。ちりん、と軽く装飾品の音が重なり、衣擦れの音がする。そんな音ですら欲情してしまうのだからもう仕方がなかった。むき出しの脚に触れてみると戦闘の後の熱がまだ冷めやらぬのか、しっとりと火照っており更に欲をそそった。そのまま綺麗に筋肉のついた脚の上へ上へとシルヴァンは手を伸ばし、衣装のスリットの部分に到達するとアッシュが小さく悲鳴を上げる。

「シルヴァン!これ以上は……!」
「なんだよ、先に抜いてくれるって言ったのお前だろ?これくらいなんてことないじゃないか」

 思ったより低い声で囁くシルヴァンは完全に暴走していた――五年間秘め続けていた思いがここに来て爆発してしまったのだ。アッシュがどこか怯えるようにシルヴァンを見る目も、完全に凍り付いてしまったように動かない身体も、シルヴァンの欲に火を注ぐだけに他ならない。そのままシルヴァンはアッシュの両脚をがばりと開くように持ち上げ、下着ごと膨らんでもいない股間に強引に触れた。

「や、やぁ……!いきなり、やめてください!!本当に、どうしちゃったんですか!」
「どうもこうも、欲が収まらないんだよ……お前だって見てわかったろ?俺のコイツ」

 言いながらシルヴァンは一度アッシュの脚から手を離すと、自らの股間に手を当ててその膨らみを強調する。苦しそうに衣服の下で勃起しているであろうシルヴァンのペニスは既に衣服を先走りで濡らしており、シルヴァンの中に理性などはもうないのだとアッシュに痛感させるには十分だった。
 シルヴァンはそのまま下肢を覆っている衣服を下ろし、股間を剝き出しにする。大きく赤黒く脈打つペニスが立派に屹立し、欲に塗れた涎をだらだらと垂れ流す様子にアッシュの顔色が更に青褪めた。

「シルヴァン……まさか……」
「挿れさせてもらうぞ」

 ぽつりとおとされた容赦のない言葉に、アッシュが何かを言う前にシルヴァンはアッシュの下着を乱暴に脱がして尻を丸出しにするや後孔へと勃起したペニスを宛がう。そして解しも濡らしもせずに唐突に挿入した。

「あ、あぁ、あ、あ、あーーーっ!」

 軽い装飾品の金属音を鳴らしながらアッシュが身体を捩り、悲鳴を上げる。本来受け入れるべき器官でもなく、まして慣らしてもいない突然の挿入だ、痛くないわけがない。

「い、いや、……やめてください、痛い……いた、……あ、ぁ、やめ……!!」

 アッシュが懇願するようにシルヴァンの腕に手をかけるが、シルヴァンは真顔のまま汗を滴らせてひたすらに腰を押し進めてゆく。ぎち、ぎち、と肉がこすり合わさる濡れた音がして、アッシュは尚も身体を捩り、シルヴァンの胸を叩いて抵抗するのだが、シルヴァンは全く意に介してないというように、荒い呼気のままただ肉棒をアッシュの胎内に収めることに夢中になっていた。

「やめて……いた、……あ……ッ!!」

 ぐい、と奥に突っ込まれたペニスを乱暴に抜き差しし、その都度ぐちゃ、ぐちゅ、と濡れた淫らな音を立てながらシルヴァンはアッシュの両脚を開かせて揺するように腰を動かした。その都度アッシュの口からは悲鳴しかあがらないのだが、シルヴァンは止まらなかった――最早、止まれなかった。最悪の形で好きな人間を抱いてしまったことを今更後悔しても遅かった。
 最早欲望の赴くまま、シルヴァンは腰を動かす。
 そして悲鳴を上げ続けているアッシュの唇に己のものを重ねて噛みつくような口づけを再びした。ぬるりと舌を侵入させて、口腔内を散々に犯す。どちらのものともわからない唾液が混ざり合い、くちゅくちゅと音を立てる。アッシュも観念したのか、抵抗は先ほどまでよりは収まったものの、シルヴァンを見つめる目はやはり信じられないものを見ているそれで、シルヴァンは小さく舌打ちをした――こんな失態を犯すつもりは、なかったのだ。きっちりと口説いて、初めては優しく抱きたかった、どろどろに甘やかして蕩けさせ、身体を重ねたかったのだ。それなのにどうしてこうなってしまったのだろう。自問自答しても最早遅い。アッシュの怯えるような目は変わらず、シルヴァンをしっかりと見据えている。どうして、と問いかけるその若草色の瞳が怖くて、シルヴァンは思わず目をそらした。そして巧く答えられない代わりに腰を動かし、きつい肉壁を犯す。するとまたアッシュの口からは悲鳴が漏れる。悪循環の繰り返しだった。
 やがてシルヴァンの暴走した欲は最高潮になり、アッシュのきつい胎内にたっぷりの精液を注ぎ込んだ。その熱さにアッシュは身体をビクビクと痙攣させ、双眸からは涙が零れている。

「……シ、ルヴァン……どうして……」

 哀しそうな声は悲鳴をあげすぎて枯れていた。ペニスをアッシュの胎内から抜き出すと、どろりと濃い精液が共に流れ落ちてくる。そこには鮮血も混じっており、アッシュを無理矢理犯したのだという事態を如実に物語っていた。
 熱を放出して幾分か収まった冷静な頭で考えると、自分はなんてとんでもないことをしでかしてしまったのか、とシルヴァンは青褪める。好きで好きで仕方なかった相手をよりによって強姦したのだ。何を言っても許されないことを承知で、うなだれたままシルヴァンはアッシュに恐る恐る触れる。

「……ごめん。アッシュ、本当にごめん……抑えが、きかなかった……こんなの、言い訳にもならねえけど。最低だよな」

 声は震えて、許しを請うようにアッシュの頬に触れる手もまた震えていた。そこに、アッシュの手が重なる。その手はしっとりと汗ばんでいた。だが、怒鳴られるか詰られると思っていたシルヴァンには、アッシュの行動は意外で、思わずその若草色の瞳をじっと見つめてしまう。

「……アッシュ……?」
「本当にもう、君はどうしようもなく最低で馬鹿ですね」
「そう、だな……」

 返す言葉もない。何故ならその通りだからだ。だが、アッシュの表情はどこか柔らかく、本気で怒っている様子もない。声は相変わらず掠れていて、どこか哀しそうな表情なのはそのままなのだが、何故だろう。よほど呆けた表情をしていたのだろう。アッシュは溜息をついて、シルヴァンの頬に濡れた。

「……本当に……何で君が泣いているんですか。泣きたいのはこっちですよ」

 呆れたように言われて気づいたが、シルヴァンは泣いていたらしい。アッシュに言われて初めて気づいた。アッシュが触れた箇所は確かに濡れていて、涙がどんどん零れてくる。そもそもアッシュはなぜそんなに怒らないのだろう。

「もう、そんな顔されたら怒るに怒れないじゃないですか……。理由位は、きかせてくれますよね」

 理由とは、無理矢理犯した理由だろう。察しが悪くなっている頭でもそれくらいはわかる。

「……俺が、お前にずっと懸想してたのくらいは、知ってるだろ……」
「はい。五年前、君の口からはっきりと聞かせてもらいましたから」

 アッシュはまるで小さな弟や妹にそうするかのようにシルヴァンの頭を抱え、赤毛を撫でてくる。直前に自分を強姦した相手に対してその行動は流石にどうかとシルヴァンも思うのだが、素直に甘えておくことにした。何よりアッシュの匂いに今は欲ではなく安堵を感じているからだ。この体温に触れていると安心できる、そんな気がして自分の気持ちを素直に吐き出すことが出来そうだった。

「五年間の間さ、まあ……想像に難くないと思うけど、戦いの連続で、……そんな中、ずっとお前の事ばかり考えてて」
「君は辺境伯の息子ですからね……スレンとの戦いもあったんでしょう」
「……そうだな。神経をすり減らすようなことばかりだった。そんな中でお前のことを……ずっと、離さなければよかったって思ってて、だから」

 ぐず、と鼻をすする音が響く。情けないことにまだ涙が止まらない。それでもアッシュは幼子にするようにシルヴァンの頭を緩やかに撫で続けている。

「再会して、……何を言っていいのかもわからなくなって……そんな中で戦場でお前の素肌を見たら、もう、何が何だかわからなくなっちまった。止まれなかった。もう、お前の事で頭がいっぱいで、お前をものにしたくて、仕方なくて、離れたくなくて」

 シルヴァンはぐっと拳を握る。だからといって許される行為ではない。だが、してしまったことはとりかえしがつかない。

「……ごめん。本当に、ごめん。こんな形で初めてを奪っちまって、本当にごめん……アッシュ……」
「もう、いいですよ。それに、初めてじゃないですし」

 聞き捨てならない一言に、シルヴァンはがばりと顔を上げた。初めてじゃない?確かに、慣らしてもいないのにシルヴァンのペニスをアッシュの後孔は受け入れた。きつかったが、奥まで犯して精液を吐き出した。アッシュは痛がっていたが、確かに言われてみれば初めてにしては――そう考えて、シルヴァンはゾっとした。まさか。

「アッシュ、お前……」
「……君の想像しているようなことと同じかどうかわかりませんけど、ローベに居たときに僕は性処理の道具みたいに扱われてました。孤児でしたし、頼るところもありませんでしたし……弟たちもいましたし、……こんなことは、誇れることじゃないですけどね。だから、慣れてるんです」

 慣れてる、そう言い放つアッシュが悲しかった。自分で強姦しておいて何だが、アッシュにこんなことを言わせてしまった自分自身が悔しかったし、ローベの兵たちが憎かった。何なら自らの手で殺してやりたいくらい憎かった。こんなことになるなら、五年前に無理矢理連れていってしまえばよかった。そして、もちろん無理矢理アッシュを犯した自分も同じくらい憎かったのだが。

「……そうだったのか。……ごめんな、無神経な話して。……それに、嫌なこと思い出させて」
「いいですよ、過ぎたことですし……。君の事情もわかりました。でも、やっぱり無理矢理はひどいです」
「……だよな」
「だから、今度は優しくしてください」

 シルヴァンの両頬を両手で包み込んで、アッシュは泣き笑いのような顔で告げる。

「アッシュ……?お前……」
「好きな人に折角抱かれるのに、無理矢理だけなんてのは酷すぎます。……告白だってするつもりはなかったのに……もう、言っちゃいましたからね。僕だって、好きな人には優しくされたいです」
「アッシュ……!!」

 シルヴァンは力強くアッシュを抱きしめた。すべてが許されるわけではないだろう。けれど、アッシュは機会をくれた。

 抱きしめた体温が愛おしかった。薄布から透けて見える素肌はしっとりと濡れていてひどく扇情的だ。白い素肌と、ぷくりと立ち上がっている乳首の形ですらしっかりとわかる。改めて見直すと、シルヴァンは再び下腹部に熱が溜まってゆくのを感じた。だが、二度と乱暴にはしない、そう誓ったのだ。きつく抱きしめた腕を少しゆるめ、相好を崩すとアッシュも若草色の瞳を細めた。

「……アッシュ、ごめんな……ありがとう……」
「……ほんとに、もう、君は……どうしようもない馬鹿ですね……」

 苦笑しながらアッシュは未だに涙をこぼし続けているシルヴァンの唇に優しく口づけをする。その感触が愛おしくて、シルヴァンもまた口づけを返した。今度は柔らかい、優しい口づけだ。

「君は根本的に不器用なんですよ……器用そうに見えるけど、いつだって肝心なところで失敗ばっかりして」

 愛おしそうに眼を細めてシルヴァンの鼻筋を指でなぞるアッシュに、怒っている様子などは全くない。どころか甘い雰囲気すら醸し出しており、蕩けるような若草色の瞳の奥には欲の炎が垣間見えていた。

「ごめんな、アッシュ。ほんとうに、ごめん」
「そんなに謝らなくてもいいですよ、もう。謝るより、ちゃんと優しくして下さい」

 アッシュの指先が、シルヴァンの鼻筋から静かに濡れた唇をなぞる。そして顎に達すると、アッシュは再びシルヴァンに口づけをした。今度はぬるりとした感触が入り込んでくる。熱くて甘い、アッシュの舌だ。シルヴァンはアッシュの頬を包み込むと、夢中になってアッシュの唇を貪った。淫らな水音がして、両者の荒い呼気が木霊する。それでも互いに熱に潤み切った目を合わせて、荒い息のままで笑い合った。

「わかったよ、優しくする……もうこれ以上ないくらい、甘やかして、蕩けさせてやるからな、アッシュ」
「はい、覚悟してます」

 そのまま再びアッシュを寝台に押し倒すと、踊り子の衣装の上からシルヴァンはアッシュの身体を弄る。殆ど素肌と変わらない衣装の衣擦れの感触に、アッシュはくすぐったがって笑いながら身体を捩らせていたのだが、ぷくりと立ち上がったままの乳首をシルヴァンの指が掠めた瞬間に甘い声を上げてしまった。

「あ、……ん……ッ!」
「すっかり硬くなってるな、ここ……やらしいし、可愛い」

 シルヴァンはそのままコリコリと指先で乳首を弄び、もう片方は衣服をずらして露出させると舌でべろりと舐めてみせた。ぷくりと膨らんだ紅い果実のような乳首はぷるんと揺れて、まるで女性のそれのように存在を主張している。口の中で何度も転がして、時折歯を立ててやるとアッシュの口からは再び甘い声が上がった。

「それっ……やめて、くださ……!」
「優しくしろって言ったの、お前だろ。それに胸だけでもイけそうだしな……やってみるか?」
「そ、そんなの……知りません……!」

 反抗的な態度はとっているものの、アッシュは涙目でそのうるんだ瞳は熱っぽい。濡れた唇だって扇情的で、肌に張り付いた薄布から透ける白い素肌はしっとりと汗をかき、何よりもアッシュの股間はしっかりと反応しているのだ。シルヴァンはアッシュの股間に自ら膝を押し付け緩急をつけて刺激しながら乳首をこねくり回し、或いは舐めまわす。

「やぁ、両方は……ッ、だめ、です……ッ、おかしく、なる……!」
「おかしくなっちまえよ、アッシュ……」

 乳首から漸く口を離すとそこは大きく膨らみてらてらと濡れてそれだけでもいやらしかった。シルヴァンは思わず空いている方の指先で乳首をきゅっとつねると、アッシュの身体がびくりと震える。軽く達したのだろう。踊り子の服に包まれているアッシュのペニスの先端が濡れており、シルヴァンの膝も共に濡らしてゆく。

「ぁ……あ……も、……やだ……服、汚しちゃったじゃないですか……」
「やだ、じゃないだろ。気持ちよかったんだろ?な?」

 いやいやと幼子がするようにアッシュは首を振るのだが、落ち着かせるようにシルヴァンは頭部を抱き寄せて口づけを首筋に、鎖骨に、肩に、いくつも落としてゆく。口づけの後には紅い跡が残り、まるで己の所有物のようだとシルヴァンは思った。その瞬間、どくりと下腹に熱が滾り、ペニスが一回り大きくなった気がした。これが独占欲ってやつか……と心の中で独り言ちながら、今度はアッシュの胸元にもいくつもの跡を残してゆく。

「優しくって、いったのに……」
「だから優しくしてるだろ?気持ちよかったんだろう?」
「……きもち、よく……わかりません……」
「ったく、お前も強情なんだから」

 達したのだから気持ちよい筈なのに、素直に頷かないアッシュにシルヴァンは苦笑しながらもう一度乳首を、今度は胸板をもみほぐすようにしながら責めてゆく。ちょうど乳輪に指が達すると決定的な刺激を与えないように指で乳輪だけを弄り、或いは舌先で舐めてひくひくと刺激を欲している赤い果実のような乳首には触れてはやらない。

「や、それ、や、です……さわって、ください……」

 アッシュは胸元をシルヴァンに押し付けるように必死に胸を押し付けてくるが、シルヴァンは決定的な刺激は決して与えはしなかった。そのうちアッシュはなかなか与えられない刺激にぐずぐずになってしまい、若草色の瞳から涙をこぼしてシルヴァンの頭を抱きかかえる。

「シルヴァン、お願いです……さわって……」
「どこ、触ってほしいんだ?言ってくれたら、いくらでも触ってやるぜ?」
「……優しくしてくれるっていったの、どこの誰ですか……」
 アッシュの恨めしそうな顔すら愛おしくて、思わず雀斑の残る鼻先に口づけを落とした。