いつか出逢ったあなた

 最初に認識したのは、ただ愛らしいということだけだった。愛らしい、という言葉を、少年に使うとは思っていなかったが。  自分に子犬のようにまとわりついてくるくせになかなか反抗的な態度をとるアッシュという少年は、ひいき目に見ても同世代より幼く、危なっかしかった。だが同時に眩しくてたまらなかった。だから欲しかったのかもしれない。自分のいるところに堕ちてきてほしかったのかもしれない。手を出した理由などいくらでも思いつく。それほどに、シルヴァンはアッシュに参っていた。アッシュに参っている自分自身を制御できないほどに。  アッシュが黒鷲の学級の生徒になると聞いた瞬間の衝撃は忘れられたい。さらりと告げられた一言は死刑宣告だった。だからシルヴァンはすぐさま自分も黒鷲の学級の生徒になる、と担任のマヌエラに告げた。マヌエラは怪訝な顔をするが、黒鷲の学級の担任があのベレスであると理解した瞬間、なるほどね、と彼女なりに納得したらしく、あっさりとその要求は通ったのだった。    シルヴァンは焦っていた。何に焦っていたのかはわからない。ただ、兄マイクランを討った感触がまだ残っている手をそのままにアッシュの部屋を訪れた。 「アッシュ、いるだろう?いれてくれ」  いつものように助けを請うように告げれば、アッシュは鍵をあけて素直に部屋に招き入れてくれた。そして、部屋に入った瞬間にシルヴァンはアッシュを抱きしめていた。 「シルヴァン?!」  驚きの声を上げる抱きしめた身体は、自分よりもずっと小さく頼りない――けれども、その心の中はずっと自分より逞しくて強いのだということを、シルヴァンは知っていた。だから縋るように抱きしめて、口づけをした。断られるとか、拒絶されるとかは考えたくはなかった。ただただ伝えたかっただけだった。答えは、いらなかったといえばうそになる。けれども、聞くのは怖かった。  だから抱きしめた身体をそのまま横抱きにすると、部屋のベッドへと運び、押し倒す。 「シ、ルヴァン……?」  呆けたように見上げてくる目には驚愕の色しか見えない。けれども、シルヴァンはそんなことは気にせずにもう一度口づけを――今度はもっと深く、口づけをした。舌を割り入れて絡めとり、唾液を混ぜ合わせる。くちゅ、と水音がして、ああ戻れないな、とシルヴァンはどこか他人事のように思いながら口づけを深めていった。アッシュの舌は熱く、絡んでくる。まるでそれが意志を持っているかのようにシルヴァンの舌を攻め立ててくるものだから、シルヴァンは酔うようにその唇にむしゃぶりついた――事実、酔っていた。アッシュが自分に応えてくれたのだと、その時は思っていたからだ。  アッシュのまだ未発達な痩身に縋るようにかき抱きながら制服の隙間から手を入れてゆく。 「あ、シルヴァン……」  小さな抵抗の声はもう一度口づけで封じた。そして制服をたくし上げ、胸元まであらわにすると、それだけでピンと立ち上がっている乳首を愛撫する。乳輪も乳首も白い肌相応に薄い桃色で、ひどくうまそうだった。ささやかなはずの乳首が存在をはっきりと主張しているのがたまらなくいやらしくて、シルヴァンはむしゃぶりつく。もう片方のあいた手で乳首をこねくりまわし、男にしては大きな乳首をちゅぱ、と音を立てて吸い上げた。 「んっ、やっ……」  アッシュの甘い声が頭上から聞こえる。アッシュは身体を捻って逃れようとするが、膂力ではシルヴァンにはかなわず、シルヴァンにされるがままだった。胸板に腕を当てて反抗するも、反抗されると余計に刺激したくなってしまう。アッシュの甘い声はひっきりなしに続き、咥えていた乳首は朱色に染まってきて、唾液を反射しててらてらと光り、ひどくいやらしい。まるで誘っているみたいだ、とシルヴァンは思い、もう一度むしゃぶりついた。甘い、甘く、そしてアッシュの乳首はまるで母乳が出ているかのようにシルヴァンを捕らえて離さない。 「ちょっ、あぁん、乳首、やめて、ください……」 「そんなことないだろ、こっちはすっかり反応してる」  アッシュの股間に膝裏を入れてくい、と刺激すると、悲鳴に近い嬌声がアッシュの口から漏れ出た。アッシュの幼い性器は、乳首だけの刺激で十分に反応していたのだから。 「乳首だけで、イケそうだな……」  言いながらシルヴァンはアッシュの上着をさらにずり上げ、胸を露出させると真っ赤になった乳首に食らいつく。咥えていない方の乳首も器用な指先でこねくりまわし、つぶし、刺激を与えることですっかり立ち上がり、倍ほどの大きさになっていた。 「やーらし……女の子の胸よりよっぽどうまそう」 「そんなことっ、……あり、ません……!」  いや、ある、とシルヴァンは真剣に思っていた。女の柔らかな乳房も嫌いではないが、この、目の前にある幼い硬い胸と不釣り合いに主張している乳首は酷くいやらしく劣情をそそった。現にシルヴァンの下肢ははちきれんばかりで、ぷっくらと膨らんだ乳首に精液を掛けたらどうなるだろう、と沸騰した頭で考えていた。 「あ、シル、ヴァン……」  乳首への執拗な愛撫を唐突にやめられたアッシュは、空中に放り出されたような声を出したが、シルヴァンは自ら下肢のベルトをほどき、下着ごと脱ぎ捨てた。そして赤黒く勃起したペニスを取り出すと、アッシュの胸板にこすりつけるように動かしだす。先端の亀頭部分の熱がアッシュの乳首に触れるたびにアッシュは甘い声を上げ、いやいやと身体をくねらせる。 「や、です……乳首ばっかり、は……」 「でもお前の乳首、すごく気持ちよさそうじゃないか……ぷっくり立ってて、女みてえ」 「言わないでっ、……言わないでください……っ」 「かわいいよ、アッシュ」  泣きそうなアッシュにちゅ、と唇に口づけを落とすと、シルヴァンはアッシュの乳首を使ってペニスを扱き出した。その度に身体に不釣り合いな乳首は形を変え、アッシュは腰をくねらせる。 「あん、あんっ、乳首、やだっ」  アッシュの声は甘い。その胸はシルヴァンの先走りでべたべたになっており、余計にいやらしさを増していた。 「やだ、じゃないよな。気持ちいいんだよな」  酷薄な笑みを浮かべながらシルヴァンはアッシュの胸にペニスをこすりつける。小さな少年の乳首は不相応に大きく、まるで誘っているようだ。本当にそこだけ別の生き物みたいだ、と他人事のように思いながらシルヴァンは小さな刺激にペニスをこすりつける。やがて快楽がうねりを起こし、熱となって放出された。精液はアッシュの制服と胸元をどろどろに汚して、見ているこちらが眩暈がしそうなほどにいやらしい。  アッシュとなぜこんなことをしているのか、わからなかった。ただ、アッシュの顔を見たとたんに、そうしたくなった。  だからシルヴァンはそのまま身体をアッシュの胸元に乗り上げて再び乳首を愛撫する。それだけでアッシュの身体はビクビクと反応して、震えた。その様がとてつもなくいやらしく、そして愛らしい。もっと淫らによがってほしかった。ここまで男の身体に自分が欲望を覚えるとは正直思っていなかったが、アッシュは的確にシルヴァンの欲を刺激してくるのだ。その理由まではわからなかったが、今は探ろうとは思わなかった。ただ、目の前の身体を存分に味わいたかった。淫らによがらせて、鳴かせて、食らってしまいたい、その欲求だけが全てだった。脳が蕩けてしまいそうなほどに、身体が焼けてしまいそうなほど、そう、余計な事など、何も考えなくてよいように―― 「あっ、あっ、んっ……シル、ヴァン、だめ、です……っ」  幼い性器をしごきながら、シルヴァンはアッシュの後孔に自らの精液をぬりたくり、広げてゆく。アッシュの後孔はきゅうきゅうと締まりながらシルヴァンの指をまるで食らうように自ら動く。 ―—これは、初めてじゃ、ないな。  昏い感情がシルヴァンの胸中を過った。先ほどまでの反応も、とてもではないが初心とはいいがたい。突然襲い掛かったシルヴァンに対して、アッシュの抵抗はそこまでではなかった。だから確信が持てた。アッシュは誰かに抱かれている、抱かれ慣れている――そのことを考えただけで、頭が沸騰しそうなくらいに腹が立った。何故だかはわからないが、その誰かも、アッシュも、許せなかった。 「そういう割に、こっちはひくひくいって誘ってるぜ?アッシュ、お前、見た目に反して随分やらしーのな」  煽る様に耳元で囁くと、きっと強い瞳で睨み返される。けれどもその若草色は濡れていて、シルヴァンの欲と熱を煽るだけだった。 「さっきだって乳首だけでイけてるし、お前才能あるよな?なら、俺のモノ受け入れるくらい、どうってことないよな?」  意地の悪い言い方をしたシルヴァンの一方的な行為から始まったセックスだったからか、アッシュは尚も強い光をたたえた瞳でシルヴァンを睨みつけ、身体を逃れようともがいている。だが、結局力では適わないから無駄な努力なのに、とシルヴァンは憐みの目でその姿を眺めていた。そしてもがけばもがくほどにアッシュの着衣は乱れ、その白い素肌が露わになる。余計にいやらしく見えるだけなのに、と。 「お前は俺のモノになるんだ、アッシュ、そのためだったら俺は手段を選ばない」 「どう、して……」 「どうして?俺は、お前が欲しいからだよ。お前が欲しい。傍にいて欲しい。好きなんだ。頭がどうにかなるくらいに、愛してる」 「でも、こんな行為は……強姦と同じです……っ!」 「そうかもな。でも、俺はお前が欲しいし好きだし愛してる。何をしたって、誰にも奪わせない」  対話にすらなっていないと自分でも思う。けれど、それがシルヴァンの今の気持の全てだった。アッシュを誰にも渡したくはない。だから、己を刻み付ける。その為にならばなんだってする。  アッシュの後孔の縁を刺激し続けているときゅうきゅうと収縮して中へ中へと誘っているように思え、シルヴァンはアッシュの胎内に指を突き刺した。ぬぷり、と濡れた音がしてシルヴァンの節くれだった指がアッシュの胎内へと侵入する。 「ぁんっ」  一瞬甘い声をあげたアッシュだったが、きりとシルヴァンを睨みつけ、行為を許してはいないようだ。けれどもアッシュが今シルヴァンの拘束から逃れられるすべはない。一回り以上大きな体躯にのしかかられ、手を拘束され、そして犯されている。シルヴァンはそのままアッシュの胎内へと指を侵入させた。アッシュの胎内は熱く蠢いていて、シルヴァンの指を食らいつくさんばかりに絡みついてくる。ああ、いやらしくて愛おしい――シルヴァンは酩酊したように目を細めながら、挿入する指を増やした。二本、三本と一気に増やしたところでアッシュの胎内はあっさりとそれを受け入れる。 「嫌がってるわりに、お前、ぐちゃぐちゃ。ほんっとやらしいのな。そんなに男が好きなのか?」 「そんなわけ……ないじゃないですか……っ!  尚も反抗的なアッシュに、シルヴァンはいら立ちを覚えて指を後孔から引き抜くと、怒張を剥き出しにしてアッシュの後孔に宛がった。それはアッシュの痴態で既に欲を膨張させており、それを見たアッシュの顔色がさっと変じる。 「シルヴァン……本気、ですか……」 「本気も何も、最初からその気だよ。だいたい黒鷲の学級に移ったのだって、お前目当てなんだ。だから、お前の胎内にたっぷり、出してやるからな……俺の子種。俺の子、孕んでくれる?」  やはり耳元でひどく優しく囁いてから、後孔に亀頭部分を当てると、ずぷり、とそのままぬめる勢いで入ってしまう。 「あ、あ……!」  アッシュが拒絶する間もなくシルヴァンのペニスはどんどんとアッシュの胎内に入ってゆき、ぐいぐいとうねる媚肉がそれを拒むことはない。矢張り男に抱かれてるな、とシルヴァンは確信した。そしてそのどす黒い感情のまま、アッシュに噛みつくように口づけをする。アッシュは拒むように唇を頑なに閉じるが、無理矢理舌を侵入させて歯列をなぞり、裏側を犯してゆく。ちゅぱ、ちゅぱ、といやらしい水音を立てて。アッシュはいやいやをするように顔を背けようとするが、シルヴァンが両脇をがっちりと抑えているためにままならない。そしてシルヴァンはそのまま腰をぐいぐいと押し進めた。 「あ、や、あっ、うあっ、やめて……!」  アッシュの媚肉は控えめにいって最高だった。今まで抱いたどんな女よりも熱くうねりシルヴァンを迎え入れてくれた。そしてきつく締めつめてくる感覚も最高で、シルヴァンも思わず気持ちよさに呻いてしまうほどだった。 「う、く……お前の胎内、最高……最高すぎて、マジで孕ませそう……」 「最低……です……」 「ああ、最低だな……。最低だけど、俺はお前が好きだし愛してるし、何よりも欲しかった。だから今は最高の気分だよ……」  底意地の悪い声で言うと、再び口づける。アッシュもいい加減諦めたのか、それともほかの理由からなのかシルヴァンの口づけをぞんざいに受け入れた。絡まる舌と唾液に興奮しながら下半身をぐいぐいと抜き差しして射精感を高めてゆく。アッシュの胎内は最高だった。絡まる肉壁も、熱さも、シルヴァンのペニスの形にそれを変えているように錯覚すらしてしまう。そしてシルヴァンのペニスがアッシュの前立腺を掠めた瞬間、アッシュの口から嬌声が漏れ出た。 「あぁんっ!そこはっ…!」 「アッシュの弱いところ見つけた……」  言いながら、シルヴァンは巧みに腰を動かしてアッシュの前立腺を刺激する。その都度びくびくとアッシュの白い身体が跳ねる。半端に脱がされた制服も精液塗れになり、どろどろだ。それでもそんな腕の中のアッシュがひどく愛おしくて、シルヴァンはアッシュに再び深い口づけをした。アッシュはシルヴァンの口づけから逃れようとするが、そんなことはさせまいと巧みに追い詰めてゆく。  アッシュが欲しかった。アッシュが全てだった。そう、沸騰した頭では、それしか考えられなかった。  シルヴァンは腰を乱暴に動かしながら、ぱちゅん、ぱちゅん、と水音を立ててアッシュの胎内へと抽出を繰り返す。ギリギリのところで抜き差ししながら欲を貯めて、やがてアッシュの胎内の最奥へと精液をたっぷりと吐き出した。ふるふると震える身体は満足感に満ちていると同時に、虚しさもあった。  けれど、どこか征服欲に囚われたシルヴァンはアッシュを頑なに抱きしめて、離さなかった。そしてそのまま再び腰を動かし始めると、アッシュの口からはうわ言のような嬌声が聞こえ始める。最早意識は殆どないのだろう。けれどもシルヴァンの腰の動きに合わせて揺らめく細い白い腰はいやらしく、艶めいていた。   「アッシュ、今晩、部屋に行くから」  馬の手入れをしていたアッシュの耳元にシルヴァンが囁く。アッシュはそれを聞いてわかりました、とだけ告げた。この関係は、シルヴァンが兄マイクランを討った当日から始まっていた。アッシュとてシルヴァンが嫌いなわけではないし、むしろ人として尊敬しているところもある。ただし、女癖の悪さを除けば、だ。だがその女癖の悪さもぴたりとなりを潜めてしまい、学級内でのシルヴァンの評判は上々だった。担任のベレスからも最近のシルヴァンの所業を褒める言葉すら出てくる始末だ。  けれどもそれはすべて上っ面の建前だということを、アッシュだけは知っていた。シルヴァンの所業が治ったのは、心を入れ替えたからではない。その対象が変わっただけなのだ。  シルヴァンは夜毎といっていいほどにアッシュを求めた。時折、場所もかまわずに口づけをしようとすらしてきた。その求め方は異常ともいえるほどで、アッシュも拒絶しようにもできなかったのだ――それに、シルヴァンはアッシュを追って黒鷲の学級に来ていると知っていたから、アッシュはあまり強くシルヴァンを拒絶できないでいたのだ。彼が級友や国を捨てたといっても過言ではない理由は、自分なのだと思うと、拒絶できなかった。  そしてまた、今晩もシルヴァンに抱かれている。  既に半裸の身体には精液が飛び散り、胸元ははだけられて乳首は大きく主張しじわじわとした快楽を伝えてくる。それでもシルヴァンは決定的な快楽をアッシュには与えずに、乳輪を丁寧に舐めまわすだけだった。  シルヴァンはことあるごとにアッシュの乳首を吸ってくる。本人に自覚があるのかどうかはわからなかったが、アッシュはその行動をまるで母親に甘える子供のようだと思っていた。思い切り母親に甘えられなかった反動なのだろうか、と勝手な憶測までしていた。 「あんっ……や、乳首、やめてください……」 「なんでだよ、気持ちよさそうじゃないか」 「だから、ダメなんです……っ、んっ!」  ぷくりと立ち上がった乳首にシルヴァンの舌先が触れた瞬間、震えるような快楽がアッシュの尾てい骨から背中に向けてぞわりと伝わった。股間は熱を持ち、既に下着はぐっしょりと濡れていて気持ちが悪い。だがアッシュの懇願などつゆ知らずといった表情で、シルヴァンは執拗に乳首を舐め、食んでいる。 「シルヴァン、本当に君っ……乳首ばっかり……」 「お前のおっぱい、甘いんだよな」  何を馬鹿なことを、と言い返そうとしたが、カリ、と乳首を噛まれて思考が快楽に飲まれてしまう。アッシュの乳首はシルヴァンの執拗な愛撫により最早性器と化してしまっていたのだ。 「やぁんっ……やめて……っ!ほんとうに、やめてくださいっ!」  アッシュは脚をもじもじとさせながらシルヴァンに抗議するが、シルヴァンは一向に言うことを聞かず、アッシュの胸元を舐め続けている。どこまでしつこいのかと両手を使って封じようとするのだが、それすらかまわずに胸元を吸い続けるシルヴァンにアッシュも流石にうんざりしてどん、と身体をぶつけるように動かした。 「アッシュ……せっかく気持ちよくしてやってるのに、それはないだろう?」 「もういやだって、何回も言ったじゃないですか!君は、しつこいんですよ」 「だってお前のココ、ほんとにえろいし旨いんだぜ?なんなら舐めてみるか?」 「出来るわけないじゃないですか!」 「そうだなあ。女の子みたいにおっぱいがあるわけじゃないから無理か。じゃあ続きしような」  シルヴァンはアッシュの抗議をものともせずに再び胸に顔を落とす。そうじゃない、とアッシュも足を蹴り上げてシルヴァンの太ももにぶつけると流石にきいたのか、うげ、と蛙がつぶれたような声がしてシルヴァンが顔をあげた。 「またお前のおっぱいにたっぷりかけてやろうと思ってたのに……」 「だから、それが、嫌なんですよ!」 「どうしてだよ……まあいいや、お前も苦しいだろ、下、くつろげろよ」  こんな時ですら自分勝手なシルヴァンに多少憤慨しながらもアッシュは快楽ではちきれそうになっている下肢を覆う衣服を脱いだ。ぷるん、とまるで音を立てるかのように顔を出した幼い性器は完全に勃起していて、我慢汁を垂れ流している。 「うわ、えろ……最高にやらしいし、うまそう」  言うが早いか、シルヴァンはアッシュのペニスを口に咥えて舐め始めた。 「やぁんっ!やめて……急に、そんな……!」  今までとは比べ物にならない直接的な刺激に、アッシュは涙声でシルヴァンの背を叩く。だがシルヴァンは懲りることもなくアッシュのペニスを、ぴちゃぴちゃと音を立てながらそれはうまそうに食べていた――そう表現するのは、決して間違ってはいなかった。 「あんっ、そこっ、だめです……っ!」  亀頭部分に舌を差し入れられてアッシュの腰が浮いたのを良いことに、シルヴァンはアッシュの細腰を抱いてそのまま後孔にべたべたと指にまとわりついている精液を塗りたくりだした。 「や、あ……」 「お前のおちんちん、ぱんぱんだな?随分我慢してたんだな……出していいぜ」 「だめっ……です……っ」 「お前が出すところ、見たい」  甘く耳元で囁いて竿をしごき、亀頭部分を刺激するとぴゅるぴゅると先端部分から白濁が溢れてきた。 「も、やだ……っ」 「かーわいいの……それに、アッシュの味がする」  アッシュが吐き出した精液を手で受け止めたシルヴァンは片手でそれを舐めて、もう片方の手ではアッシュの後孔へと塗りたくる。ぐちゃぐちゃとした音がして、そのままシルヴァンの太い指がぬぷん、とアッシュの胎内へと入っていった。 「やあ……っ!」 「やらし……お前のここ、ひくひくいっててすげえ欲しがってる……」  じっくりと恥ずかしいところを見られているという事実から、アッシュは目を逸らした。しかしシルヴァンの行為は泊まるところを知らず、アッシュの後孔に指先を入れてくいくいと器用に動かしてゆく。やがて挿入する指を二本、三本と増やしてから胎内でばらばらに動かすと、アッシュの身体がびくりと跳ねた。 「ぁんっ!!そこ、だめです……っ!!」 「アッシュのいいトコロ……みっけ」  シルヴァンは意地悪く笑うと、アッシュの頬に口づけしてから前立腺を中心に刺激し続けた。その間中アッシュは嬌声を上げ続け、身体を跳ねさせる。アッシュの髪は乱れ、喉はのけ反って細い身体が軋みそうなほどに曲がった。シーツを掴む手にも力が入り、はぁはぁと荒い呼気をする。快楽で頭がどうにかなりそうだった。シルヴァンの攻め手は決してゆるまず、休まない。 「や、だ……頭、おかしく、なる……やめて、ください……ほんとうに、やめて……」 「やめて欲しいんじゃないんだろう?気持ちよくて、どうしようもないんだろう?」  シルヴァンの声はあくまでも冷酷で、けれども優しい。囁く声には艶が混じり、アッシュの耳元をはいずり回る様に舌で舐めまわしてくる。その表情は意地悪く、けれどもどこか愛おしさが混じったものだった。 「な、アッシュ。気持ち言っていってくれよ。俺で気持ちよくなって」  そのままべろりと頬を舐め上げてからシルヴァンはアッシュの両足をあげ、後孔を晒すようにしてから自らのペニスを入口へと宛がった。 「シル、ヴァン……」  最早抵抗も出来ないのか、アッシュはシルヴァンの目をぼんやりと蕩けた目で見るだけでぐたりとしていた。シルヴァンはそのままアッシュの後孔に自らのペニスをずぷりと差し込む。 「あんっ!はいって……くる……」  熱に浮かされたようなアッシュの声が、下腹部に重く響いたのかシルヴァンの質量がアッシュの中で増す。 「や、だ……大きく、なって……」 「お前がえろいんだよ、アッシュ……お前がやらしいんだ、アッシュ、普段はこんな表情なんか全然見せないくせに、ほんとうにやらしーのな」 「そ、れは……」  大きくなったペニスをぐいぐいとアッシュの中に押し込み、媚肉を掻き分けてゆく感触にアッシュも酩酊しているのか、口づけをせがむ様にシルヴァンの唇に己のそれを寄せる。完全に無意識なのだろう。シルヴァンは早急にそれにこたえる様に唇を重ね合わせ、舌を割り入れる。絡まる熱と唾液、水音。そして下腹部で膨張する熱。シルヴァンは器用に腰を動かしながらアッシュの頬を撫で、それは愛おしそうに眼を細めた。 「アッシュ、また胎内に出すけど、いいか……?」 「は、い……胎内に……シルヴァンの精液……いっぱい、いっぱい、ください……」  先ほどまで反抗していたのが嘘のように快楽に順応な反応に、シルヴァンのペニスは再び大きくなる。そして飽和した熱をアッシュの最奥めがけてぶつけると、大量の精液を吐き出したのだった。 「はー………おまえ、ほんと、やらし……」  自らの腕の中でぐったりとなっているアッシュの額に口づけをしながら、シルヴァンが囁くと、アッシュは一瞬目を逸らした。 「シルヴァンは……気持ち悪く、ないんですか?」  唐突に告げられた言葉に、シルヴァンは目が点になった。睦言でも呟いて優しくしようとしていた矢先に、とんでもないことを告げられたからだ。 「気持ち悪い?どこがだ?」 「男に抱かれ慣れている僕に、疑問を感じないんですか?それとも、シルヴァンは本当は男の人の方が好きだったんですか?」 「そ、そりゃあ……慣れてるなとは思ったけど、それだけだぜ?それに、俺はもともとノンケだ。いや、……どうなのかな……女の子は好きだけど……」 「シルヴァン」 「いや、何でもない。ただ、兎に角、お前のことが気持ち悪いなんてことは絶対にない。お前のことが好きだからな」 「……本当に、本当に好きなんですか?」 「好きじゃなきゃあ男なんか抱かない。こんなにしつこくもしないし、抱きしめだってしない、誓って言う」 「……ふふ、シルヴァンは、変な人ですね」 「変な人、はないだろう。でもお前、何か……もし……話したいことがあるなら、話してくれていいんだぜ。俺は、お前が何を抱えて居ようとも、お前のことを愛しているからな」 「ありがとう、ございます」  シルヴァンはまっすぐアッシュの目を見て告げたのだが、アッシュの方から目を逸らされてしまった。アッシュの過去は決して裕福ではなかったということは聞いているし、日々生きてゆくこともままならなかったということは担任のベレスから聞き及んでいた。だから、もしかすれば幼少の頃から身体を売るような真似をしていたのかもしれない。だから、男に抱かれ慣れているのかもしれない、シルヴァンはそう想像して背筋が寒くなった。大切で仕方がないアッシュが、過去に男に汚されていると思うと、湧きどころのわからない怒りが湧いてきた。アッシュにそうさせた環境を憎んだ。けれども、自分は結局何もできなかったことを思えば、この件に関して怒る資格などはないのだ。 「お前が何を抱えていても……俺は、お前が好きだよ、アッシュ。誰よりも、何よりもな」  不安を誤魔化すようにアッシュを抱き寄せると、アッシュは抵抗せずにシルヴァンの腕の中に納まり、胸に頬を預けてきた。その温もりが愛おしくて、シルヴァンはアッシュをきつく、抱きしめたのだった。    士官学校での生活がもうすぐ終わりを告げるという頃になっても、二人の関係は変わらなかった。どころか、シルヴァンがアッシュを求める頻度は上がっていた。それは、この関係が士官学校を卒業してしまえば終わるからだろう、とアッシュは想像していた。  ところが、事態は一変した。  エーデルガルトが戦争を始めたのだ。  士官学校は授業どころではなくなり、皆武器を取り戦うことになった。西方教会の一件から教会に不信感を持っていたアッシュは当然エーデルガルトの理想に共鳴し、共に武器を取り戦うことを決めた。だがシルヴァンは、戦う理由などはないからゴーティエに戻るのだろう、そう思っていた。  だから皆が集まった場にシルヴァンの姿を見つけたときは、ひどく驚いたのだった。 「シルヴァン?!どうして君がここにいるんですか?君はゴーティエの跡継ぎで、故郷に戻る筈じゃ……」 「バカか、お前を置いていけるわけないだろう。俺はとっくの昔にお前を選んでたんだ」  言われるや、強引にシルヴァンの部屋に連れてゆかれた。戦いは膠着状態だがまだ戦闘は続いている。 「シルヴァン!僕たちも戦わないと!」 「そんなことはどうだっていい!今の俺には、お前が必要なんだ」  全てを言い終える前にシルヴァンはアッシュを寝台に押し倒した。そして制服を手早く脱がしてゆくと、胸元を愛撫し始める。 「シルヴァン!こんなことを、している場合じゃ……!」 「アッシュ、アッシュ……俺の、アッシュ……離れないでくれ……」  胸に頭をこすりつけて懇願するように言うシルヴァンの頬は濡れていた。だからアッシュも何も言えなくなってしまった。  その隙をつかれて、一気に衣服を脱がされてしまう。  外気に晒された乳首はひときわ大きくぴんとたちあがり、存在を主張していた。シルヴァンはまるで赤子のようにアッシュの乳首に吸い付き、食み、噛んで刺激を与え続ける。 「あ、ぁ……やめて……だめ、です……っ、今は……」  アッシュが必死に抵抗するも、シルヴァンの体躯はアッシュの一回り以上もあるのだ。かなうわけもなく、されるがまま乳首を、そして肉のない胸を蹂躙された。そしてシルヴァンは早急にアッシュの下肢から衣服を取り払うと、ろくろく慣らしもせずに後孔に指を突っ込んだ。 「ああっ……!!痛い……いや、です……!こんな、今……!」  アッシュが何を言ってもシルヴァンは聞かなかった。後孔に入り込む指は一気に三本に増え、前立腺を刺激してくる。そこを刺激されてしまうとアッシュはすっかり快楽を覚えてしまう身体にされてしまっていたから、嫌でも反応してしまう。 「いや、だ……いや、……いや、……だ……」  拒絶の言葉はまったく意味をなさなかった。シルヴァンは表情のない顔でアッシュを見下ろすと、ぐい、と指を胎内でまげて刺激してくる。乱暴な刺激にアッシュは処理が追い付かず荒い息をすることだけでせいいっぱいだったが、後孔に剛直が宛がわれた瞬間は流石に青褪めた。 「シ、ルヴァン……本気、ですか……」  シルヴァンは何も言わずに、剛直を一気に挿入した。 「痛いっ、痛ぁ……!!」 「ウソつくなよ、胎内は喜んでるぜ」  事実アッシュの媚肉はシルヴァンの熱を容易に受け入れて包み込んでいた。最早、シルヴァンのペニスの形に作り替えられたといっても過言ではないほどにセックスを繰り返してきていたからだ。シルヴァンはアッシュに構わずにそのまま抽出を繰り返す。  アッシュの目元には生理的なだけではない涙が浮かんでおり、必死に否定の言葉をぶつけるも、シルヴァンの表情は硬く、ただ機械的に身体を動かしているようにしか見えなかった。けれどもシルヴァンの剛直は確実にアッシュの胎内で快楽を得ているのか大きく肥え、熱を持ち、嬉しくもない快楽をアッシュに与えてくる。痛みと快楽の間でアッシュは頭がおかしくなりそうだと思った。 「シル、ヴァン……シルヴァン…!!」  せめて正気に戻ってくれないかと何度も名を呼ぶのだが、シルヴァンは冷めた目でアッシュを見下ろしたままただ腰を動かしアッシュを何度も、何度も犯した。アッシュの胎内に精を吐き出してからも、何度も、何度も。 「アッシュ、お前だけなんだよ……アッシュ、俺には、お前しか、いないんだ……」  うわごとのように繰り返される言葉をアッシュがどこまで聞いていたかはわからない。  そしてシルヴァンが動きを止めるころ、アッシュは気絶するように眠ってしまっていたのだった。    戦争が始まってからも、二人の関係は変わらなかった。シルヴァンは縋るようにアッシュの元を訪れて、その身体を飽きるまで抱く。それはそして徐々に一方的な関係ではなくなっていった。  ある日また当たり前のように宵が過ぎたころアッシュの天幕をシルヴァンが訪れると、アッシュに出迎えられた。今までそんなことはなく、なし崩し的にシルヴァンがアッシュを押し倒して行為を繰り返していたのでシルヴァンも驚いたのだが、アッシュは笑顔でシルヴァンを迎えいれてくれたのだ。 「アッシュ、今日はどうしたんだ……?やけに機嫌がいいみたいだが」 「機嫌がいいわけじゃないですよ。ただ、……これから君に抱かれるのに、不機嫌な顔ばかりしていても、君に悪いですし、……明日は、いよいよアリアンロッド攻略戦ですから」 「ああ……」  そういうことか、とシルヴァンは納得する。今までも、死地を潜り抜けてきたからわかる。明日はこの戦争の山場だ。アリアンロッドを奪回出来るか否かでこの戦いの勝敗は半ば決まるといっても過言ではない。シルヴァンが考え事をしている間に、アッシュは茶の用意をしていたのか、ほのかに香る茶を差し出された。 「シルヴァンが好きな茶葉を用意できたんですよ。少し、話をしましょう」 「話……か。……なんか、今更だよな。俺、お前のことをずっと一方的に抱いてきて、話なんてろくにしなくて。最低だったよな」 「……そう、ですね。でも、僕は君が泣いているように見えて仕方ありませんでした。国を、主君を、友を捨てて、敵地で敵の将として戦っている君は、いつでも苦しそうで……何かを言い訳にしないと戦えないように、見えてました」 「だから、抱かれてた?」 「同情じゃ、ないですよ。僕も似たようなものです。勿論西方教会の件は……許せません。教会にも不信感を持ってます。だから、教会と組んでいる王国に、未練はさほどありません。弟たちもエーデルガルト様が保護してくださいましたし。でも、そういう憂いのない僕と君とでは、全然違いますよね?まして、君はゴーティエの嫡男で破裂の槍を持っている……本当なら、王家の為に戦わなければいけなかった」 「……けど、俺はお前を失いたくなかった。お前を失うのが何より怖かったんだ。人一人にこれだけ夢中になったのは初めで、全てを失ったっていいって思えたのも、お前が初めてだった。それくらい、俺はお前を愛してる。愛してるんだよ、アッシュ」 「知ってます……だから、僕も拒むことは出来ませんでしたししませんでした。僕も、君が、好きだから」 「本当か?!」  シルヴァンが身を乗り出してアッシュと鼻先がくっつきそうなほどに顔を寄せるものだから、アッシュは苦笑して茶を一口飲む。その仕草すら愛おしくてシルヴァンは今口づけが出来ないのがもどかしい、と思った。  それを悟ったのか、アッシュはブリキのカップを置いてにこりと微笑む。シルヴァンはごくりと唾を飲み込むと、アッシュの顎に手を掛けた。アッシュはそのまま目を閉じて、シルヴァンのされるがままだ――そして唇が、重なる。口づけはそのまま深くなり、シルヴァンはアッシュの唇に舌で割って入った。自分よりも細い肩をしっかりと掴み、口腔内を蹂躙する。熱い舌を絡ませて、唾液を交換し、ごくりと飲み込めば下腹部にすぐ重い熱が溜まった。アッシュは物足りなげに舌を絡めてきて、さらにじゅうっと音を立ててシルヴァンの舌を吸う。シルヴァンも負けじとアッシュの舌を絡め、吸い取り、急くようにアッシュの上衣を脱がせた。  天幕の乏しい明りの中、アッシュの白い素肌はきらきらと輝いているように見えた。無数の傷があるが、それでも綺麗だとシルヴァンは思う。外気に晒されたことでぷくりと立つ目立つ乳輪と乳首が誘っているようで、シルヴァンはそこにむしゃぶりついた。アッシュのそこは何時だって甘くシルヴァンを誘惑してくるのだ。そして同時にアッシュにとっては性感帯にも等しくなっており、アッシュの甘い声が唇から洩れる。 「あぁ……んっ……シルヴァン、早いです……っ」  乳首を舌でこねくり回しながら、もう片方の乳首も手で転がすと切なげな吐息がアッシュの口から洩れた。せわしなく腰を揺らしているのは、誘っているのだろうとしか思えない。それでもシルヴァンはねっとりと乳輪を舐めまわしてから、わざと乳首にはふれずにいた。アッシュはもどかし気に目を開いて講義するように眉をしかめるが、シルヴァンは一向に乳首には触れてくれない。もう片方の手も、乳輪をなぞる様に描くだけで決して触れてはくれないのだ。 「シルヴァン……わざと、やってますね……?」 「お前、だって、乳首に触るとすぐイっちまうもんな?」 「なっ……すぐになんて、イきませんっ!」 「ウソつけ。ほら……こうして」  カリ、と乳首に歯が立てられるとアッシュの身体がビクリと跳ねた。そのままシルヴァンは乳首を噛み、舐め、時に食んで刺激をし続けると、アッシュの身体がびくびくと痙攣して甘い声が漏れる。 「も、……シル、ヴァン……いつも、……そこばっかり……」 「だってお前のおっぱい、甘くてうまいんだぜ?本当に。女の柔らかいおっぱいより、ずっとな」  言いながら胸板を揉みしだくように肉を寄せて、シルヴァンはアッシュの胸の間から顔を出す。アッシュは顔を真っ赤にして抗議したが、シルヴァンは行為を決してやめない。 「もう、乳首はいいですから……後ろ……」 「あーあ、本当にすっかりやらしくなっちゃって……そんなお前も、好きだけどな」  我慢しきれなくなったアッシュが下肢を覆う衣服を寛げて後孔だけを出して自ら解し始める。それをシルヴァンはじっと眺めていた。ひどくいやらしくて、刺激的なその光景にシルヴァンのペニスは衣服の中で確実に大きく育っていた。やがて窮屈になったシルヴァンは自らも下肢を覆う衣服を脱ぎ捨てると、アッシュの手をどけてペニスの先端を後孔にあてがう。 「や、急には……だめです……っ!」 「大丈夫だろ?お前が自分で解してるし、乳首への愛撫で大分蕩けてるぜ、お前のいやらしいところ」  挑発的に言いながらシルヴァンはペニスをアッシュの胎内へと埋め込んでいった。 「あ、あ、あっ……あーっ」  アッシュの白い喉がのけぞり、痙攣する。ひくひくと蠢く媚肉はシルヴァンのペニスを歓迎するかのように熱を持ち、先へ先へと導いているようだった。シルヴァンはそのままペニスをぐいぐいとおしすすめ、アッシュの最奥へと到達する。 「あんっ……そこ……、やだ、深い……っ」 「気持ちいいだろ……っ、ここを、これから思い切り突いてやるよ」 「や、やめ……ああんっ!」  ぱちゅ、ぱちゅ、と乱暴な水音と共にシルヴァンはペニスの抽出を開始した。入口付近まで抜いてから一気に最奥へと突っ込むことを何度も繰り返し、アッシュの身体は振り子のように動き、その都度口からは言葉にならない声がひっきりなしに漏れる。 「うあっ、やーっ、あっ、奥っ、奥、すご……っ、あ……っ」 「くそっ……きついな……お前の胎内、ホント、最高……っ」  きゅうきゅうと締め付けてくる胎内にシルヴァンの我慢も限界だった。膨張した欲を最奥へと吐き出すと、どくどくと大量の精液がアッシュの直腸に注がれてゆく。そこに子を妊娠する器官があれば間違いなく妊娠していたであろう大量の精液だ。シルヴァンがペニスを抜くと、どろりとアッシュの脚の間から白濁が流れ落ちてきて、それがまたひどくいやらしかった。  アリアンロッド攻略戦は案の定だが激戦だった。シルヴァンもアッシュの様子を気にしつつ戦っていたが、前線で戦うシルヴァンと後方支援のアッシュでは距離があり、敵味方と雑多に入り乱れて様子をうかがうのも一苦労だった。  だが、アッシュの動きを注視していたのは何もシルヴァンだけではなかった。ユーリスだ。アッシュの動きが時折鈍いな、とユーリスは薄々勘づいていた。避けられるはずの攻撃を避けられずに傷を負い、当たるはずの矢が当たらない。そんなことが戦闘で何度時もあった。あいつの実力ならば、そんなはずはないとユーリスは踏んでいた。それほどにアッシュは努力していたし、技術も磨いていたからだ。何より顔色がどこか優れない。そのことがひどく気にかかり、ユーリスは戦いが終わった後にアッシュに声をかけた。 「よお、アッシュ。お前、今時間あるか?」  だがアッシュは首を横に振り、訓練があるから、とユーリスの前から立ち去ろうとした。  その腕をつかんで封じたのはユーリスだった。 「お前、そんな態で訓練なんかしたって上達なんかしないぜ?心ここにあらずって顔してるしな」  ユーリスに言われ、アッシュはぎょっとしたようにユーリスの顔をまじまじと見つめる。 「なんだ?俺様の美青年ぶりに驚いたか?」  ユーリスは冗談めいて言うが、その目は笑ってはいなかった。アッシュはそれを見て大きく溜息をつく。 「違うよ。ただ……そう、……君の目は、誤魔化せないのかもしれないね」 「誤魔化す?」 「ここではなんだから、僕の天幕で話すよ。あまり、人に聞かせたい話じゃないから」  だから腕を離してくれないかな、と続けられて、その腕を握りしめていたことにユーリスは今更のように気づく。そうしていないと、まるで逃げられてしまうのではないかと思っていたからだ。 「なんだよ、それ!お前……ずっとそんな風にされてたのか……?!」  アッシュから事情を聴いたユーリスは激怒した。そのままシルヴァンの天幕に殴りこみそうになるような形相と勢いに、アッシュは慌てて手を振ってユーリスを制する。 「静かにして、ユーリス。これは、僕の意思でもあるんだから」 「お前の意思?お前の意思ってどういうことだよ?!シルヴァンが一方的にお前を襲ってたってことじゃないのかよ?」  尚も納得がゆかない様子のユーリスに、アッシュは苦笑して続けた。 「違うよ。僕は、シルヴァンがここにいる理由だから……拒むことなんか、できないんだ。僕が拒んでしまったら、シルヴァンは本当に壊れてしまうから」  壊れてしまう。それは本当だった。シルヴァンの精神状態は非常に危うくて、こと戦争が始まってからはその傾向が顕著だった。アッシュを抱いていないと駄目なのだという風に縋り、泣き叫んでいる子供のようにすら思えた。 「けどよ……やっぱり、それは健全な関係じゃないと思うぜ」 「うん、それは僕もそう思ってる。シルヴァンとも、ちゃんと話をしたいしね」 「そんなこと、あのお嬢さんが承知するのか?その様子じゃあ、完全にお前に依存してるじゃないか」 「でも話してみないことにはわからないし……僕も、シルヴァンのことを愛しているから」 「愛……っ」  流石にアッシュの口から飛び出た言葉に絶句したユーリスの顔は、言っては申し訳ないが傑作だったとアッシュは思った。天下の美少年が、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていたからだ。 「……シルヴァンはね、本当はとても弱くて……でも、本当に強い人。騎士のようにかくあろうと努力して、頭も良くて、頼れて、強くて……。僕にはないものを沢山持っている。本当に眩しいんだ。でも、その強さの中に隠れている弱さが僕には放ってはおけない、気づいてしまったから」  告げるアッシュの声色と表情に、ユーリスはその言葉が嘘ではないと、わかってしまった。だから唇を強く噛んで、言葉を続ける。 「……その、何だ、シルヴァンの強さとか弱さとかはよくわかんねえけど……お前が、あいつのことを本当に愛しているんだってのは、……わかった。だから、あいつを殴るのだけは、やめておく」  ユーリスは不服そうに美しい顔を歪めて呟くものだから、アッシュは思わず苦笑してしまう。この友人は、アッシュがシルヴァンを想っているのだと告げなければ、本当にシルヴァンを殴っていただろうから。 「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。僕の調子が悪いのは、僕の自己管理不足が原因だし、シルヴァンの所為じゃないよ。それにしてもユーリスの目は本当に誤魔化せないね」  そうは思えないがな、という言葉を寸でのところでユーリスは飲み込んだ。アッシュの体調がすぐれないのは、シルヴァンが夜毎抱きつぶしているからに決まっているからだ。アッシュはああ言ったけれども、行軍や戦闘に影響が出かねないとみれば、ユーリスは実力行使をするつもりでいる。 「当たり前だろう。俺様を誰だと思ってるんだ」 「ふふ、それもそうだね。じゃあ僕は、シルヴァンのところにいってくるから……」 「お、おい、言った先からお前は……!」 「言ったでしょう、シルヴァンは、今、僕しか拠り所がないって。この帝国軍の中で戦っていくには、……僕に縋るしか、ないって。話を聞いてくれて、ありがとう」  ユーリスはそこまで言われてしまい言葉を失った。アッシュはそれ以上の対話を望んでないこともわかった。そして同時にアッシュが本気でシルヴァンの事を愛しているのだと痛感した。二人の間には、割って入れない。そのことが悔しくて、そして今の今まで気づけなかったということに、ユーリスは小さく舌打ちしたのだった。 「シルヴァン、大丈夫ですか?」 「大丈夫って……アッシュか……」  天幕で座り、ぼんやりとしているシルヴァンに声をかけると億劫そうに顔をあげられる。シルヴァンが疲弊しているのは一目瞭然だった。何故ならばその手で打ち取ったのだから。タルティーン平原での戦いは、両軍が疲弊する戦いだった。どちらも全力で、そして激しい戦いだった。雨の降る中咆哮を上げたドゥドゥーの姿は忘れようとしても忘れられない。エーデルガルトを睨みつける強い瞳のディミトリの顔も、脳裏に焼き付いて離れない。何よりこちらに敵意を強く向けたフェリクスやイングリット、そしてかつての級友たち。シルヴァンは前線で彼らの相手をしてみせた。満身創痍で肩が取れかかった重傷で戻ってきたシルヴァンの面倒を見たのはアッシュだった。血を見るのが苦手なリンハルトがそれでも必死に治癒魔法をかけてくれたおかげでシルヴァンの傷は大分マシにはなったが、元通りになるには数か月かかるだろうとリンハルトは告げた。 「君が心配で、様子を見に来ました。何か欲しいものは、ありませんか?」 「……しいて言えば、お前かな。でも、今お前を抱こうとしても抱けないしな」  苦笑しながらシルヴァンが言うものだから、アッシュはシルヴァンの鼻の先に指を押し付けてむっとしたような表情を作る。 「僕が君の傍にいるだけじゃ、ダメなんですか?僕は君とセックスするだけの関係ですか?」 「そんなわけないだろう……俺は、お前を愛してるんだから」  そんな言葉がすらすらと出てくるシルヴァンはすごい、とアッシュは思う。愛している、という言葉の重みすらアッシュは正確には理解してはいない。ただ、シルヴァンが自分を必要としているということだけはわかるから、必ず傍にいるようにしているのだ。 「シルヴァンは……」  アッシュはシルヴァンの頬に手を寄せて、そのまま撫でる様に動かす。シルヴァンは目を閉じてその感触を楽しむ様に、穏やかに微笑んでいた。 「僕を愛している、って言いますけど、僕にそんな資格なんか、ないですよ」 「資格じゃない。そんなものはいらない、必要なのは、事実だ」  頬を撫でる手に己の大きなそれを重ねて、シルヴァンは告げる。その声はゆるぎなくきっぱりとしていて、いつの間にか見開かれた瞳はアッシュの目を真っ直ぐに見ていた。 「俺には、お前が居なきゃダメなんだ。それに、お前の全てを愛してる……声も、身体も、真っ直ぐな心も、存在も、全部、全部、な」 「そんなこと言われても、僕にはよくわかりません」  不安そうに手を離しそうになるアッシュの手を握りしめて、シルヴァンは言葉を続けた。 「僕も、君の事……いつの間にか、愛してました。愛しているって、……いうのか、君の傍にいたい、君のために何かしたいって、いつも思うようになってました。君が大切で、喪えなくて、……だから、君の傍にいなきゃならないって」 「アッシュ……!!」  突然抱きしめられて、アッシュは身じろいだ。それほどにシルヴァンの行動は突然だったのだ。まだ怪我も完璧に治ってないだろうに、シルヴァンはきつくアッシュを抱きしめてくる。 「シルヴァン、怪我が……!」 「そんなのどうだっていい!お前が……お前が、俺を愛してくれているって言葉、初めてだよな……?!本当に、本当に俺を……」  感極まったのか、シルヴァンの双眸からは涙が流れている。そんなシルヴァンの目元を優しく拭いながら、シルヴァンの怪我をしている方の腕をゆっくりと外してアッシュは微笑んだ。 「いつの間にか、好きになってました。君は……誰にでも優しくて、公正で、気高い人なんだって、気づいたんです。こんな僕にも、平等に接してくれたじゃないですか。本当なら君は大貴族で、僕なんて話しかけられないような人物なのに……それに、君が言った言葉、人として当たり前のことを当たり前にするっていう言葉、純粋にすごいと思いました。君みたいな人がいるんだって気づいて、僕は……本当に嬉しかったんです」 「アッシュ……」 「そして、気づいたら好きになってました。君に求められることが、嬉しかったんです。黒鷲の学級に来てから不安だったけど、君がいてくれたおかげで、皆とも打ち解けられました。本当に、ありがとうございます」 「そんなことねよ。逆に、俺だって、お前がいたから……アッシュ、好きだ」  言葉と共に、唇が重なる。やがて口づけは徐々に深くなり、舌と熱が絡み合い、水音が漏れた。 「んっ……シルヴァン、今日は、これ以上は、ダメです」  ちゅぱ、と音がして二人の唇が離れる。離れた唇の間には透明な糸が垂れ下がり、落ちた。 「アッシュ、けど、俺はお前を抱きたい」 「ダメですよ。そんなことをしたら怪我が余計に治らなくなります。怪我が治ったら……また、……抱いて、いいですから」 「アッシュ、本当か?!」 「はい。君に抱かれるのは、……気持ちが良くて、好きです。それに、不安がなくなるんです。明日死んでいるかもわからない現状なのに、きっと明日生き延びられるって、思えるんです」 「アッシュ……愛している。愛してるよ、アッシュ……俺には、お前だけだ……」  シルヴァンはアッシュを強く抱きしめたまま、涙を流し続けたのだった。  戦争は終わった。美しかったフェルディアの街はレアの炎に焼かれて無残な姿を晒しているが、復興はこれからだ、とエーデルガルトは言う。闇に蠢くものとの対峙も残っているが、まずはともかく休もう、と言い出したのは誰だったか。気づけば宴の準備が始まっていた。  激戦だった。だからこそ、皆反動で浮かれていたのかもしれない。枢機卿ですら表情を緩め、酒を傾けていた。カスパルなどは酒樽ごと飲み干して、ドロテアに怒鳴られ、ベルナデッタは慌ててカスパルを止めている。本来止めるべきはずであるリンハルトは相変わらず船を漕ぎ、ペトラは宴の中心で故郷の踊りを踊っていた。皆、戦争が終わったことを素直に喜んでいたのだ。  そんな中、ユーリスは木陰で潜む様に皆を眺めているアッシュを見つけ、近寄った。 「なんだよアッシュ、中に入らねえのか。皆お前の料理が旨いって喜んでるんだぜ」 「でも僕は、王国の裏切り者ですし」 「そりゃあ俺も一緒なんだよな」 「げ、シルヴァンも一緒かよ」 「残念ながら。俺とアッシュは一心同体なんでね」 「全く食えないお嬢さんだよ、アンタは。敵には回したくないね」 「同じ言葉をそっくりかえすぜ。あんたが敵じゃなくてよかった」  シルヴァンはそう言いながらニヤリと笑い、カスパルとどちらが飲めるか競争しているバルタザールを眺めている。しかしその手はアッシュの腰にあり、しっかりとアッシュを捕らえている。まるで自分のものなのだと誇示するように、ユーリスに挑戦的な視線を送りすらしてきたからユーリスは溜息をつき、肩を竦める。 「はいはい、あんたらの邪魔をしたら馬に蹴られるだろうから俺は戻るぜ、枢機卿に話があるっていわれてるんでね」 「また、戦いの話ですか」 「まあな、本当の戦いはまだ終わっちゃいないしな……」 「闇に蠢くもの、ですか」  アッシュが小声で囁くように呟けば、ユーリスは頷く。 「ああ、あいつらをつぶさない限り、フォドラに夜明けは訪れない。エーデルガルト皇帝の真の理想も潰えちまうからな」  言うとユーリスは素早く枢機卿の元へと駆けていった。 「アッシュ、……お前、戦う気なのか?」  その様子を見ていたシルヴァンが、不安げに問う。 「どうしてそう思うんですか?」 「いや、お前はユーリスとは旧知の仲なんだろ?それに、話を切り出したからてっきり……」  尚も不安そうなシルヴァンの頬に手を寄せてアッシュは微笑んだ。 「どうでしょうね。僕にはガスパールを落ち着かせなければならないっていう仕事がありますから。でも皇帝陛下から必要とされれば、仕事はします」 「その仕事、……俺も、手伝わせてくれないか?」 「ダメです。君には、もっと大切な役割があるでしょう?」  一刀両断されてシルヴァンは溜息をつく。確かに北方ゴーティエ領の事はエーデルガルトから一任されていた。一度は出奔したものの、結局は戻って来いと父から手紙が届いていたのもある。結局のところ、シルヴァンの持つ破裂の槍がなくばスレンとの交渉などは出来ないと踏んだのだろう――そう、シルヴァンはスレンと戦いではなく交渉しようと父に持ちかけていたのだ。出奔していた息子からの突然の手紙に驚きはしたのだろうが、すぐ返事は帰ってきた。そして、それは戸惑いつつもシルヴァンの意志を肯定する内容だったのだ。 「……そう、……だよな。……けど、俺はお前と離れたくない。お前を離したくないんだ、アッシュ」  縋るように抱きしめられて、アッシュは戸惑うような表情を見せた。 「シルヴァン。僕たちの仲は、戦争中だけのもの、そういう話だったはずです」 「でも、お前だって俺を愛しているって言ったろう?」 「愛しているから、です」 「だったらなおのこと離せない。俺は、お前を離す気なんてない。もし兄弟たちのことがきになっているなら、お前の家族ごとお前たちをゴーティエで面倒を見る。そのくらいの覚悟はある」 「シルヴァン……それでも、僕は」 「アッシュ。俺は諦めないからな。絶対に、諦めないからな」  強い言葉で言うと、シルヴァンは仲間たちの輪の中に入っていった。その背を視線だけで追いながら、アッシュの胸中は複雑であった。   「初めまして。シルヴァン=ジョゼ=ゴーティエと申します」  青年は面食らった――目の前にいる美丈夫を知らない訳ではない――というかフォドラでこれほど有名人もいないだろう。シルヴァン=ジョゼ=ゴーティエといえばあの大貴族ゴーティエの嫡子だ。そして同時に女癖の悪さでも有名で、何故彼が今自分の目の前にいるのか理解するのに、時間を有した。 「あの、……兄さんに何か、用事でしょうか?」  青年の兄アッシュは、先の戦いでシルヴァンと共に戦った。その中で友情を育んでいたという話は兄から聞いていた。だから、兄を訪ねてきたのだろうか。だが兄は今ガスパール領を纏めるのに必死で、日夜問わず働くような繁忙な日々を送っている――そうでなくとも裏切り者と誹られている兄は、信頼を取り戻すのに必死だった。その必死さが、ようやく実を結びそうなタイミングで、シルヴァンがここガスパールを訪れたのだ。まるで、何かを待っていたかのように。 「そうだな。お前の兄さんを、浚いに来た、と言ったらどうする?」  冗談ではない顔で告げるシルヴァンに青年は面食らった。最初は何を言われているのか理解できなかった。そして、シルヴァンの言葉の意味を理解するうちに、友情を育んだ、という言葉の本当の意味を理解して、ひやりとしたものが背筋を伝ったのだ。 「何故、ですか。ゴーティエの御曹司と言えば、申し訳ないですが良い噂は聞きません、その、女性がらみではですが……」 「ははは、流石アッシュの弟だな。ハッキリと言いづらいことをいってくれる。だが、そうだな、その答えは俺がアッシュを心から愛しているからだ。嘘偽りなくな」 「ですが……例えシルヴァン様が兄を愛していたとしても、そして兄がシルヴァン様を愛していたとしても、ゴーティエ領は遠いです。それに、血筋を重んじる家系。北方スレンとの問題もあるでしょう。そう簡単に話がすすみますか?兄は、本当にそこで幸せになれますか?」  怒るような青年の問いに、シルヴァンは参ったな、と溜息をつきながらも、アッシュよりも上背のある、けれども瞳が良く似た青年のその目をしっかりと見て口を開く。 「そうだな。確約は出来ない。アッシュが幸せかどうかはあいつ自身が決めることだ。不幸にするかもしれないし、泣かせるかもしれない、けれど、どうしても俺にはアッシュが必要なんだ。俺はあいつしか見えない。本当に、あいつしか見えてないんだ」  硬い声は、真剣そのものだった。青年は頷くかどうか迷い、やがて小さく溜息を落とす。 「兄さんの話を聞かないと、返事は出来ません。今は、それでいいですか?」 「ああ、勿論構わないさ」  言うシルヴァンの表情は不安げで、瞳は揺れていた。青年は、その表情が嫌に印象に残るな、と思った。 「シルヴァンが来ているの?なら先に知らせてくれれば……」 「僕と話をしなきゃならないってシルヴァン様が言ったんだよ。それで、話をしてきた。シルヴァン様は兄さんをゴーティエに連れて行きたいって、それから兄さんを愛しているっていう話もきいた」 「……そう。それで、お前はどう答えたの」 「どうとも。だって選ぶのは兄さん次第でしょ。僕は確かに兄さんの家族だし兄さんの幸せを願っているけれど、選ぶのは兄さんだし。それに、話をしてわかったけど、シルヴァン様は誠実な方なんだね。噂と違って」 「あはは、確かにシルヴァンの放蕩ぶりは有名だったからね」 「それが兄さんを愛しているって真っ直ぐに僕の目を見て断言した。不幸にするかもしれない、鳴かせるかもしれないけれど、それでも必要だと断言したんだ。これ以上僕に何が言えるの?」  どこか責めるような口調になってしまうのは八つ当たりだと青年は自覚していた。それはそうだろう、何十年も愛していた兄をとられるのだから、仕方ない。けれど、兄が納得しているのならばそれでいいとも思っていた。それほどの説得力が、有無を言わせないものがシルヴァンの表情と言葉にはあったからだ。 「……そうだね。僕は、シルヴァンを愛しているよ。傍にいたいと思う。けれど……勇気が出なかった。僕はガスパールやお前たちを理由にしてシルヴァンから逃げてたんだ。けど、シルヴァンはお前たちも引き取るとまで戦時中に言ってくれたんだ」 「僕たちまで?ゴーティエに?」 「そう。そこまで彼は考えてくれていたんだよ。ガスパールのことは皇帝陛下がいるから心配ないと思う。それに、裏切り者の僕よりも、もっと適切な人材を枢機卿が用意してくれると思う。無責任かもしれないけど、その方がいいとすら、ずっと思ってた。でも、僕には勇気がなくて、同時にガスパールのことは責任を取るまではと思ってここにいたんだ」 「そうだったんだ……。シルヴァン様は、そこまで、待っていてくださったんだね」 「……僕のことを、誰よりも見ているのは、多分シルヴァンだから」 「それはちょっと妬けるな」  拗ねたように青年が言えば、頭を撫でられる。幼い頃はよくこうして兄に頭を撫でて貰ったことを思い出して、青年は少し恥ずかしくなり、同時に嬉しかった。兄は変わっていないのだ。 「お前たちは知らなかったかもしれないけど、書簡のやりとりはずっとしていたんだ。ガスパールのこと、お前たちの事、たくさんのことをシルヴァンは聞いてくれた。そして、理解してくれた。それが僕はとても嬉しかったんだ」  この上なく幸せそうに言う兄に、これ以上何を言っても無駄なんだろうな、と青年は思い、ワインを傾ける。今年できたばかりのワインの味は格別で、けれども少し酸味が強いかな、と思った。 「シルヴァン、来てたんですね。先に言ってくれれば……」 「先に挨拶しなきゃならないのはお前じゃあないと思ったからな、黙って来たんだ。それにしても、お前の弟は本当にいい男だな」 「そうですね、よくできた弟です。妹たちもそうですけど、土地に良く馴染んでくれて、僕を何度も助けてくれました」  互いに向かい合いながらワインを傾け、上機嫌で話すシルヴァンは本当に嬉しそうだった。一方、シルヴァンの本当の目的をうっすらと察しているアッシュはシルヴァン程酒が進まず、ワイングラスを弄んでいる。 「アッシュ。ゴーティエに来て欲しい。お前の家族も、勿論一緒に」  唐突に告げられた言葉は、予想通りだった。アッシュは一瞬口を紡ぎ、心の中で言葉を整えてから、告げる。 「それは、できません」 「アッシュ、何度も言うが俺はお前を愛しているしお前が必要だ。それに、枢機卿はもうガスパールに政務官を派遣することを決めている」 「……そこまで、手を回したんですか」 「お前が苦労してガスパールを立て直したことは知っている。けど、お前を恨んでいる奴らはまだいるんだろう。お前の弟からも聞いたよ、よく眠れていないんだって話もな。ここは安住の地じゃない。それに、皇帝陛下の伴侶は先生だ。同性婚だって珍しい話じゃない」 「けれど、ゴーティエ領は子孫を残す義務があるでしょう。破裂の槍がなければスレンとのやりとりはままならないんじゃないんですか?」 「その話だが、親父が対話路線でいくことに賛成してくれた。勿論そう簡単にはいかないだろう。だから、なおの事お前の力が必要なんだ」 「……僕の、力?」 「お前の、その、何ものにもとられられない価値観だ。お前はなんだって公平な目で見てくれる。俺を、ゴーティエ御曹司と知ってもなお、ただの友人として接してくれた。俺にはそれが嬉しかった。そして眩しかった――そして、恋をしたんだ。お前に」  眩しそうに眺められて、アッシュは呆然となる。そんな話は聞いたことがなかった――いや、聞いたかもしれないが、こうもはっきりとは告げられなかった。 「シルヴァン、それは……本気、なんですか」 「疑うのか?」 「い、いえ。その、疑うというか……君がそんなことを言うのが、信じられなくて」 「意外だったか。けど、本気だよ。俺は、だからお前を愛しているんだ。お前しか見えないんだ。戦争中は確かにお前に縋っていたよ、お前が拠り所だった。けれども離れてみてわかったんだ。本当にお前を愛していた理由はそうじゃなかったんだって。お前がお前だから、俺はお前を愛したんだって」 「シルヴァン……」  アッシュが甘く囁くと、シルヴァンが立ちあがり、アッシュの唇に口づけをした。それはほんの一瞬だったけれども甘く、そして優しかった。シルヴァンの手がアッシュの頬に寄せられ、口づけが深くなる。絡められた舌が水音を立てて、熱くなる。  そしてどちらからともなく離れた唇からは、透明な糸が垂れ堕ちた。 「……そこまで言われて、断れる理由は、ないですね。フォドラ中を探しても、君みたいなことを僕に言う人間なんて、きっといませんんから。それに弟たちのことまで考えてくれて、本当にありがとうございます」 「……当たり前だろう。お前の家族なんだから、俺の家族だ。これからは、ずっとな」 「そう、ですね。……シルヴァン、ありがとう、ございます。僕を、見つけてくれて」  アッシュがはにかむように笑うと、シルヴァンは再び口づけをしてきた。  その口づけは甘くて、心が蕩けるようだ、とアッシュは思った。    
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