窓の外から入ってくる日差しが、ゆったりと室内に注ぎ込んでいる。城の居住区画最西端に在る先代女王の私室はこの刻限になると西日が差し込み、狭い居室内がすべて赤く彩られるのだ。
簡素な家具のみがきっちりと据え置かれている。少なくともかつて女王と呼ばれた人がそこで生活していたとは思えない、使用人らが使うような簡素な寝台の上で、二人の女性が寄り添い合い寛いでいた。現女王ミカヤと先代女王ペレアスの二人だ。
寝台に座るペレアスの膝に横になり、片手は滑らかな太ももに添えられていた。スリットから覗く透き通るような素肌に、時折触れるように。
やがてその手つきはゆるやかに意思を持ち始め、際どく素肌を愛撫するようになる。ペレアスがそれを咎めようとしたタイミングでミカヤが徐に起き上がると、身体向きを変えてペレアスを横から抱くよう体勢を変える。当然、片方の手は腰に回され、もう片方は遠慮なく胸元に添えられている。
「女王陛下、まだ…陽が高いうちは」
「何故?」
すぐさま疑問を返すミカヤの顔は己の行動が当然なのだといわんばかり。どころか、そんな事を言われるのが心外だ、とばかりにペレアスの頬に手を寄せる。眉を寄せ静かに抗議したところで、ミカヤは可愛らしく首を傾げてみせるばかり。
ペレアスが身につけているものはいつものようにきっちりと肌を見せない服装ではない。肩と鎖骨どころか胸元も殆ど露出している細い上半身にぴたりと合ったシンプルな黒のロングドレスだ――まるで、性を売りにするような女性が身につけるような。
普段はきっちりと着込んでいる上に目立たぬよう配慮された衣装によりそこまで目立たない、細身に相応の薄い乳房を覆っている薄絹はごく薄く、かつ非常に際どい。小ぶりな乳房は半ば露出しており、ぴたりと肌にあわさった薄布がくっきりとその頂の形までも強調している。そもそもがごく薄の生地でありかつ、きわどいところまで場合によっては見え隠れする。
下半身を覆うスカートも、腰の部分まで大胆にきりこまれた深いスリットと布地幅の狭さから、大事な箇所を辛うじて隠しているという程度。太ももの付け根も小ぶりな丸みを帯びた双丘も殆ど露出していており、何よりも下着は上下とも身に着けてはいない。
ゆえにこのままの衣装で歩こうものならば、乳房も太ももも足の付け根も場合によっては丸見えになってしまうのではないか、というほど全ての箇所が際どく、ギリギリにつくられていた。細めながらも肉感のある太ももは膝上までが黒のストッキングに覆われてはいるものの、淫靡な雰囲気を増すだけのもの――要するに、このままの格好では外出はおろか場内を歩き回ることすらも相当に危うい格好だ。それもそのはずで、ミカヤの目的もそれだった。
ミカヤてのひらはペレアスの背中と胸元をゆったり撫で回している。その都度敏感な乳肉が疼き、もっとも敏感な部分が切なさを訴えている。
が、肝心のペレアスが気乗りしないのが、元々陰りのあるまなざしを伏せ、時折ミカヤを牽制するように溜息を漏らしている。
「けれど、久しぶりじゃない」
切なげに視線を落とし、ミカヤは俯いてしまう――ただし、胸元に触れるだけの手は明らかに目的をもっているし、背中のものは腰に徐々に撫でる箇所をシフトしてきているのだが。
「陛下!」
その動きを制するつもりで少し強い口調にしてみたところで、ミカヤは顔をきっとあげて唇を真一文字に結び、うるうると潤んだ目で訴えかけるばかり。
まるで子供返りでもしたかのようなミカヤの態度は、理由がないわけではない。なによりもこうして二人きりの時間だけに限られていた。
自分の前だけでそうした態度を取る、そういう彼女がいとおしいと思う気持ちは何年経っても変わらない。出会ったばかりの頃よりも長い時間を共に過ごしてきている分、愛情だけならばいっそう深くなっている。が、それとこれとは話が別なのだ。
少なくとも、ミカヤは今は一国の女王。それがこんな日も高いうちから愛人(というとミカヤは怒るのだが、どこをどう見てもペレアスの立場は女王の寵愛を一身に受ける愛人以外には見えない)といちゃついてる、では、示しが付かない。色々と。
「…だって……」
尚も抗議するミカヤに、ペレアスは困ったように微笑みかけてからその手を取り、軽く握り締めてみせた。困惑するようにミカヤが視線を右往左往させてから上目遣いに見上げてくる。
「陛下、私は逃げたりしませんから」
「そんなの、わかってるわ」
「それならば、もう少しだけ待って下さい、私はまだ仕事が残っているのです」
そこまでを言い、ペレアスはミカヤの頬に小さなキスを落とす。ペレアスとしてはこれでお終いにするつもりでそうしたのだが。
「…だって…もう、二週間も、あなたに触ってない……」
するり、と何の前触れもなく右手が動かされ、ゆるやかに服の上から乳房を掴まれた。
あまりに突然の事でペレアスが反応できないのを良いことに、ミカヤはやわらかい感触を楽しむように――的確な刺激を一部に与えるために五指を使い手馴れた様子で乳房を揉み出した。
「やわらかい…」
「…へ、陛下!」
思わず上擦ってしまう声を飲み込みながら、ペレアスはやわらかく与えられる愛撫から逃れんと身体をよじらせようとするも、ソレを事前に察したミカヤによりしっかりと横から抱き締めら、拘束されてしまう。そう強い力ではないのだが、ふわりとミカヤの身体から香る甘い匂いと胸に与えられている柔らかな愛撫のお陰で力が抜けてしまい、抜け出すことすら適わなかった。
「二週間も、……二週間も、私、我慢したのに…」
二週間、とミカヤが繰り返すのは、ベグニオン帝国皇帝サナキがデイン王国を訪れるため、その準備として二人とも忙殺されていたからである。仕事に追われ、ミカヤは当然のことながら文官としての地位もあるペレアスもまた、山のような仕事を抱えていたのだ――今日も今日とてようやく一日分の仕事を終えたところで、女王陛下の来訪とあいなったのである。
「ぁ……」
薄い布の上から感触の違う箇所を見出し、ミカヤはその付近を重点的に愛撫する――それは大切なものを包み込むかのように、いつの間にか両のてのひらを押し付けながら愛撫するだけの甘い刺激に、ペレアスの身体はあっさりと服従してしまう。その証拠に、か細い声が唇からもれるばかりでなく、白い肌がほんのりと染まりだしていた。
「ふぁっ……だ、めです……んんっ」
「ね、いつもみたいにしていい?」
たったそれだけの刺激に疼いてしまっているう身体を誤魔化すため、チラとドアの方に視線を向けるが、ミカヤには全く効果なし。そうしている間にも、むき出しの肌の感触を指先で楽しんだり、胸の谷間を往復したり、かと思えば薄いドレス生地ごと淡いふくらみをつつみこみ、下から持ち上げたりしている。その度に敏感になってしまっている乳首と薄布がこすれ、緩やかな快楽が断続的に与えられ、息があがり、いよいよ下腹部が熱を持ち出していた。トロリと熱いものが零れ落ちてくるのがわかり、ペレアス唇を強く噛む。
「…乳首、もう硬くなってきてる…」
それを察したのか、薄い布越しにもはっきりとわかる二つの突起を交互に指先でつつき、ペレアスの顔を覗き込みながらミカヤは満足げにうっすらと微笑んだ。全体に汗ばんできているせいでふくらみの頂の蕾の色がはっきりと透けて見えてきており、薄布のわずかな皺できわどく見えなかったりするものだから、ひどく扇情的だ。
「は……ふ…ぅぁ…っ」
「…ふふ、とっても…おいしそう…」
ミカヤの愉しげで意地の悪い声が耳元でささやかれ、熱い吐息と熱が耳たぶに触れた。続けてねっとりとした熱い感触が耳朶の外側をなぞり、裏側を舐め回される。
指先は相変わらず乳首の先を布の上からこね回すように動き、時折爪の先のみを押し付けられた。かとおもえば指の腹を押し当てられたり、その周辺を指先で撫で回されたりする。快楽を与えるためだけの繊細なその動きに、内にこもっている熱が高められ、ペレアスは快楽に顔を歪めた。
「ぁんっ!」
「本当に乳首が弱いわね……」
身体のすべてが情けないほど敏感になり、時折動くミカヤの細い髪の毛の動きですら快楽を感じてしまう。ミカヤの指はペレアスの弱いトコロなどは既に知り尽くしているから、当然そこを攻めてくる。
「は、……ぁぁ……ん!」
最早乳房に触れられるだけで、甘い声が出てしまうような状態だ。乳房から感じられる淡い快楽に身体全体が熱を持ち、下肢がじわりと疼いていた。とはいえペレアスが本気で嫌がっているのならば、ミカヤを払いのけることも出来た。それをせず、ミカヤの愛撫を甘んじて受けているのはペレアス自身の意志だった。
「ふぁッ?!!」
唐突に、薄布と素肌の間にミカヤの指が侵入してきた。細い指先が薄い乳房をゆるく刺激し、人差し指と中指がすっかり固くなってしまいじんじんと疼く乳首をとらえる。今までとは比べ物にならない刺激に、思わず悲鳴を上げてしまってから、ペレアスは後悔するように潤んだ目でミカヤを一瞥した。
「すごい…熱っぽくなってるわ…」
「ぁ……ぁふぅん……っ!だ、駄目です…そん、な…ぁ!」
くにくにと指先で乳首を指先で刺激しながら、もう片方の手がペレアスの背中からドレスをくつろがせてずりおろすと、薄いながらも綺麗な形の乳房がゆるりと外気に晒される。真っ白できめ細かな肌はしっとりと濡れ、薄色の乳輪も乳首も張り詰め、痛々しさすら感じさせる。控えめでゆるやかな曲線が先端に行くにつれてほのかな桃色をまとい、つんと尖りきった乳首は全体の大きさにしては小ぶりで可愛らしい。
「とってもいやらしくて……かわいいわ」
「や、ぁの…あまり、そんなふうに…」
ミカヤの視線は無遠慮に肌蹴られた乳房に向けられている。そのじっとりと観察するような視線に晒されて乳房がふるりとゆれ、更に乳頭が膨らんできていた。
「乳首、すごい、感じてる?」
「い、いわないで…ください…」
「ねえ、…あなたの身体、いったい周りの連中がどんな目で見てるか、知ってる?」
そっと唇を乳房によせながらミカヤはささやき、人差し指でぴん、と乳首を弾いた。
「あんっ!……い、…いえ」
「…自分では自覚してないみたいだけど…」
今度は指先が、乳首を軽く押す。「や、だめ…」甘さを含む抗議を無視し、ミカヤはなおもくにくにと乳首を指先で弄り続けた。「……あなた、スタイルがいいって評判なのよ…男女問わず、ね。だから、…その肌を見たい、っていうだけじゃなく…触りたい、揉みたい、吸って、めちゃくちゃにして…もっと、いやらしいことをしたいって思ってるのよ」
いくら衣服を着ていようと身体の線は隠せない。元来文官の衣服はゆったりとしたものが多いのだが、外歩きやともすれば異国に赴くことの多いペレアスは肌を見せずとも動きやすい服装を好んでいた。ゆえに将兵のみならず城内で生活している男連中の彼女に対する視線の意味は、ことさらにミカヤの能力を使わずとも理解できた。それに彼女の容姿はその控え目さゆえに目立たないだけで、整っている。加えて柔らかな雰囲気と柔軟な物腰、女王の愛人、という下卑た形容で彼女を罵る輩も少なくはない。だからこそミカヤは彼女にできるだけ肌を出さぬように厳命していた。今日のこの格好はあくまでも特別なのだ。でなければ、胸や脚を露出させた格好などは絶対にさせたくはない。
「でもね、こうしていいのは私だけ」
「はぁ、…あ…ん!」
淡々とした声だったが、その中には明らかに憤りが含まれていた。彼女の、望まずとも心を読んでしまう能力のせいなのだろう。
「あなたは…私のものなんだから」
ミカヤの金色のまなざしが、じっとりと自分の乳房、それも膨らんだ乳輪と乳首に注がれている。それだけで、何もしていないハズなのに乳首はひくつき、いやらしく勃起していた。
「ほんとに、おいしそう…」
「ふぁぁあん!」
「乳首の色も薄くて、かわい…ふふ、でも今は、凄く目立つわ。感じてるわね」
胸だけを露出された羞恥から、ペレアスの頬はいよいよ真っ赤に染まる。胸を隠すように腕を寄せようとするのを制し、ミカヤは外側から乳房を包み込むようにやんわりと手を添えた。
「イイのよ、とってもかわいい」
ミカヤはそのまま乳房を寄せるように手のひらで包み込んで、五指を巧みに使い分け使ってゆっくりと揉み出す。
「だめ、…ぁ…だめ、です…本当に、…これ以上、ぁん!」
抵抗めいたことを言うものの、ペレアスも本気で嫌がっているわけではなかった。
皇帝の来訪といえばデイン王国にとっても重要なイベントになる。その為の下準備や手配などで忙殺されていた上、それ以前も互いの仕事で都合がつかず、ようやく、無理やりに作った時間だった。
ペレアスにしてもミカヤと二人でゆったりと過ごしたいと願う気持ちは強くあり、少しくらいならば触れ合いたいとも思っていた。それが、ミカヤの方からいきなり手を出されただけのことである。
心の底ではミカヤの行動に歓喜し、もっと触って欲しい、もっともっと触れ合いたいと願っているのも事実だ。
だから抵抗といってもせいぜい言葉だけであり、ミカヤの手を本気で止めるようなことはない。どころか、その手の動きに応じるように上半身をくねらせ、露になりかけている太腿を無意識にこすり合わせていた。乳房だけではなく、もう既に濡れてしまい蜜を滴らせている秘所も、疼く熱を内包しながら刺激を欲しているのだ。
「ここで止めたら辛いのは誰?」
それを承知しているからの言葉…というよりは純粋に嗜虐心から来ているのだろうが、ミカヤは意地の悪い言葉を繰り返し、飴でもなめるみたいにペレアスの乳首に顔を寄せてぺろりと舌先で舐め、含んだ。
「ひっ…ぁ」
唇に挟まれ、また舌先で先端部分を軽く刺激される感触がたまらず、ペレアスは身体を何度か痙攣させ、甘い息と声を途切れ途切れに吐き出してしまう。
「ふぁっ…ぁ……わた、…しは、…いいんです……それ、より……はっ、……ぁっ、んっ!」
ちゅっと音を立てて触れられたと思えば、唇だけで強くはさまれ、舌先で一番敏感な先端の部分だけを突かれて、ペレアスは思わず下肢を動かしてしまう。
「んぁ、ぁぁっ、んっ、…ぁ…あ!」
ミカヤの舌先がゆっくりと乳首を嘗め回す度に、既に熟れてしまった陰部がじんじんと疼いて、あからさまに熱を欲していた。これ以上の刺激を、もっと、と言わんばかりに愛液が太腿の間でトロリとこぼれ、蠢く感触がひどく生々しく感覚されて、ペレアスは眩暈を覚えた。
「だめよ」
ふふ、と小さく笑うと、ミカヤは上半身を伸ばし唇を合わせてきた。
「ん………ぅ」
最初はただ唇を合わせるだけのものだったが、すぐさまミカヤの舌先が侵入してくる。応じてしまったら駄目なのだと理性はささやくが、子宮から疼くような耐え難い快楽と熱が、その理性をいとも簡単に駆逐させてる。ペレアスもまた、自ら舌先を絡めるように、ミカヤの唇を求めた。
互いに淫らな音を立て、吸い付く行為を何度も、何度も繰り返す。そうしているうちにミカヤの胸元への愛撫が再び開始され、ペレアスもミカヤの肩に両腕を絡め、肌蹴た胸元を押し付けるように動く。
そして、ミカヤがたまらないように自ら衣服を脱ぎ捨て、胸元を露にするや、じっと潤んだ瞳でペレアスを見つめてきた。
「私ペレアスが欲しいの……もう、我慢できない」
「……女王、陛下……」
至近距離にある熱と快楽に潤んで欲望に輝いている瞳は、理性など殆ど残っていないように見える。小さく呼吸を繰り返している唇も濡れていてやけに赤いく、肌に触れるミカヤの吐息は熱い。更にこうしている間でもその手は常にペレアスの胸元と腰をまさぐるように動き続けて、じれったい快楽を与え続けているのだ。
「ソレは駄目。ちゃんと、いつもみたいに…ミカヤって呼んで」
拗ねるように口を尖らせ、そして頬に軽くキスをするミカヤに、ペレアスは最後の砦とばかりにふるふると首を横に振り、俯いた。確かに快楽に身を委ねたい、愛しい人を感じたいという欲は沸々と身体の内側からペレアスの理性を苛んではいたが、同じくらいはっきりとある理性が快楽に溺れる寸前でペレアスの意識を引き止めている。先ほどのように、ちょっとした刺激で結論がすぐさま変化するくらいにギリギリの状態ではあったが、それでも、ペレアスはミカヤの言葉に首を縦に振ることは出来なかった。
*こちらは2016年12月発行同人誌[かげろうのゆめ]サンプルです。通販はBOOTHをご利用ください。