「ねえ、ルキノ」
ただ、名を呼ぶ。その淑やかな声が、どこか色めいている。
主君たるべきひとエリンシアの声、それだけで、ルキノは説明のつかぬ心のざわめきと熱を帯びる。ましてその繊細で美しくやわらかな指先が、髪をわけうなじに遠慮がちに触れているとなれば、身体が反応しないわけがない。
エリンシアの吐息を間近に感じたときから、既に下腹部は熱を密やかに溜めている。ただ、そのような己の浅ましい欲望を、認めながらもよからぬことであると、そう思っているだけだった
だからこそ、ルキノはエリンシアに応える素振りは見せなかった。応えたいという想いは。そもそも自分の我侭なのだ。フェリーレ候が謀反を起こす疑いあり、そのような状況で、このような戯れは。
逸る心とは裏腹に、未だルキノのおおよそを占めている理性はいたってまっとうな答えを導き出している。
だが、動けなかった。
エリンシアの愛撫は彼女の慎ましやかな性格もあいまって穏やかなのだが、遠慮も容赦もない。明確な目的意識を持ち、うなじを何度か愛撫するやそれは肩口へと移動してゆき、そこからすとんとルキノの豊かな乳房にたどり着く。服の上からでもよくわかるほど形のよい大きなそれを、両手でさわさわと撫でていた。それでもなお、ルキノは動けなかった。
股間が、じんわりと疼き始める。エリンシアの愛撫とすぐそばに感じる呼気に、わずかずつ滲んできている蜜が下着を濡らしていた。ルキノは、唇を小さくかみ締める。
「ルキノ、ねえ、その声を聞かせて…」
ちゅ、と首筋に小さく唇を落とされ、耳元でささやかれた。愛らしい、ねだるような声。
言葉が唇から発せられるたびにかかる吐息に、ルキノの背筋をぞくりとしたものが貫いた。身体が一瞬、ふるりと震えてしまった。
「…エ、エリンシア様……」
それでも気を張りながら振り返る乳兄弟に、エリンシアは花のような笑みをにこりと向ける。
「愛しています、私のルキノ」
言うなり、エリンシアはルキノの胸元から手をすべりこませた。
「ぁ……」
滑り込んできたエリンシアのてのひらが、ルキノの豊かな乳房に直接触れていた。初めての経験ではないのだが、それでもルキノは羞恥に顔が紅潮してゆくのを自ら感じていた。
胸元をくつろげ乳房を露にさせると、エリンシアはたっぷりの柔らかなそれを自らの手でささえ、揺らした。
「ふふ、大きい…やわらかくて、あたたかい…」
てのひらで乳房の下側を、エリンシアのやわらかい手のひらが愛撫をする。エリンシアがてのひらを動かす度に、それだけでルキノは快楽を覚えた。股間は濡れそぼり、脚を動かそうモノならば音を立ててしまう。ソコをこすり合わせたい衝動をルキノは必死に抑えていた。
「ルキノ、声を聞かせて。あなたの声。そうしたら、許してあげます」
「お、おやめください…これ以上は……」
乳房を直接触れられてもなお、ルキノは理性を保とうと必死だった。なぜ、そこまで頑なになるのか理由はいくつもある。エリンシアはただひとりの主。命に替えても守るべき主君。昔のように、姉と妹、ですむような関係ではない。
まして彼女は名実ともにクリミアの女王になった。その心労から、エリンシアはルキノを求めることも多くなったのだが、それを姉のそして家臣の務め、そういう風に割り切ってきていたのだ。
けれども、ルキノ自身がいつしかエリンシアに抱かれたい、エリンシアを抱きたいと思い始めていた。その、己の浅ましい感情に気づくと、同じように彼女の慰めになるにしても、どこかで後ろめたく、心苦しかった。
「なあに?」
そんなルキノの内心の葛藤を知ってか知らずか、エリンシアは昔のように――最近ではめったに見ることのなくなった無邪気な笑みをルキノに向ける。
その笑みを見るたびに、ルキノの胸の奥底が小さく呻く。
「これ以上は……任務に、支障が…」
口にする言葉は、やはりいつものものだった。そんな自分に安堵し、だがどこかで情けないと思う。エリンシアの想いに応える勇気のない自分という人間は、本当に情けない。中途半端な今の立ち位置に安心し、エリンシアがルキノを求めるのを良いことに甘えている。
「はっ…あ!」
鋭く走る刺激に、ルキノは反射的に叫んだ。エリンシアの手は乳房のみならず、ぽつんと立ち上がる熟れた乳首に及んでいた。一瞬、彼女の指先が尖る先端部分を掠める。
「ぁあ…!」
「あら、どうして?私はただ大切なルキノとしばらく離れてしまうから、あなたを愛したいだけなのに」
変わらずにこりと笑いながら、くにくにと両手の指先で乳首のみをエリンシアは執拗に攻める。
軽くつつくように、先端部分をかすめ、あるいは乳輪をなぞるように。そして彼女の花の唇が、ルキノの耳元をそっと舐める。
繊細なその攻めに、ルキノの既に股間は愛液で溢れ、陰部は痛いほどに火照っていた。身体がかくかくと震えてしまい、脚に力が入らない。だが、ルキノはそれでも何とかその場に立ち続けていた。
「はぅ…で、ですが……ぁ」
「それは、いけないこと?」
「ぁあああああ!」
エリンシアの爪先が、張り詰めた乳首に食い込んだ瞬間、ルキノはぐっと背を反らせ叫んでしまった。
とっさに顔を背けるも、その耳元は真っ赤に染まっている。声を上げてしまったことを悔いているのか、唇は頑なに結ばれていた。
そんなルキノの様子を満足げに眺め、エリンシアは一度その乳房から手を離すと、ルキノの身体の前に回りこみ、身体を折り曲げ、つんと突き出した乳首に口付けを落とす。
「あ、ぁ…エリンシア、さま……ッ」
そのまま、濡れる温かい感触でくるりと舐めとられ、乳首を吸われる。その絶妙な力加減、そしてもう片方の乳房をそれはやわらかく揉む仕草に、ついにルキノは陥落した。
「……そう、きれいだわルキノ…。あなた、とてもきれい。とても、うらやましい」
エリンシアが眠るであろう寝台に、ルキノは股間を広げるような形で座らせられていた。下着のみを取り払われ、火照った陰部がエリンシアの眼前に露にされている。羞恥に広げた脚がかくかくと震えるのだが、脚の間にエリンシアが入り込んでいるので閉じるわけにもいかないのだ。
「エ、エリンシア様、そのように、あまり…」
「綺麗よ、ルキノ。ほら、あなたのココはとてもきれいな色をしている…」
エリンシアはじっとルキノの花弁を眺める。エリンシアの視線に晒されているだけで愛液があふれ、自然にくちゅりといやらしい音を立て、蠢く。ルキノはうつむき、きつく目を閉じた。羞恥にどうにかなってしまいそうなのだ。そのくせ、身体は感じている。胸を思い切りもみしだき、自ら秘所に指を入れてしまいたい。けれど、エリンシアの目の前でそんなはしたない真似は出来ない。
ぐるぐるとそんなことを考えながら、結局こうなってしまった以上は繁みからうっすらと覗く性器を主君に晒し、うつむくことしか出来なかった。
「ここには……決して男を受け入れてはだめ。ここは、私のものなの。そうよね、ルキノ?」
「は、はぁっ……!あぁああ!」
くちゅ、と音を立ててエリンシアは突然ルキノの花弁を吸う。唇の先で触れるだけの、たったそれだけのことにルキノは一気に愛液を溢れ出させ、脚を痙攣させた。待ち望んでいた刺激に、ルキノの閉じた目尻からぽろりと涙が零れる。
「ほら…あなたは、私じゃないと満足出来ないもの」
溢れてくる熱い液と濃厚な女のニオイに、満足するようにエリンシアは、どこか獰猛にも見える笑みを浮かべ舌なめずりをする。真っ赤に熟れたような舌がチラリと覗く。
何度も何度もエリンシアが愛したこのカラダは、快楽に貪欲なのだ。普段は取り繕い、ああして直前まで頑なな態度を崩さない、けれども一度火がついてしまえば、味を覚えてしまった淫乱な体は嫌でも反応する。
そのことをよく知るエリンシアは、もう一度舌なめずりをすると、舌を突き出しルキノの塗れそぼる秘所をぺろりと舐めた。
舌先で濃密な雌の臭いがするひだを広げるように舐め、とめどなくあふれ出る愛液を丁寧に全て掬い取ってゆく。
「はぁああああ…!エリンシア様!」
エリンシアの顔が動くたび、ふわふわとした髪の毛が太腿にふれ、むずがゆいようなゆるい快楽がルキノを襲った。同時に、強い刺激が与えられる。
「ぁあ!ソコっ……!あ!」
ルキノのすらりとした太腿が跳ね、声は普段のハスキーなそれとはまるで別物の甲高いものに変化している。
溢れる愛液を音を立てて吸いながら、唇で花弁を挟む。するとルキノの指が自ら慰めるように、小さな肉芽に伸びてくる。エリンシアはそれにかまわず、舌先を膣内へと入れた。
「ふぁっ、あっ、…イイッ、…あ、エリ、…シア、さまっ…!」
指先で花芯を弄りながらルキノは腰をかくかくと振り出した。
エリンシアは、ルキノの太腿を抑えている手にやや力をこめながら、膣内を舌先でかき回すことに集中していた。熱い肉襞がうねるように動き、時折きゅっと入り口が締まる。舌先で舐めとる先から愛液は溢れ、エリンシアの唇どころか顎までがルキノの溢れた蜜で濡れていた。
「あぅ、あ、……はっ、あっ、…んっ!」
びくん、と時折身体をそらしながら、ルキノは自らの突起をいじりながら、豊満な胸まで揉みしだき出す。エリンシアはそのまま、蠢く肉壁に舌を這わせ、吸う行為を繰り返した。
エリンシアの顔が動くたび、じゅぶ、とそこから卑猥な音が響く。するとルキノは甲高い嬌声を上げ、腰を跳ねさせる。
「ソコっ、…あぁあ、んんっ、エリンシアさまぁあ……もっと、もっとォ!」
普段の怜悧な表情などは既にそこにはない。箍が外れてしまったのだろうか、頬を紅潮させ、涙を流し、唇からは涎を垂らしながら懇願するその姿は、エリンシアの中に言いえぬ興奮を呼び起こしていた。
誰にも絶対に見せない、私だけが見れる顔。私のルキノ。
じゅうう、とより大きく品のない音を立ててルキノの秘所を吸うと、エリンシアは自らも衣服を脱ぎ始めた。
快楽の波のさなか、唐突に放り出されたルキノは切なげにエリンシアを見上げる。エリンシアはにこりと妖艶な笑みを浮かべながら、自らも衣服をするすると解いてゆく。
そうして、ルキノと比べてしまえば控えめな、形のよい乳房がぷるんと外部に躍り出た。
「ぁ……」
そっと手を伸ばしそれに触れようとするルキノを制し、エリンシアは自らの乳房をルキノのそれに押し付ける。
「ふぁ…ああ……」
「ルキノ、あなた熱い……んっ」
エリンシアが自ら乳房をもちあげ、ルキノの乳首と自分のそれをこすり合わせると、ルキノは躊躇いもなく己の指を秘所に這わせた。
「ぁあ…あ!」
「ん……ぁ……ルキノ……」
エリンシアもまた、乳首同士をこすりあわせながら自らの秘所を弄る。エリンシアの愛液と、指にまとわりついたルキノの愛液が混ざり、エリンシアの膣内で溶けてゆく。
たまらず、乳房を放り出しエリンシアはルキノの後頭部に手を回し、唇を重ねた。
「んんんんっ!」
顔だけを突き出すような形で、ルキノもまた貪るようなそれに応える。
互いに舌を絡めあい、乳房を押し付け合いながら、やがて互いが互いの秘所に手を伸ばしていた。
「ん!んんん!」
「ぷぁ……、ルキノ…ルキノ!」
唇を離し、ルキノの中で指を掻くように動かしながら、自らも快楽に取り込まれエリンシアも不規則な嬌声をもらし始めた。
「エリ、……ア、さま……!イイです、きもち…ぁああ!」
愛液を溢れさせシーツを汚しながら、ルキノもまたエリンシアの花弁を掻くように弄り、髪を振り乱す。
濡れた音が重なり、呼気が互いに荒くなり、ふたつの身体が暗がりに不規則に揺れる。
「あん!あ、あ」
「ルキノ、…ルキ、ノ、……わたしたち、いっしょ、に…」
恍惚の笑みを浮かべながら、エリンシアはルキノを見た。
熱に浮かされながら、ルキノもまたエリンシアを見た。
互いに、快楽の狭間の中笑みを浮かべる。
「は、…い」
胸を、押し付けた。形をかえ、よっつの乳房がうねるように動く。時折触れ合う乳首からしびれるような快楽が生まれ、そして互いに加速する指の動きは徐々に無秩序に、乱暴になる。
熱くなってゆくカラダ、そして加速する快楽。二人は互いにひとつになる、そういう感覚を漠然と抱きだす。
「あ、あ、あ、あ、…………ぁあああああああああーーっ!」
いっそう高い嬌声が、二つの可憐な唇からほとばしり、そして夜気に紛れ、消えた。
しばらくの間、裸のまま抱き合っていた二人だったが、先に動いたのはルキノだった。
名残惜しげにそのカラダに触れるエリンシアににこりと微笑み、ルキノは衣服をまとってゆく。
笑顔は、既に乳兄弟であり姉であり、そしてエリンシアのかけがえのない騎士、ルキノのそれだ。
そのことが、ほんの少しだけさびしい。エリンシアは一度目を閉じた。
「ルキノ」
「では、エリンシア様。行ってまいります」
ぴたりと衣服を着込み、折り目正しく礼をして、ルキノが立ち去る。彼女がすっかりと部屋から立ち去るまで、自らの裸身をシーツで覆うことも忘れ、エリンシアはそこをじっと見つめていた。大きな双眸は、月明かりにちらちらと揺らいでいる。
シーツの上に投げ出されていた手が、きゅっとそれを握り、エリンシアの瞳のゆらぎが、一瞬大きくなった。
「……ルキノ、どうか、…無事で」
祈るように、エリンシアは目を閉じた。