旅が終わって、私は自由を手に入れた。
自由と言ったって、私自身それをよく理解しているわけじゃない。だから、ふらりとソリスティアの外を旅したり、ソリスティアの方々を回ったり。そんなことをしていた。
それでも、時折戻ってきたい場所があった――その一つがテメノスの自宅。留守の時も多かったけど、それならそれで勝手にお邪魔するだけ。正直、慣れ親しんだニューデルスタよりもずっと落ち着けた。多分それは住人の所為だ。それから、この村のお節介でお人好しなひとたちのせい。こんなところに私が慣れ親しめるようになった張本人が、一番の要因だけど。
今回は幸い自宅で休んでいるところにお邪魔したから、窓のカギを開ける必要はなかった。
そんな入り方をするな、と毎度怒られるけれども、こればっかりは私の性分だ。
「ねえ、テメノス。あんたのことが好きだ、って言ったらどうする?」
隣でのんびり本を読んでいるテメノスに、藪から棒に聞くと、けれども案の定というか、淡白な表情を崩すことなく彼はこちらをちらりと一瞥した――でも、その目の奥には優しい炎が灯っている。その光が、まっすぐに私を見ているのが、こそばゆい。
私の事を邪険にしないことも知っているから、私は黒蛇に居た頃のように全てを警戒する棘の殻を破って彼とは接することができた。
そうなるまでには、人と慣れ親しむことを好まない私だから、当然結構な時間を要したけれども。
テメノス・ミストラル。決して他人にはその心の内を見せない――ように見えるけれども、私から見れば妙に擦れていないというか、年の割には素直に思える。口先だけは、確かに達者なんだけど。
きっとそれは、彼が愛されて育ってきているからだ。大聖堂の教皇イェルクも、彼の義兄弟も、彼の事をまるで箱入り娘みたいに大切に大切に育ててた。それは見ていて一目瞭然だった。
彼は一度心を開くと案外分かり易い。
だからだろうか、こんなことを冗談交じりに伝えることに、不思議とあまり抵抗がなかった。
私は、基本的に他人を信じない。信じる理由がないから。
それなのに、彼は神官らしくない態度と言葉で、すんなりと私の懐に入ってきた――きっと本人は、無意識だ。
だから厄介で、好ましい。
好ましいと思えば、私は蛇だ。容赦なく獲物として狙うし、吞み込むまで離さない。絶対に、離せない。
「へえ、それは嬉しいですね。君にそんなことを言われるだなんて、明日は雪でしょうか」
本をぱたりと閉じて、彼は立ち上がる。そして私の傍に椅子を持ってきて座ると、ことりと首を傾げてみせた。
「冗談だと思ってる?結構本気なんだけど」
「まさか。私なりにちゃんと受け止めてますよ、君の事は。だから信頼しているんじゃないですか」
「そういうことじゃない。男女の感情、そう言ったらわかる?」
「ふむ……そうですねえ。でしたら褥でも共にします?」
いきなりぶっこんでくる。まったく、容赦がない。
けれども、そう言われてドキリとしたのは気のせいじゃないし、胸が高鳴っているのも事実だった。ウソをつきたくてもつけない、こいつの前では、特に。
私はケモノなのに。こんなところだけが、妙に人間らしい。それもこれも、彼の所為。
「そうだね。私をこんな風にした責任、とってもらおうか」
挑戦的に笑うと、彼もまたたおやかな笑みを浮かべて「そうですね」と言った。
私は獲物を捕まえた。
「あのう、私、今自分の部屋で押し倒されているようなのですけれど」
自分の置かれている状況が不思議だ、といわんばかりに堂々とそんなことを言う。本当に状況がわかっていないのか。冷静なようで、ちんぷんかんぷんなことを言っている。彼、確かにそういうところもあるけれど。そんな余裕、今からなくしてやるよ、名探偵。
「そうだよ。だって、今から私が取って食うんだから」
ベッドに男を押し倒す、というのもなかなか倒錯的でよいものだ。しかもそれが異端審問官の服を身にまとっている三十路の男となれば、尚更。
「はあ。私、これから君に食べられちゃうの?」
「だからそうだって言ってるの。何かおかしい?」
「そうですねえ。一般的には、逆ではないかと」
のらりくらりと言い逃れみたいに次々と言葉を紡ぐ口を、無理矢理奪って黙らせる。
「んむっ」
急速な口づけを、初心な生娘みたいに必死に逃れようとする。
フフ、可愛い。そんなことを私が思っているなんて言ったら、どんな顔するんだろう。想像するだけで愉快だった。
彼の唇はびっくりするくらい甘かった。まるで蕩ける飴玉みたい。だから私は飴玉を舐める子供みたいにその唇を舐めて、吸って、食んだ。とことんしゃぶりつくす勢いだった。するとだんだんと彼の腰が揺れてくる。感じやすいの?なにそれ、ホントに可愛くて、たまらない。
私の腹の奥が疼く。そして下半身がずしり、と重い熱を持った――私の下半身には、アレが――男性器がついている。しかも、ハッキリいって大きい。きっと彼を壊してしまうくらいには。
これがついていると知っても、ファーザーは何も言わないで私を「娘」と呼んでくれた。マザーは気味悪がったけれど。そういう意味でも、彼は本当に私の父親だったのかもしれない。そんな、ちょっとした感傷に浸るのもほんのわずかの呼吸の間。
私は目の前で息をあげかけている獲物の事を考えた。
翆の瞳が潤んで、銀色の細く長い睫毛が震えている。いやいやをするように深いキスから逃れようとする度に乱れて跳ねる髪がさらさらと流れてきれいだ。悔しいけれど、こいつはどこもかしこも綺麗なのだ。私とは違う。
この世に光を齎したといわれる聖火神エルフリックの御子、そういわれたって可笑しくない実力と信心を持っている、心底綺麗な、私とは正反対の存在。そんな人間を犯しているというだけでも、わくわくして、興奮する。
ああ、私の大きな欲望が熱を帯びて、首をもたげてきた――まるで、獲物を狙う大蛇みたいに。
犯すような口づけを終えて唇を離すと、私と彼の間に透明な唾液の糸ができた。
私はそれを容赦なくぷつりと途切れさせる。
「ぷは……ソローネくん、本気なの……?」
「だからさっきから言ってるでしょう。取って食う、ってね」
「そう、ですか……」
不思議と反抗とか拒絶の言葉が出てこない。
どころか頬を生娘のように染めている。本当に、こいつ三十歳?
教皇サマは、ちょっとこいつを大切にしすぎたんじゃないの?これじゃあ初恋も知らない少女だ。私の獲物にしては、あまりにも初心すぎる――けれど、だからこそ、穢し甲斐があると、どこか心が浮足立っていた。
「それじゃ、頂くよ」
そういうと、かさばっている法衣をまずは剥ぐ。意外と単純なつくりのそれは特に抵抗らしい抵抗もなく脱がせることができた。
「ソローネくん、君は物好きですねえ。こんなおじさんを抱きたい、だなんて」
「あんたの実年齢は知ってるけどね、見た目はガキだよ。全然抱ける。むしろあんたみたいなの組み敷けるだなんて、大歓迎」
そう言って薄い腹の上に乗り上げる。わざと太ももを当てて、ついでにたっぷりの胸も当ててやる。すると彼の肌がわかりやすいくらいに朱に染まった。まったく、本当に初心だ。
「ふふ、可愛い……こんなことで赤くなるなんて、初心なんだね」
「わ、悪かったですね……」
「悪くないよ、可愛いっていってんの。これから食べるのにほんと、うってつけ」
そういって、今度は下に履いているズボンを脱がせる。けれどもこれでまだ終わりじゃない。神官だからというか、彼は法衣の下にチャーチスモックを着込んでいるのだ。それはごく薄い絹のような生地で出来ていて、身体の線や平たい胸と、そこにあるやけに目立つ乳首もうっすらと見えていた。
経験がないはずなのに、半ば外気に晒された乳首はぴんと立ち上がって、それはもう食べて欲しそうに震えていた。それを見逃す手はない。
「わ、美味しそ。遠慮なく食べちゃうね」
「ソ、ソローネくん……?!ぁ……ぁんっ!!やめ、て」
薄い布ごと乳首を唇に含んだ瞬間、甘い声が上がる。あ、これは乳首が弱いヤツだ。
それなら、と私はねっとりと舌で乳首まわりを舐めまわしてからカリ、と軽く歯を立ててやる。
「んぁっ、やっ、ぁあ……っ!!」
びくびく、と組み敷いた身体が跳ねた。もしかして、コレだけでイッた?
だとしたら、バカみたいに可愛すぎるんだけど。
「え、もしかして、今のだけででイったの?」
「や、めて、と……いったのに……」
彼の目はすっかりと涙で濡れていて、浅い呼吸を繰り返している。
頬は火照り、目の奥は快楽の光を灯しだしていて、ああ、こいつ快楽に弱いんだ、と瞬時に悟った。弱点を知ることが出来るのは、悪いことじゃない。
「未経験じゃなかった?ホントに乳首だけでいきなりイくとか、あんた、才能あるよ」
「……知りたく、ありませんでした……」
不服そうな表情も可愛く見えるのは、私もいい加減茹っていている証拠。
実際、早くこの雌の中にブチ込みたいと私の中の蛇が囁く。私の大蛇も首をもたげだして、下着なんかはもう窮屈で邪魔なだけだった。
「……フフ、可愛いよ、テメノス。あんたがこんなに可愛い反応するなら、とっとと食っちゃうんだった」
「一体何を言っているんですか、君は……」
「あら、随分と余裕そう。それなら、コレはどう?」
今度は乳首の片方と、欲をもたげかけている彼の性器を刺激し出した。下着なんてものはさっきズボンを下ろすときにとっぱらっていた。
「ひゃぁっ、ぅぁっ、や……両方、は、やめ……て!!」
乳首は腫れぼったくなっていて、もう既に真っ赤だ。
そして見れば性器の方も、透明な汁をたらたらとだらしなく流している。ならばと亀頭に指先を宛がい、ぐいぐいと押してやるとどんどんと汁が溢れ、私の下でもがく身体がまた跳ねて、甘い声が漏れた。
「はぁ、あ……ぁ、ああぁあんっ‼そこ、だめ……」
「名探偵、あんた、感じやすすぎ。全身性器なんじゃないの?こんなにチョロいと、逆に心配になるよ」
私の言葉に応じる余裕もないのか、視線だけを寄越して何かを言いたげにしているけれど、そんな可愛らしい抵抗じゃやめられない。
可愛いピンクの性器を握りこんで指先で刺激しつつ、乳首も爪の先でぐいぐいと押してやれば、面白いくらい反応するんだから、やめられるわけがなかった。かわいい、かわいい、堪らない、心の中で蛇が疼いて、ぞくぞくとした快楽が背中を昇っていく。私の大蛇も、もう我慢が出来ないと言わんばかりに膨れ上がっていた。
「ソ、ソローネくん、その……君の、それ……」
流石にこうも密着していれば気付くか。
私は悪びれず、スカートをめくって重たいソレを取り出した。
テメノスは、私の逸物を見て絶句している。心なしか顔も青褪めていた。
知識だけはある感じか。つまり、これからナニをされるか分かっている、っていうこと。でも、私についていることに対しては何も言わないんだね。お優しい神官サマだこと。
獲物としては、彼は本当に上物だった。征服し甲斐がある。それに、神に仕えるものを犯すってのもイイ。
ありとあらゆる背徳感でゾクゾクする、堪らなく、昂る。昂りに反応してか、私の大蛇がいよいよ怒張して、彼の薄い腹の上にたっぷりの玉と一緒にずしん、と重量感を感じさせながら乗り上げた。
「ふふ、私の蛇は怖いよ……?覚悟して」
「そ、そんなもの、はいらな……」
「入れるんだよ、名探偵。あんたの、ココに、ね……」
そう言って薄く笑いながら、平たい腹を撫でる。すべすべで本当に処女の腹みたいに白いくて綺麗。きっとこの身体は穢れなんて知らない。それを今から犯すのだから、本当に堪らない。ああ、早く犯したい……!!
「でもま、イキナリはかわいそうだから、解したげるよ」
そういうと私は腹の上からおりて彼の膝裏を持ち上げて、秘所を露わにした。
彼のペニスはすっかり萎えていて、少し可哀そうだったけれど、震えて怯えているその顔が美味しそうで、食べたくて、嗜虐欲をそそって仕方ないと気付いているのだろうか。
しかもずっと年上の男性。それなのにこんなに怯えて、本当に可哀そうに。でも、とんでもなく可愛い。もう、本当に食べちゃいたい。
嗜虐心がそそられて、私は秘所を露わにしたというのに、ソコを解す前に可愛く萎びてる性器をぱくりと口に含んだ。
「や、ぁ……そん、な、トコ……」
嫌そうに身体を捩る彼をよそに、私は口に含んだ少し塩辛い性器を口の中で存分に味わう。ああ、なんて美味しい獲物。
私が刺激すると、少しずつ萎えていたものが硬さを取り戻すのが愉しくて仕方ない。舌先で縊れたところを徹底的に舐りまわしたり、亀頭の先端部分に舌を埋めて押し込んだだけで、哀れなくらいに男にしては細身の肢体が跳ね上がる。まるで白魚みたいだ。ほんとうに、生娘じゃないんだろうかと思う――私が口に含んでいるものがなければ、まさしく生娘みたいな彼を刺激するのが、愉しくて仕方なかった。
「や、やめ……ぁあんっ、そんなっ、ふ、うにされたら……わたし、わたし……あぁあんっ!!」
とぷ、と愛らしい音を立てて、精液がとろとろと私の口の中に流れ落ちてくる。青臭いというかどこか甘いそれを私はこくりと呑み込んでみせてから、にやりと笑うと、まるで信じられないものを見る目で彼が私を見ていた。
「ごちそうさま。美味しかったよ、名探偵」
「きみ……ほんとに、なにを、して……」
「何って、呑んだだけだよ。美味しかった、テメノスの精液」
「なっ……」
挑発するように言うと、絶句してぱくぱくと口を動かしてる。すごい間抜けな顔。
ほんと、食われてるって自覚がないんだろうか。私に対する警戒心が殆どないから、どこかまだ事態が呑み込めてないんだろう。けど、それも、おしまい。
これからいよいよ、本番なんだから。
正直なことを言えば、私はマトモにセックスをしたことがない。何故ならこの身体を曝け出せる相手が、今までの人生の中で一人もいなかったからだ。
勿論私の外見だけを見て襲ってきたやつは沢山いたけど、全部始末してきた。別に、それが悪いことだとも思ってない。ただの、正当防衛。
それが、テメノス相手ならばいいとあっさり思えてしまえたのは、彼の懐の深さをどこかで信じて、甘えているからかもしれない。そう、私は甘えていた。だからこんな態度に出ることが出来る。
「さて、と。これか本番なんだから、覚悟決めてよ」
「本気、ですか……?本当に、そんなものが、入るの?」
彼の怯えているトコロなんて貴重だから、例の騎士クンにも見せてみたい――勿論閨での様子を誰かに見せる趣味はないから、そんなことはありえないんだけど。
「挿れるの。さ、準備するよ」
そう言って、彼の秘所を指先で割り開いてゆく。
彼の慣れていない蕾は硬くて、なかなか口を開いてくれない。
それでも外側の襞を開くように丁寧にひとつひとつ解してゆくと、その蕾は口を開いてきてくれた。私はソコに彼の精液や先走りの汁をゆっくりと塗りこんでゆく。早くブチ犯したいという衝動はあるけれど、だからって悪戯に傷つけたいワケじゃない。快楽を感じるなら、感じて欲しい。こんなモノをぶち込もうとしている私が思うことじゃないかもしれないけれど。
「君のそれ……なんだか、……その、ヘンな感じが、するのですが」
「痛みは、ない?」
「はい、痛くは、ないです……」
緊張しているのか、言葉も恐る恐る紡ぐ様は、本当に処女みたいで可愛い。入り口はもう大丈夫みたいだということが分かって、少しだけ安堵した。これなら、感じるところを見つければ、イケるかもしれない。
私は入り口を解しながら指を胎内へと侵入させた。
「……んっ、……ふ……」
テメノスがくぐもった声を出す。やっぱり異物感はあるのだろう。
それでも私の意志を尊重しようというのか、さっきの態度といい、無理をしてでも私の望みをかなえさせようとしているみたいだ。どうしてだろう、そんなことをする理由がどこにある?
まあ、難しいことを考えるのは、彼の仕事。
少しずつ滑りと熱を帯びてきた彼のナカに指をどんどんと侵入させてゆき、拓いてゆく。一か所、感触の違う場所を見つけて、そこを重点的に刺激してみた。
「!な、な、に……そこっ……や、わたし……どう、して……っ」
「……ふふ、見つけた。テメノスのいいトコロ。ここがイイんだね」
私は意地悪な声で耳元で囁くと、ぐいぐいとソコを刺激してゆく。指先で、押すようにしてみたり、擦るように動かしてみたり。
「やぁ……っ、そ、……んな……っ、やっ、め……」
彼の綺麗な色の性器がゆるく持ち上がってきた。
感じてる。男はウソをつけない。まったく、損なことだ。そんな私も半分男みたいなもんだから、同じなんだけど。
だいぶナカが解れてきたから、そろそろ流石にいいだろう。というか私も我慢の限界だった。私の大蛇はもう鎌首をもたげ、獲物を欲しがってだらだらと我慢汁を垂らしている。まったく、我ながらあさましいけれど、こんなにも美味しそうな獲物は初めてだから、仕方ない。
「テメノス、そろそろ……挿れるよ」
「……ソローネくん、……本当に、やるんですね……」
「だから、その準備をしたんでしょ」
「……わかりました……来てください、ソローネくん」
流石に頭が痛くなった。これを、彼は、意識しないでやっているのだ。これは周囲に同情しそうになる。よくもまあこんな生娘、教皇や彼の義兄弟は今の今まで守り通せたなと感心すらしてしまう。
「あのねえ、そいういの、マジでよくないってば。それは、本当に愛する人に言ってやって」
「ですが、ソローネくん、私は、君とこういうことをすることを承諾した時点で」
「いいから!!」
それ以上は聞いてはいけなかった。
彼に、言わせてはいけなかった。
言葉を、唇で無理矢理塞ぐ。早急なキスは乱暴で、痛かった。そして私はひくひく蠢いている秘所に私の亀頭をぴたりとあてがうと、ゆっくりと押し進めていく。
「ひっ、あぁぁあああああああああああ―――――――――――――!!」
ぶちぶちぶち、と肉を喰い破る音がした。結合部分からは、血が滲み出てきている。
流石に初物、それも男に挿するには、私の蛇は大きすぎた。けれど、そんな理由で止まるような私じゃない。
欲望と意地が混ざり合った複雑な感情の赴くままに、腰を押し進めてゆく。彼の雄膣は狭く、熱く、異物を追い出そうと必死に締め付けてきた。けれども、だからこそ余計に燃える。
「や、めっ、いたい、いたっ、ソローネくん、痛い……です……っ、やめて……!!」
じたばたともがくテメノスをぐいと上半身の重さを乗せた両腕で抑え、肉を犯してゆく。
ああ、堪らない。熱くて、美味しくて、繋がっている感触が嬉しくて、私は自ずと身体を震わせていた。
堪らない、堪らない、堪らない。
テメノスを犯しているという事実が。処女の身体を拓いているという事実が。その初心で無垢な身体を犯しているという事実が、すべてが私を昂らせていた。
私は早急に動き出す。堪らなくて、身体が止まらない。もう、我慢が出来ない。テメノスの女みたいに細い腰を両手で掴んで、熱釘を打ち付ける様にぱん、ぱん、と音を立てて杭をナカに打ち付けてゆく。
「やぁっ、あぁっ、やめてっ、やめっ、いたい、いたっ、いたい……っ!!おおきっ、くるし、やぁ、だめ……!!」
テメノスは苦しさと辛さから涙を流していた。そんな姿、見たことない。きっと、彼を知るこの世にいる人間はこんな姿、見たことないだろう。顔を真っ赤にして、哀れにも涙で頬を濡らして、綺麗な宝石みたいな瞳を濡らしてあられもない姿で泣いている姿なんて、誰も、誰にも、見せたくない――いつの間にか独占欲じみたものが、私の中に芽生えていた。テメノスが可愛くて仕方がないからかもしれない。こんな無様で無防備な姿を、私に見せている。それが、愛おしくて仕方なくなっていた。
「まったくっ、あんたがそうやって可愛く鳴くから、どんどん大きくなっちゃう、んだよっ……!!」
「そ、んな……ど、して……ぁああぅっ!!」
「……可愛い、可愛いテメノス……私の獲物……。ごめん、もう、離したくない。あんたを、自由にさせたくなくなった」
「ソ、ローネ、く……あぁあああ!!」
ばちゅん、と大きな音を立てて、彼の最奥を穿つ。悲鳴のような声がその小さな口から迸って、身体が跳ねた。
薄い腹はぽっかりと私の大蛇の形に盛り上がり、結合部分は彼の精液や私のモノ、それから血とでピンク色に泡立っていた。
可愛そうに、彼の蕾はばかみたいにぱくぱくいっている。限界までこじ開けられたからだ。それでも健気に私の物を飲み込んだのだから、可愛らしい。
「は、……挿ったよ、テメノス……。あんたのナカに、全部……ね」
甘く囁いて、ぽっこりと盛り上がっているお腹をさすってやる。そこは熱っぽくて、とてつもなくいやらしい。彼の平たい胸元の乳首は哀れなくらいに立ち上がり、ふるふると震えている。彼の美しい顔は最早普段の飄々とした表情が伺えない程にぐちゃぐちゃになっていて、滅茶苦茶やらしい。
「う、そ……ほんと、……に?」
何故かテメノスは苦しそうなのにほっとしたような表情をする。
どうして、そんな顔をするんだろう。全く、調子が狂う。
翆の瞳もどこか優し気で、細められていた。微笑んでる?私のモノでお腹いっぱいにして、苦しい筈なのに。愛し合う者同士のセックスじゃないのに。私が言い出した、勝手極まりないケモノの欲望に付き合わされているだけなのに。
「ホント。見てみる?アンタの大事なトコロ。私のモノぱっくり咥え込んで、離さないよ」
それは流石に躊躇われたのか、ふるふると首を横に振る。けれども、確かめる様に私のモノが収まって膨れた腹を撫でている私の手に自分の手を重ねてきた。その手は汗ばんでいて、けれど、とても、あたたかい。
「……テメノス、どうしたの?あんた、なんかおかしいよ」
「おかしくなんて、ない……ですよ……そう、君のが……ここに、おさまったの……」
「初めてなのに、ね。あんた、才能あるよ」
「ッフフ、それは、褒め言葉、と、……思っておきます……」
「へえ、余裕、あんじゃん。そしたら私、好きに動くよ」
「どう、ぞ……君の、好きにして……」
ああもう、どうしてそういう事を言うんだ。まったく、これじゃ、調子が狂わされる。ほんとに、何を考えているんだろう。でも許可が出たから、私はまだつかんでいた腰に力を込めて、ぐ、と性器を奥へと押しやった。
「それじゃ、遠慮なく……っ」
そしてギリギリまで、本当に入口付近まで性器を抜いてから、一気に貫いた。
「……っ、か、……はっ」
彼の口から洩れる音が、限界を示していた。
けれども、いいといったのだから、容赦はしない。私は休むことなく彼のナカに肉杭を打ち付け続けた。その都度、その唇から嬌声に似た悲鳴が上がるようになってきて、私も興が乗ってきた。堪らない、ほんとうに、とんでもない名器。
「っふっ、テメノスっ、あんた……ほんっと、堪んないっ……!サイコー……!!こんな気持ち、初めてだよ……!!」
そう、盗みが成功してファーザーに褒められた時よりも。初めて人を殺した時よりも、ずっとずっと、気持ちが昂って、腰が止まらない。止まれなかった。
彼を犯しているという事、そして征服欲。蹂躙している身体から伝わる熱。かくかくと私の動きに合わせて動くしろくて綺麗な身体。もう、テメノスの全てが私の欲を煽り、昂らせ、動きを加速させる。
「あんたの奥に、……っ、種付け、させて、もらう……からっ……私の子、孕んで……テメノス……っ!!」
「っ、ひっ、……あ………あぁあっ、……あぁあ―――――――――――っ!!」
ぐ、ぐ、ぐ、とその雄膣内に種付けをするように、私は自分の欲望を押し付けて、その胎内にたっぷりの精液をドクドクと吐き出した。