「子羊くん。今日は趣向を変えてみませんか?」
「はい?」
夜分過ぎ。そろそろ寝ようというときに、藪から棒にテメノスが告げてくる。同時にクリックが眠ろうとしている寝台に乗ってきて、馬乗りになってきたのだ。クリックはわけもわからず、恋人の突然の奇行を眺めていた。この人は、また、突然何を言い出すんだ。突拍子もない事や破天荒な行為に離れてはいるが、閨ではどちらかといえば素直で愛らしかったはずなのだが。
確かに、テメノスとはすでに何度か身体を重ねている。毎度受け身のテメノスのことも考え、性欲が旺盛ではないとはいいきれないクリックも我慢する日が多かったのは事実だ。実際、こうして掛布団越しではあるが愛しい人の体温を感じて下半身は反応しかけている程度には。
のしかかられ、直に触れるか触れないかの距離。テメノスは頭からすっぽり被る部屋着しか羽織ってはいない。この角度だと白い素肌も、鎖骨も、ほんのりと色づいている乳首や胸元まで見えてしまう。何より清廉でそれでいてほんのりと甘さを感じさせる匂いに、クリックはごくり、と喉を鳴らした。下半身の熱もずくりと重さを伴い、主張しだす。
熟れたように熱っぽい、欲の炎がともった眼差しと長い睫毛、それにギリギリ見えるか見えないかの太ももの付け根、チラチラと視界に入ってくる鎖骨や乳首――悲しいかな、クリックはそれらの誘惑には逆らえなかった。
ところがである。
クリックは両腕を頭上に上げるように組まされた手首は布で固定され、中途半端にインナーを脱がされていた。ちょうど、クリックの豊かな胸筋が見えるように、だ。下半身も同様で、下履きを太ももまではあらわにされているという何とも情けない格好である。しかも、クリックの一物はテメノスの体温と匂い、そして視覚からくる刺激により赤黒く勃起していた。それを見て、テメノスはぺろりと舌なめずりをする。
「フフッ……期待しちゃって……可愛い。立派な雄羊くんですね、ここは……」
いうが早いか、小さな口で大きく勃起しているクリックのものをパクリと含んでしまった。
「うっ……あぁ……テメノス、さん……っ」
ちろちろと鈴口を舌で舐められ、根本は白い手がしっかりと握っており、もう片手は竿をカリカリと引っかいたり扱いたりしている。その速度も不規則で、クリックはイきたくてもイけない、生殺し状態となっていた。
「ぁ、あ……てめ、のす、さ……僕……」
大きな蒼穹色の瞳に涙を溜めて、クリックはふるふると身体を震わせる。イきたい。けれども決定的な刺激は与えてくれない。目の前のテメノスの胎の中に早くこの欲をぶち込みたい、ぶち込んで、犯して、ぐちゃぐちゃにして、吐き出したい。
「おやぁ?子羊くん、我慢が出来なくなっちゃいました?まだ、大丈夫ですよね?」
くぱ、と口を亀頭から離して、ペロリと先端を舐めてからテメノスは微笑む。その間もクリックのモノはテメノスに握られており、あわい刺激も相変わらず与え続けられていた。
応えることもままならないほど追い詰められているクリックは、ぶんぶんと首を横に振って何とか懇願するのだが、テメノスはふう、と大仰にため息をつくと、クリックのモノを握ったまま、今度はもう片方の手を胸筋に這わしだした。その触り方は何らかの意図を持っていることは明白で、いつもテメノスの薄桃色の乳首をクリックが虐めるようにテメノスは意趣返しとばかりに乳首以外の箇所をやわやわと揉みしだいている。
「あぁ、そ、それ、だめです……」
「おや、どうして?君はいつも私に同じことするじゃないですか」
そういって刺激により淡く立ち上がってきているクリックの乳首をわざと水音を立ててちゅぱちゅぱとテメノスは吸う。その感触がこそばゆく、それでいて下肢は相変わらず抑えられており暴発しそうな熱がじくじくと際限なく溜まってゆく。太ももで感じるテメノスの体温と体重、間近にかおる匂い、そして与えられるあわい刺激がもどかしく、直で触ってほしいという欲につながる。
「てめのすさん、もっ、した、……触って、ください……っ」
恥も外聞も捨ててクリックが懇願すると、それまでクリックの乳輪をチロチロと舐めていたテメノスは顔を上げ、翠の丸い目をさらに丸く大きくしてからにっこりと笑う。
「フフ、よくできました、子羊くん」
こてり、と小首をかしげてから、テメノスは徐にクリックの一物の根元から手を放す。遮るものがなくなった欲は一気に解放されて、目の前のテメノスの衣服も身体も白濁で汚した。また、その様が淫靡でたまらなく、クリックの下肢はややもたげられたままに、硬度を保っていた。
「おやおや、いけない子羊くんだ。まだ、足りないようですね。でも、今日は趣向を変えるといったでしょう」
「は、……テメノス、さん、それは、どういう……」
「さぁてね。君にはこのまま、気持ちよくなってもらいましょうか」
そういうと、テメノスは今度はクリックの半端に勃起したモノを両手で扱きながら、再び亀頭をぱくりと咥えた。チロチロと縊れ部分を刺激され、竿はゆるゆると細い骨ばった指が往復して、時折陰嚢を揉みしだかれる。
竿の裏筋を指先でなぞられたかと思えば、鈴口に小さな舌が突っ込まれて、刺激される。
陰嚢を揉むときは決まって淡い力加減で、決して決定的な刺激を与えてはくれない。
まるで地獄のような快楽の波の中、クリックはそれを拒むこともできず、かといって止めることもできずに、時折身体をけいれんさせながらそもそもどうしてこうなってしまったのだろうと考えながら、耐えるしかなかった。