久しぶりに褥を共にする、ということで、双方どこか浮足立っていたのかもしれない。
「クリックくん、何かしてほしいことってありますか?」
「へ?」
テメノスに押し倒されるように寝台に沈んだクリックは、テメノスに胸元を押されながら不意にかけられた言葉に一瞬理解が及ばず、思考が止まってしまう。
反応がないクリックのちょうど太ももの上に、薄手のチャーチスモックだけを羽織ったテメノスが乗っかり、クリックの胸筋を意図をもって撫でまわしている。その細く長くしろい指先が自分の素肌の上を通るたびに、クリックは否が応でも反応してしまうのだが、それを知ってか知らずかテメノスはうっすらと笑みを浮かべていた。チャーチスモックから覗く薄く筋肉のついた白い太ももが目に毒で、クリックはけれどもそこから視線が外せない。いけない、と思いつつ不埒な想像をしてしまう。
「だから、いま、私にしてほしいこと。何かない?」
ぺろり、と朱い舌が薄い桜色の唇の間から垣間見えて、クリックは思わずごくりと唾を飲み込んでしまう。下肢に、熱が籠る。
クリックは回らない頭で必死に考える。今、テメノスにして欲しい事。今、テメノスに乗っかられているこの状況で。茹った頭で考えられることなんて、一つしかない。先ほどから釘付けになっているのは、小さくてけれどもいやらしく濡れている唇と、そこから垣間見えている朱い舌。
「そ、その……舐めて、ほしい、です……僕の、その……」
クリックが言葉に詰まっていると、一瞬だけ驚いたようにその大きな翡翠の瞳が見開かれてから、得心したようにああ、と小さくやわらかな声がした。
「ふふ、そんなことでいいの?わかりました」
その笑みですら艶っぽくて、クリックの欲望はいっそう脈打ち熱を持つ。
テメノスはクリックの願いをかなえるために下半身をずらし、クリックの股間のモノを下着から取り出した。ぶるん、と大きなそれを目の当たりにし、テメノスは小さなため息をつく。それが感嘆のため息なのか、呆れたものなのかはわからなかったが、テメノスは臆することなくしろい手を赤黒く脈打つクリックの一物に添えると、朱い舌でぺろぺろと舐めだした。
「て、テメノスさん……!」
その様はひどくいやらしくて欲を煽るのだが、なんというか、はっきりいうと、こういったことに疎いテメノスらしいというか、妙に煽られるだけ煽られて、刺激としてはあまりにも弱く、生殺しもいいところだった。
けれどもテメノスはそのたどたどしい奉仕を止める気はなく、懸命にクリックの肉棒をちろちろと舐めている。時折添えられている指先が動き、それだけは若干刺激的なのだが、何よりもこの光景そのものがテメノスにこんなことをさせているという実感が湧いて、ひどい背徳感と同時に優越感がクリックの中に存在していた。
「ぅあ、テメノス、さん……その、もう少し……」
「ん?もっと、何?」
顔を上げて幼気な顔で問うてくるテメノスの口周りが、てらてらと濡れて光っている。小さな唇には、クリックの肉棒から溢れた欲液がこびりついているのだ。普段は一糸乱れぬ銀糸も若干乱れており、滑らかな額に張り付いている。頬は上気して少し紅に染まり、双眸は潤み、その奥には情欲の光がきらめいていた。薄手のチャーチスモックの下の素肌もほんのり色づき、ぽつんと布を押し上げている両の乳首が視認できる。ぷっくらと触れあがったそれはひどく欲をそそり、しゃぶりつきたいとクリックは思った。が、押し倒されているこの態勢ではかなわない。
一方のテメノスはといえば、とにかく一心にクリックの半ば立ち上がりかけている一物を舐めている。本当に集中しているのか、小さな下で懸命に舐める様は健気で愛おしいのだが、その刺激があまりにも甘すぎて腰には微妙にくるものの、欲を掻き立てるには物足りなさすぎるのだ。はっきり言って、自分で触ってしまいたい。けれども本当にクリックのためにたどたどしく奉仕するテメノスの姿は愛おしく、チラチラと見える素肌もいやらしいし、それだけで欲は熱を持ち、少しずつではあるが勃ちあがってきた。しかし、それがよくなかった。テメノスは、自分の奉仕でクリックのものが勃ち上がったのだと思ってしまい、より懸命に、くびれ部分や亀頭、我慢汁が流れて出している鈴口もぺろぺろとたどたどしく舐め始めたのだ。あまりにも幼気な奉仕は、決して刺激にはならない。ただ、その光景は極上のおかずだった。結局、クリックの肉棒は質量を増すのだが、決定的な刺激は与えられない。その結果もどかしい快楽の波に揺蕩う羽目になり、クリックは荒い吐息を漏らしながらもイくにイけずに、かといって愛しいテメノスに無体を働く訳にもいかず、腰がおのずと動くのを抑える術を知らぬままに地獄のような時間を過ごす羽目になるのだった。
結局、その時はクリックはテメノスの奉仕そのものでは最後までイくことはできず、テメノスがひどく落ち込み、今度こそ子羊くんをイかせます!と何故かやる気のスイッチが入ってしまい、かのモンテワイズの大図書館まで赴き作法を学んできて、無事クリックをイかせることに成功したのは、また別の話になる。