元気な赤ん坊の声が、フレイムチャーチに鳴り響いたのは何年ぶりだろう。
クリックとテメノスの子で、子供は女の子だった。二人と村人は頭を悩ませながら、女の子にトリスと名付けた。
「ほらほら、トリス。お腹が空いたんですね。今、あげますからね……」
そう言いながら衣服をはだけさせてトリスに母乳を与えるテメノスの姿は、さながら女神像のようだとクリックは思う。そして同時にその胸は自分のものなのだけど、という独占欲が過ってしまい、自分の子供に何を対抗意識を燃やしているんだ、と頭を振るうのだった。
「クリックくん、もの欲しそうな顔をしないでください。君にはちゃあんと夜に、あげますよ」
「本当ですかテメノスさん!」
「ほら、やっぱり。まったく君も何時まで経っても甘えん坊で、ちゃんとお父さんになれるんですか?そのうちトリスに笑われますよ」
「いいんです。僕はトリスの父親だけど、テメノスさんの夫です。テメノスさんのおっぱいに触っていいのは僕だけだったのになあ……」
そう残念そうに続けながらも、クリックはあれこれとトリスの衣服や靴下、帽子などを繕っている。実はクリックは手先が器用で、こういった繕い物なんかも自分で作ってしまうのだそうだ。だから聖堂騎士であったときも、少々の破損などは自分で直していたのだという。本当に器用なのだ。
「はい、トリス、ご飯はもう大丈夫そうですね。げっぷもしましたし、これでゆっくり眠れますね」
「それにしてもトリスは本当にいい子ですよね。夜泣きもあまりしませんし」
両親が心配になるくらいに、トリスは出来た子だった。時々夜泣きをしても、クリックがおんぶをしてフレイムチャーチから大聖堂までの道を半分くらいゆっくりと歩いていくと眠ってしまう。木々のさらさらとした音や、そこから見える月の光、それに全身に触れる空気が心地よいのかもしれない。
それにしてもトリスは非常に愛らしい赤ん坊だった。目はテメノスに似てくりくりと大きなまあるい翡翠。髪の毛はクリックに似て金髪。産婆もその愛らしさに太鼓判を押してくれた。
「ふふ、本当に。でも、トリス、もう少し甘えてくれてもいいんですよ。あなたのお父さんは甘えすぎだから、赤ん坊のころから我慢しちゃうのかな?」
「テ、テメノスさん!それは酷いですよ!流石に僕だって自分の娘のためならおっぱいくらい我慢できます!」
「本当に?今だって、じっと私のおっぱいを見ているくせに?」
「そ、そ、それは……」
テメノスは授乳するときは本当はいつもならば別の、元来自分の寝室だった部屋でする。だが今日はトリスが急に泣き出して、それも尋常ではなかったのでとっさにクリックならば別によいかとクリックの前で授乳しなければならなくなったのだ。だが、それがやはりよくはなかった。
妊娠、出産してからクリックと抱き合ったことはない。お互いに、トリスのことで精いっぱいだったから。それにクリックは日中は基本的に聖堂騎士仕事があり、大聖堂にいることが多いから、今日は珍しく二人でいた時だった。
授乳中からクリックのものが興奮しているのが、丸わかりだったのだ。
「わかりましたよ。しましょう、セックス。久しぶりでちょっと怖いし、トリスが途中で起きたらお終いですけどね」
「本当ですか?」
「はい。私も、久しぶりに君に触れて欲しくて、本当は我慢してたんです」
「んっ……クリックくん、もうちょっとゆっくり……」
トリスが眠っている部屋の隣、二人の寝室で二人は口づけをしていた。いつもよりも性急に始まったクリックの口づけは強く、早くテメノスを襲い、舌を絡め合う速度も何か焦っているように感じられた。必死にテメノスの舌を、歯茎を口裏を舐めとり、唾液を飲み込んで、我が物にしようとする意志が感じられた。それをなだめる様にぽんぽん、と両腕で抱いた背中を叩くのだが、クリックは勢いを止めることがない。歯列をなぞり、歯茎の裏もしっかりと舐めてから舌を再び絡ませ合う。じゅうっと乳首を思い切り吸われて、テメノスは下腹部がじゅん、と潤うのを感じた。同時に先ほどまでトリスに授乳していたからか、乳首が疼いて仕方がない。早く触って、早く吸ってと口付けをしながら自ら衣服を脱いでいた。今は簡素な村人たちが着るようなワンピースを着ているから、そのままストンと落としてしまえば簡素な下着一枚のみで、殆ど生まれたままの姿になれる。素裸になったテメノスを、クリックは口づけをしながら横抱きに抱いて、寝台に柔らかに寝かせた。
「はぁ……テメノスさん、きれいだ」
「クリックくん……」
「やっぱりテメノスさんは世界一綺麗です。例え子供がいても、本当に、綺麗です」
恐る恐る、という様子でクリックは再びちいさな口づけを落とし始めた。最初は旋毛。それから少し汗ばんだ前髪を分けて額に。そして目元に。そこから鼻先、頬、唇と続けて耳朶を食む。
「んぅっ……」
唇だけで耳朶を食むという淡い行為にすら、テメノスは感じていた。秘所が濡れて愛液が零れ落ちてゆく感触に、甘い感覚を覚えた。
キスは終わらない。鎖骨を経て乳房の上側をねっとりとなぞる様に舐めまわしてから、ついにふっくらとした乳輪にたどり着き、ぽってりと膨らんだ乳首に触れた瞬間、とてつもない快楽がテメノスを襲った。
「あぁんっ、乳首はまだっ……」
「さっきトリスに吸われてたから、敏感になってるんですね。テメノスさんの乳首っていつもは桜色で綺麗なのに、最初からぽってりしてて真っ赤です」
「仕方ないじゃないですか!トリスにお乳を与えていたんだから……」
「ん、母乳がまだ残ってるみたいです、吸っちゃいますね」
じゅうっと吸われてテメノスは思わず腰を浮かしてしまった。
「やぁんっ、クリックくんの吸い方、えっちでっ……」
秘所から愛液がたっぷりと湧き出てくる。下着は最早用をなくしていた。くちゅくちゅと上下から音がして、淫らな音に塗れてしまい、テメノスの意識はぼうっとなってきた。
トリス程本能的ではないにせよ、クリックの吸う力もなかなか強い。こんなところで対抗意識を燃やさないで欲しい、と思いつつも、刺激も欲しいからどうしても胸を突き出してしまう。
「くりっくくん……もう片方のおっぱいも、いじって……上手に吸って……疼いて、仕方なくて」
自ら乳房を強調するように持ち上げて、クリックに見せると、クリックは甘い表情で頷いてからもう片方の乳房を吸い始めた。
「はぁんっ……気持ちいい……どんどんえっちな気分になっちゃう……」
「テメノスさん……きれいだ……誰よりも、本当に、きれいです……」
「そんなことはいいから、はやくおっぱいと、……それから、あそこも……」
あそこ、と言いながらもテメノスは淡い胸を揺らしてクリックを誘う。同時に触ってほしい、という意志表示だったのだが、クリックは察してくれたらしい。
クリックの逞しい手がくちゅ、と下着越しにテメノスの秘所に触れる。
「あぁっ、いれて……!」
熱っぽく実った果実のような乳首を口先で転がしながら、クリックはテメノスの下着をさっさと脱がせて、そのままずぷり、とテメノスの陰唇をなぞりながら指を中へと侵入させた。
「ひあっ、はっ、どっちもっ……はっ、もっと……、もっと……ほし……っ」
くちゅくちゅ音を立てながらクリックの指はテメノスの胎内へと侵入してゆく。
「熱いです……テメノスさんのナカ……指に襞もまとわりついて、離れませんよ……」
「そっ、それは……君の指が……、ううん、もっと……指、増やして」
足をもじもじと、そして胸を逸らすようにしてクリックに寄せながら、テメノスは涙目で呟く。それを見たクリックはぐう、と唸るような声を出して、指の本数を増やした。勿論乳首への刺激も忘れない。熱っぽく勃ちあがった乳首を軽く噛んでみたり、ぶあつい舌で舐めまわし転がしたりしながら、中心部分を吸うと、母乳が出てくる。ちゅっちゅと音を立てて母乳を吸えば、都度テメノスの身体がビクビクと震える。先ほどトリスに乳を与えていた母親とは思えないほど、今のテメノスは完全に『雌』だった。雄に犯されることを至上の歓びとする雌が、もっともっとと強請ってくる。顔はすっかり上気して普段の穏やかさや清廉さなど微塵も感じられない。欲に塗れて涙と涎を垂れ流し、唇はてらてらと光って欲望を煽る。薄い唇に噛みつきたいという欲を我慢しクリックは今はテメノスの乳首や乳房、それと秘所に集中していた。秘所からはとめどなく愛液が溢れ、淫らな音を立てている。入れる指を二本にする前に、中に一本指を入れながらテメノスの花芽を指でつつくと、細い肢体が跳ねた。
「あっ、そこは……もっと、してぇ……!」
花芽は熱かった。そしてクリックが触れたことでぷっくりと膨らみ、熱を孕んでもっと刺激を、とせがむ。クリックは乳首を食みながら花芽をコリコリと刺激すると、ぷしゃ、と水のようなものがテメノスの秘所から噴き出した。生ぬるい体液がクリックの顔にかかる。
「やぁ……あ……」
「テメノスさん、気持ち良すぎて潮吹いちゃいました?クリストスも乳首も弱いですもんね。母親になっても、テメノスさんはえっちですね」
乳首を吸うことをやめてクリックは顔を上げ、すっかりと蕩けてしまったテメノスに向かってやや意地悪気に言うと、テメノスは顔を歪めて泣きそうな顔をした。
「そ、そうじゃ、なく、て……きみが……」
「僕がどうかしましたか?僕は、テメノスさんのお願いを聞いただけですよ?えっちなお母さんで、トリスはどう思うんでしょうね」
「や、トリスのことは今は言わないで……おっぱいも、あそこも、全部、今は、君のもの、だからぁ……」
半泣きになりながらテメノスは刺激を求める。もう理性などとうにないのだろう。隣でトリスが寝ていることも、頭にはないのだろう。頷くと、クリックは自らのズボンと下着を脱ぎ捨てて欲望を露わにした。クリックの立派すぎるペニスはまるで仁王立ちをするようにそそり立ち、雌を犯す準備は万端といわんばかりに我慢汁を垂らしていた。
脈打つペニスを見た瞬間、テメノスがもの欲しそうな顔をしたので、クリックは唇を噛むと頷き、ぴた、とテメノスの秘所に自らの雄の先端部分を宛がった。
「挿れますね……テメノスさん……」
「うん。きて、くりっく、くん……わたしを、つらぬいて……」
両腕を上げて歓迎するテメノスに、クリックは容赦なく杭を打ち込んだ。
「はぁんっ!!きてる、きてる、きもちい、きてる……熱いの、きて……わたし、おかしく、なっちゃう……!!」
クリックが挿入した瞬間、テメノスの肢体がびくりと震えた。そして抽出の動きと同じようにがくがくと揺れ、涎と母乳まみれになっていやらしくてらてらと光る乳房がその都度ぷるぷると揺れた。
テメノスの胎内は熱かった。肉壁がクリックのペニスを捕らえんとまとわりついてきて、きつい。それでも押し進めたり引いたりする度にテメノスの肢体が動くものだから、クリックも必死に抽出を繰り返した。
「テメノスさん、すごくえっちできれいです……っ!もっていかれそうだっ……!!」
「や、……はっ、……はっ……ね、ふたりめも、……つく、ちゃ、い、ましょ……っ、くりっくくん、ナカにっ、久しぶりだからっ、はっ、全部っ」
シーツをぎゅっと握りしめながら恍惚の笑みを浮かべ、乱れた髪もそのままに途切れ途切れに言われた言葉に、クリックの中にあった何かがぷつん、と切れる音がした。
「テメノスさんっ、愛してます、愛してます、愛してますっ!二人目も、作っちゃいましょうっ!もう何も、考えられない!僕はっ!」
「なにもっ、……考えないで、わたしのナカに……、だし、てっ!!」
くちゅくちゅという淫らな水音と、パンパンと肌と肌がぶつかり合う音がする。テメノスの細い腰をがっしりと握り、クリックは抽出を繰り返した。都度あがる甘い声に耳を犯されながら、鼻息も荒くクリックはひたすらに高みに昇るように抽出を繰り返す。そうしているうち、意識がどんどんとはじけそうになってきた。もう何も考えられなくなり、思い切って最後の挿入をして、テメノスの子宮の中に精液を注ぎ込んで、クリックの意識ははじけ飛んだ。その時に、テメノスのカン高い嬌声を聞いた気がして、クリックは大きく息を吐いた。
「よく考えたら、今二人目をもう作っちゃったら、ダメでしたね……ごめんなさい」
気だるい空気の中、テメノスの裸体を抱きながらクリックが言葉を落とす。「どうしてですか?」と聞く前にテメノスも答えに至りああ、と納得した。
「私の旅が終わってないから、ですね」
「はい。まだテメノスさん旅が終わってないのに、僕は……」
「何も一度のセックスで必ず子供を授かるわけではないですし、今度の旅はもう終盤です。あとはカルディナを追い詰めて、斃せばいい、その後はどうなるかわかりませんが……今までのように長くはないと思いますよ」
「そうだと、いいんですけれど。テメノスさんの旅は何時だって危険を伴うから、本当なら僕もついていきたいんです、でも……まだ身体が本調子じゃないし、皆さんにきっと後れを取ってしまうと思うんですよね」
「そうですね。それは否めないと思います。君の身体は十全じゃない。その自覚があるから、トリスを任せられるんです。幸い町は平和ですし、皆もトリスを可愛がってくれてますしね。それに巡礼道も皆の協力のお陰で魔物は出なくなりました。だから、私が帰ってくるまで待っててくださいね、私の大切な旦那様」
そう言いながらキスを額にされてしまえば、クリックはテメノスをぎゅっと抱きしめてこれ以上離したくはない、という意志表示をする。
「あれ、私の旦那様はそんなに寂しがり屋だったのですか」
「そうですよ。僕はこれでも独占欲が強いんです。せっかく一緒になれたのに、また離れ離れだなんて……」
「でも、トリスがいますよ。トリスを私だと思って、大切にして?」
「それはもちろん、そうします。トリスはテメノスさんと同じくらい大切な僕たちの娘です。でも、どうしたって僕にもトリスにも、テメノスさんは必要です、だから……だから、無事に帰ってきて下さいね」
涙の幕が張った蒼の瞳——その瞼に、テメノスは小さくキスを落とした。それから鼻先に、そして口元に。
「わかりましたよ、クリックくん。でもまだ旅立ちには早い。多分頃合いを見たら手紙が届くでしょう。そうしたら、私は旅立ちます。大丈夫ですよ、心配しないでください、私には、心強い仲間たちがついているんですから」
そう言ってクリックを抱きしめる細腕の力は強く、クリックはテメノスの胸元に頬を寄せてほう、と安堵したように吐息を吐き出した。
そして、いよいよ旅立ちの時が来た。キャスティから手紙が来たのだ。トト・ハハにカルディナがおり、オルト達も共に向かったのだという。
カルディナはまだ生きており、斃さなければならない状況になった、だからテメノスの力が必要だ、と。そして何よりカルディナが持っている情報はテメノスにとっては重要な情報だろうと、そう手紙には書かれていた。
トリスは既に一人で歩けるようになり、言葉も発することが出来る。意思疎通もかなりできる様になり、一人で遊ぶことも増えた。だから、旅支度をするテメノスを見て不思議そうに見上げてきた。
「かあさま、どこかへ行くの?」
「トリス。母様は大事な友達の手伝いをしに旅に出なければならなくないりました。その間、父様と一緒に聖火を守ってくれる?」
トリスの頭を撫でながらテメノスがゆっくりと問うと、トリスは手を挙げて勢いよく返事をした。
「はい!わたし、とうさまと一緒に、大聖堂の聖火をまもります!かあさまと離れるのは寂しいけれど……でも、かあさまは、大切なことをしに、旅に出るんですよね?」
トリスは本当に聞き分けがいい。良すぎる、と思う。だから、旅が終わったら思いっきり甘やかそう、と思っていた。オーシュットと一緒にトト・ハハで狩りをさせるのもいい。ニューデルスタに連れて行ってソローネと一緒にアグネアの公演を見るのもいい。オズバルドのところで魔術を教わるのも悪くないかもしれない。ク国に連れて行って、ヒカリに案内させようか。王とはいえ友の頼みならばきっとヒカリは喜んでくれるはず。キャスティと一緒に薬草について学んだっていい。パルテティオに蒸気機関を見せてもらうのもいいだろう。仲間たちは、きっとトリスを可愛がってくれるはず。そう、この子は、皆の未来そのものなのだから。
「テメノスさん、行くんですね。トリスのことは任せてください。ご無事で」
駄々をこねるかと思っていたが、クリックの別れの言葉も案外簡素だった。否、きっとトリスの前だから堪えてるのだろう。あのクリックがテメノスの心配をしない筈がない。だからテメノスは、クリックをトリスごと抱きしめた。
「かあさま?」
「テ、テメノスさん?」
それから二人に順番に頬に口づけを落とす。
「二人に、聖火神エルフリックの加護があらんことを。では、いってきますね」
「かあさまにも、聖火神エルフリックの加護があらんことを!」
「テメノスさん、ご無事で還ってきてくださいね!」
こうして家族二人に見送られ、同時に気づいたフレイムチャーチの人々に見送られてテメノスは旅を再開したのだった。
旅は終わった。すべての暗黒を潰えさせ、世界は平和になった。皆が、元居た生活に戻る事になった。
「ねえ、年に一度、会う約束をしない?あたしたち、皆バラバラだから」
「それはいいけど、私はどこにいるかわからないよ」
「そういうソローネくんだって、どこに居たって戻ってくるでしょう?」
テメノスが言うと、ソローネは肩を竦めて苦笑した。
「そうだなあ。俺も忙しくなるとは思うが、お前たちの顔は見たい。それを励みに仕事ができるしな!」
「俺もそうだ。国王としてではなく、友として、皆と会う機会が欲しい」
「俺も、是非混ぜて欲しいところだな」
「わたしもとっておきの干し肉をみんなに持ってくるぞ!」
「そうね、そういう機会はあった方がいいと思うわ」
「でしょでしょ!ね、そしたら皆、年に一度、ニューデルスタで、ううん、どこでもいいから会おうよ!あたしの公演でもいいしさ!そういうのがあるほうが、きっと頑張れると思うんだ」
アグネアのいう通りだろう。この八人は艱難辛苦を長らく共にしてきた八人だ。そこには見えない絆がある。そしてその絆は、見えないが決して消えない強い絆だ。何があっても切れることのない、大切なつながり。そういうものを、テメノスはトリスにも感じさせてやりたい、と思った。
「そうですね。私もクリックくんとトリスをつれて、必ず皆さんと会いたいです」
「わー!トリスちゃん、今何歳だっけ?女の子の成長を見れるなんて嬉しいなあ。今度クロップデールにも連れてきてよ。特性の木苺ジュースと桃のパイをご馳走するよ!」
「それなら名探偵、私は裏町のとっておきの酒場でご馳走するよ。治安はあまりよくないけれど、あんたたち両親なら大丈夫だろ」
「トト・ハハにも来て欲しい!そこでわたしが狩りを教えてやるぞ!」
「おお、いいなあそれ!それなら蒸気機関車の出発式には是非招待しないとだな!家族三人で来てくれよな!」
「それならばク国の祭事などにも来て欲しいが……なかなか難しいだろうか」
「ほらほら、皆、一気に喋るからテメノスが困っているじゃない。それにまだトリスは小さいのよ。あまり東大陸、西大陸と移動させるのも……」
キャスティの心配を、けれどテメノスは首を横に振って彼女を見た。
「キャスティ、気遣いは有難いのですが大丈夫です。私の夫と子供は少々の長旅でもへこたれることはありません。むしろ、皆に会えることを楽しみにしているようでした。寝物語で皆の話をすると、続きをせがまれて全然寝なくて大変だったこともあるんですよ」
誰に似たんでしょうね、と苦笑しながら告げるテメノスに、一同は笑う。そこには確かに幸せな光景があった。長い間一緒に居た者たちの、確かな絆があった。
そして、五年後———
「母様、あれがニューデルスタの都?」
「ふふ、そうですよ。ほら、もうアグネアの公演が始まります、急ぎましょう。クリックくんも、急いで」
「は、はい!こんな公式な場久しぶりで……こんな格好、皆に笑われないでしょうか」
「ソローネ君が選んだ服に文句でも?」
クリックは正装と言えば聖堂機関の鎧しか持っていなかったため、こんなこともあろうかとソローネが事前に選んでくれていたのだ。クリック曰くは、選んでいたソローネはそれはそれは楽しそうだったとか。一緒にトリスの衣装も選んでもらえて、正直助かったのだが、それはここだけの話。
「ありません!」
「それじゃあ行きましょう。何でも特等席だそうですよ。世紀の大スターの舞台を特等席で見られるだなんて幸運は、この先ないでしょうから」
「はい!」
二つの声が重なり、テメノスは思わず笑みを深くした。
「おっと、ゆっくりしてる場合ではないですね、急ぎましょう」
三つの手をつないだ影が、夕焼けのニューデルスタの都の雑踏へと消えてゆく。それは幸せの光景の一つだった。
「あ、あ、あのっ、アグネアさん、とっても、とっても、素敵でしたっ!」
「本当に?トリスちゃん、嬉しい!」
アグネアの公演が終わって舞台裏。舞台裏に来いと呼ばれた三人は、当の主演、アグネアと会っていた。トリスは初対面のきらきらと輝く踊り子に緊張しているのか、姿勢を正してしどろもどろに感想を呟く。そのあまりの可愛さにアグネアもメロメロなのか、トリスを抱っこして可愛がってくれた。
「ひゃあっ、アグネアさんに抱っこだなんて!い、いいんですか!」
「いいべいいべ、トリスちゃんならいくらでも抱っこくらいしてやるべよ!」
「へ?は?え、ええと?」
トリスを抱きながらくるくると回るアグネアに、振り回されて頭に疑問符を出すトリスに苦笑しながらテメノスは補足する。
「トリス、気にしないで。アグネアは気が昂ったりするとお国言葉が出たりするんですよ」
「も~~テメノスさん!余計なこと吹き込まないで!」
照れ入ったように怒るアグネアと口をぱくぱくしながらもアグネアにすり寄るトリスが愛らしく、クリックはだらしなく鼻の下を伸ばしていた。
「クリックくん、だらしない顔してますよ」
「いたたっ、テメノスさん、足を踏まないでください!」
「あなたの妻は誰ですか?」
仁王立ちしているテメノスは、正装しているだけあって、かつその姿がひどく美しいがために異様な迫力があった。
「そんなの、テメノスさんに決まってます!ただ、トリスとアグネアさんが可愛らしいなあと思ったって、いいじゃないですか!だいたいトリスは僕たちの娘です!」
「それはそうですけど……」
「あ、あはは……本当にテメノスさんたちは仲がいいんだね」
それを羨ましそうに、どこか寂しそうに告げるアグネアに、「そういえばパーラやお父さんには会ってないの?」とテメノスが問えば、アグネアは首を縦に振った。
「なかなか忙しくてね……。でも、今日は確か来てくれてるハズだから、全部が終わったら三人でゆっくりするつもり」
「お二人より私たちを優先したの?アグネア、そういうのは……」
「あれ、なんだかテメノスさんもキャスティさんみたいなこと言うようになったんだね。やっぱりお母さんになったから?大丈夫だよ、家族の時間はちゃあんと作るから、心配しないで。それよりこれから皆で集まるんでしょ?あたしも準備しないとだから」
「ああ、そういえばそうでした。では、私たちはお先に行きますね」
「うん、待っててね!」
こうして八人に加えて二人が揃って、ニューデルスタでの酒場での宴が始まった。酒場は当然貸し切りだ。ヒカリはク国からお忍びで来ているとはいえ、大スターアグネアは身分を隠しようがない。最もアグネアの護衛は当面ソローネが請け負っているので、二人が揃うのは当然だった。オズバルドも彼なりに楽しんでいるようで、ほっとした。
「こうやって皆で集まるのは、本当にいいね。言い出してくれたアグネアに感謝しないと」
ワインを傾けながら呟くソローネに、皆が頷く。オーシュットは皆の分だと持ってきた干し肉を贅沢に切り分けており、パルテティオは最近の鉄道計画について大いに皆に語った。ヒカリはク国の復興がどれ程進んでいるか語り、復興が成った暁には是非皆に遊びに来て欲しいと言う。キャスティは薬師団としてまだ戦の傷跡の残るク国で活動しているらしく、実に彼女らしい行動で、皆が彼女を称えた。
「そういえば、今日は宿は三人でとっているの?」
「そうですが、それが何か?」
キャスティが唐突にテメノスに問う。テメノスは当たり前のように家族三人でとっていると答えたが、ソローネとキャスティが何やらこそこそと話始め、二人でうんうんと納得していた。そしてオーシュットのところへ行き、何やら話すとオーシュットも頷いて見せた。テメノスがきょとんとしていると、そこへソローネがそっと耳打ちしてきた。
「名探偵、今日は折角だし夫婦二人きりで過ごしなよ。トリスはアグネアにすっかりなついちゃったみたいだから、今日は女子会でもするさ。夫婦の時間、あんまりとれてないんだろ?」
「女子会って……ていうか、ソローネくん……わかってたんですか?」
「それくらいはね、子羊クンの顔を見ればわかるよ」
「そんなにわかりやすいですか、彼」
「本当に、その辺の子供の方がまだわかりづらいくらいにはね」
確かにクリックはそわそわとしていた。そしてチラチラとテメノスの方を見ては顔を赤くして、ほう、と溜息をつく。全く、これは日常的になのだがこうして皆で集まるとどうも顕著なようだ。
「ありがとうございます。お言葉に甘えても?」
「もちろん。というか、さっきアグネアが言い出したんだよね、実は。トリスちゃんと一緒に寝たい、って」
「それは有難いですが……」
「まあ、こういう時だしさ、久しぶりに夫婦の時間を楽しむのもいいんじゃない?」
「そうですね。ありがとう、ございます」
テメノスは席から立ち上がるとクリックの傍へ行く。
「クリックくん、トリスは今日アグネアたちと一緒に泊るそうです」
「あ、えっ?三人で泊る予定では?」
「どうもアグネアくんが、というか皆が手筈を整えてくれたらしくてね。久しぶりに夫婦の時間を楽しめ、だそうですよ」
「本当ですか!」
反射的になのだろうが、大声で叫ぶクリックに皆が苦笑した。
「父様、少し落ち着いたら?そんな父様だから私がしっかりしないといけなくて、本当に大変なんだから」
「そうなんだべか?クリックくん、少しはトリスちゃんを見習ったら?」
「本当にそうなんですよ、アグネアさん!父様ったら、母様がいない間中母様の事ばっかり話して、私、本当に大変だったんですから。今日はたっくさん、お話聞いてくださるんですよね?」
「あったりまえじゃない。色々お話、するんだもんね!」
「ほらもう、トリスの方が君よりよっぽどしっかりしてますよ?」
「……うう、返す言葉もないです……」
「ははは、クリックは完全に尻に敷かれているな!まあなんとなくそうだろうとは思っていたけどよ」
「パルテティオ、口は災いの元っていう言葉、知ってますか?」
「おっと断罪の杖は勘弁してくれよ。あんたのアレの威力は、一緒に旅をしていてよおくわかってるんだから」
口の回る道化師がおどけてみせると、一同笑いに包まれる。そうして宴も盛り上がり、あれやこれやと今までの話やこれからの話、世間話などに花を咲かせながら一同は酒と食事を楽しんだのだった。
「はあ、ふたりきり、というのも久しぶりですね……」
「そ、そうですね」
元々大人二人に子供一人で宿をとっていたのでベッドは三つあるのだが、ちょっとした贅沢、ということで大きめの部屋を取っていたために大人二人でベッドを使っても大丈夫そうな部屋だった。流石ニューデルスタの一流ホテルというところか。サイドテーブルには花が活けてあり、窓からは夜のニューデルスタが一望できた。繁華街の光は眩しく、住居街の灯火も美しい。それから西方面にある裏町の光もこの日は美しく見えた。
「ねえ、クリックくん。実はね、今日は特別な装いをしてきたんですよ」
「へ、え?テメノスさん?」
言いながらテメノスは真っ黒なドレスのスリットから覗く脚を見せつけてゆく。腰元までめくると、腰で結ばれた細い紐が見えた。
「テメノスさん、あの、もしかして」
「ふふ、君と特別な時間を過ごすためにね、ソローネが仕込んでくれたの。もっと見てみたい?」
妖艶に笑う妻に、クリックはごくりと唾を飲み込む。同時に鼻息も荒くなった。
「見ても、よいので?」
「もちろん」
恐る恐る、という様子でクリックはテメノスに近づき、肩からドレスをはらり、とはだけさせる。
すると下着は殆どあってないようなものだった。胸元などは隠してすらいない――なんとなくそんな気はしていたが、大きく空いた胸元などは少しかがめば乳首が見えてしまうほどに開いていて、実は気が気ではなかったのだが、実際にこうしてみるととてつもなく色っぽい。そしてすとん、とドレスは床に落ち、テメノスの美しい白い肢体を覆っているのは腰元で結ばれた下着と、黒のニーハイソックスだけだった。
「テメノスさん……今日一日、こんな格好をしていたんですか?」
「……ふふ、実はそうなんですよ。ソローネくんがね、一役買ってくれまして」
にこりと笑うテメノスは、首元にシンプルながらも洗練された銀のネックレスと、下肢を覆う黒い紐の下着に、黒のニーハイソックスだけを身に着けていた。クリックはごくり、と再び唾を飲み込む。あんなに上品に見えていたのに、実はその下はこんなにもいやらしい格好をしていただなんて。
「テメノスさん、こんな……いやらしい格好してたんですね……」
「ふふ、どうします?旦那様?」
煽るように仕向けるテメノスの表情は妖艶で、クリックは唇を嚙みしめた。
「決まってるじゃないですか」
流石に昔のようにがっついてはこなかったが、クリックは優雅にテメノスの手を取ると横抱きにしてベッドへと運び、ゆっくりと壊れ物を扱うようにテメノスを寝せる。そして覆いかぶさる等にベッドに乗り上げて、テメノスの唇を奪った。
「んっ……」
初めは軽いキス。そして、それは少しずつ深まってゆく。薄いテメノスの唇を舌で割って入り、歯列をじゅるりとなぞってから舌を絡め合う。熱を持った二つの舌が追いかけっこをするように交わり合い、唾液がどちらのものともなく零れ落ちた。それがとてもいやらしく、クリックはペロリと舐めとる。
「ふっ……はっ……」
甘い吐息がテメノスの口から洩れる。その甘い息ごとクリックは食いつくように口で覆い、唇を吸い上げた。じゅる、と音がして再び舌と舌が絡み合う。もどかしくなったテメノスはクリックの首筋に細い腕を回して引き寄せ、胸と胸が合うようにした。
その動きにクリックは応じる様にテメノスのささやかな胸を揉みだす。ゆっくりと、まさぐるように動くてのひらは胸の柔肉を揉みしだき、けれどもツンと立っている乳首に刺激は与えない。
「クリックくん、……おっぱいだけじゃなくて……乳首も……」
「わかってますよ、テメノスさん」
そこでようやくというように、テメノスの乳首を指先で刺激すると、テメノスは甘イキしてしまったのか、「あぁん!」と甘い声を漏らして下肢をビクリと痙攣させた。
「テメノスさん……今日、殆どおっぱいを丸出ししてたも同じようなものなのに、乳首だけでイッちゃったんですか?相変わらずいやらしいなあ」
「や、いわないで……ああいう場では、上に下着は付けないんだって、ソローネくんが……」
「だからって!テメノスさんの可愛い乳首が衣服越しでも誰かに見られていたかと思うと、僕は……っ!」
思わず強い口調でクリックは言いながらテメノスの乳首を抓る。
「やぁ、……あんっ!強い、んだからぁ……!」
「わざとしてるんです!こんなにいやらしい乳首を、人前で、晒すだなんて……テメノスさんは悪い人だ」
尚も乳首を虐める手を止めないクリックに、テメノスはいやいやと首を振り子供の様に泣きじゃくる。
「や、もう……ちくび……ゆるして……わたし、あそこが、ぐちゃぐちゃ……」
「て、テメノスさん、ごめんなさい。僕、意地悪しすぎました……つい……」
「ゆるしません……今日は、徹底的に、甘やかして、もらいますからね……」
クリックの首に両手を絡ませたまま頬を膨らませて胸を押し付けてくる伴侶が余りにも可愛らしくて、クリックはその胸に唇を寄せた。勿論刺激を与えるためだ。既に散々弄んでいたからぷっくりと立ち上がった乳首は刺激を今か今かと待ち望んでいるようで、ちゅ、と先端に口づけただけでテメノスの身体がしなり、甘い声が漏れる。
「や、あんっ!ちくび……もっと……!」
そのまま舌先で転がしてみたり、カリリ、と噛んでやればテメノスは都度反応を示した。先端部分ももうふくれあがり、白いものが滲み出ている。
「テメノスさん、これ、母乳……ですか……?」
「や、おっぱい……でちゃう……」
「これ、トリス用のではないですよね。えっちな気分の時にでも、出ちゃうんですね、おっぱいって……これは、僕が吸っていいやつですよね!!」
嬉しそうに言うクリックが余りにも愛おしくて、テメノスはそのまま胸を押し付ける様にクリックを抱きしめた。
「わっぷ!テメノスさん!これじゃおっぱいが吸えません!」
「ごめんなさい、なんだか、嬉しくて。君のために私のおっぱいが出るだなんて、思わなくて」
「僕用のえっちなおっぱい、たっぷりいただきますね」
言うが早いかクリックはちゅうちゅうと母乳を吸い出した。その力は強くて、母性と快楽をテメノスに与えてくる。多幸感で一杯になると同時に、下腹部がじゅん、と濡れるのをテメノスは感じていた。もどかしい、けれども幸せで、このままでいたい。二つの相反する感情がテメノスの中で混ざり合い、溶け合って、下肢をクリックに押し付けるような形になってしまっていた。
一方のクリックはといえば夢中でおっぱいを吸っていた。それはひどく甘く感じられ、かつて母親というものをあまりよくは思ってはおらず、こんなに胸を吸うだけで満たされるのだという本能的なものを満たしてくれるテメノスは、本当に自分にとっては運命的な相手だったのかもしれない、とこちらも多幸感に包まれながらも、男としての欲もしっかりと膨れ上がっていた。既に下肢はぱんぱんになっており、タイトにまとめられていた衣服が邪魔でしょうがない。だから、テメノスの乳首を吸いながらさっさと下肢を覆っているズボンと下着は脱ぎ捨てていた。するとテメノスが下肢をこすりつけてくる。それも、ビンビンに勃起したクリックのペニスに、だ。たまらなかった。自分の妻がこんなにもえっちだなんて、思わなかった。
「テメノスさん……おっぱいはそろそろもういいですか?僕、テメノスさんに、その、挿れたい、です……」
「はい、クリックくん……わたしも、そろそろ、きみが、ほしい……から……あ」
その言葉が契機だった。クリックはテメノスの下肢を覆っている下着を外すと、愛液に濡れそぼった蜜壺にペニスの先端を宛がう。
「は……あん……!!」
「うっ、……これだけで、熱い……」
テメノスの秘所は、慣らす必要がない程に濡れそぼっていて、クリックはろくろく慣らさないままにテメノスの蜜壺に自らのペニスをゆっくりと、ゆっくりと埋め込んでいった。
「あ、あ―――っ!きてる、きて……くりっくくんのっ、おっきな、おちんちんっ、入って、きてっ!わたっ、わたし……!」
「テメノスさん、テメノスさんっ、気持ちいいです、ナカが、締め付けてきてっ、熱くて、とってもっ!!」
テメノスの胎内は熱く蠢いていて、その肉壁はクリックの肉棒を絡めとり奥へ奥へと導いた。ずち、ずち、と導かれるままにクリックはゆっくりとペニスを押し進めると、やがてテメノスの子宮口へとたどり着く。
「あっ、あっ、来てるっ、くりっくくんのっ、おちんちんが……っ!わたしの、ナカに……!はやく、はやくだし、……てっ!!」
返事の代わりに、クリックはペニスを何度も抜き差しして、射精感を高めていった。その都度かくかくと揺れる細いテメノスの肢体と、上向きにぷるぷると揺れる乳房がやたらといやらしくて、クリックは乳房に食いつきながらテメノスの細い腰をがっしりと抑え込み、ペニスの抽出を繰り返した。
「あんっ、あんっ、あんっ、もっとっ、奥っ、ナカにっ、出してっ、くりっく、くんっ、はやくっ、はやくっ」
最早何を言っているのかもわからないであろう程に理性を飛ばしたテメノスの甘い声も手伝い、クリックの射精感も徐々に高まってゆく。
「ああ――――――――っ!!クるっ、きちゃうっ、わたしっ!」
乳房を食みながら、身体を押し付けてパン!パン!と肉の音を響かせながら、クリックはテメノスの最奥、子宮口へとたっぷりの精液を吐き出した。
「クリックくん、お疲れ様……」
クリックの太い腕を枕に、テメノスはほっとしたように笑みを浮かべて声をかけてきた。
「はぁっ、はぁっ……テメノスさん、大丈夫ですか?」
「私?私は大丈夫ですよ。久しぶりのセックスで、ちょっと燃え上がってしまいましたけど、ね」
悪戯っ子のように笑うとテメノスはクリックの逞しい胸元に頬を寄せて、キスを落とす。
「気持ちよかったですよ。君のたっぷりの精液も、いただいたことですし」
「そ、それは……!」
「ふふ、二人目が出来るといいですね。今度は男の子がいいかな……」
「僕はどちらでもいいです。僕とテメノスさんの子供なら、どっちでも沢山愛しますから。あ、勿論、一番はテメノスさんですよ?」
「ありがとう、クリックくん。私も愛してますよ……ん……ふぁ……」
「眠くなっちゃいました?このまま眠っても大丈夫ですよ」
「ん、そうさせてもらいます……今日は、皆と再会して……少し、はしゃぎすぎた、よう……で……」
「あ、テメノスさん。ちょっと待ってください」
「ん?」
「そのまま寝ちゃうと、折角の装飾品が……」
言いながら、クリックは器用にテメノスのネックレスを外し、サイドボードに置いた。きらきらと輝く銀で作られたそれは、先ほど見た夜景のように美しい。
「これ、ソローネくんがプレゼントだってくれたものなんですよ。さっきのドレスもですけど。私、ソローネくんに何も返せてないのに……彼女ったら、礼はいらない、元気な姿を見せてくれればそれでいい、だなんていって何も受け取ってくれないんです」
不貞腐れるように自分の胸の中でぶつぶつと文句を言うテメノスが可愛らしくて、クリックはその汗をかいてしまった頭をゆっくり撫でてからキスをする。
「ソローネさんは、多分、もう貰ってるんですよ、テメノスさんから、たくさんのものを」
「私から?私は、何もしてないですよ」
「僕だって、テメノスさんから沢山のものを貰いました。テメノスさんは気づいてないかもしれないけれど……。ソローネさんも、きっとそうなんだと思います」
「そうなの?……でも、君が、そういうなら……そういうことに、しておきましょう……ふあぁ……本当に眠くなっちゃいました。先に、眠りますね、旦那様」
言うが早いか、テメノスは頬をクリックの胸に寄せてすうすうと寝息を立て始めた。すっかりと安心したのか、その表情は柔らかだ。クリックは暫く胸の中で寝息を立てるテメノスを眺めたり、銀糸を弄んだりしていたが、やがて眠気が襲ってきて、テメノスの旋毛にキスをして、自分も静かに目を閉じるのだった。
「愛していますよ、テメノスさん。これからも、ずっと……。おやすみなさい、また、明日」