「あ、あわわ~~、なじょすっぺ~~~!!」

 戦闘後、アグネアの間抜けな悲鳴が周囲に木霊する。

「どうもこうも、摩訶不思議の舞はやめろって、言ったじゃない」

 冷たく続けるソローネの背丈は、アグネアの腰ほどになっている。その態度と怜悧さは、そのままだったけれども。

「ふうむ、さて、どうしたものか」

 オズバルドはといえば頭に犬のような大きな耳が生え、ふさふさのしっぽがせわしなく動いていた。本人の至って動じていない風をよそっているのとは他所に動いているということは、彼なりに焦っているのかもしれない。

「まあまあ、とりあえずいつものことですから」

 のんびりと、そういうテメノスはといえばそう変化は見られない。

「そういうテメノスが一番困るっぺ!」

 開口一番、テメノスに詰め寄るアグネア。確かに、その喉から発せられた声はいつものテメノスのものではない。

「まあ、多少不便(?)にはなりますけど……どうってことはないですよ?」

 当の本人はのほほんとしているから、アグネアは脱力しきって溜息を落とした。

「にしてもクリックになんていえばいいんだべか……」
「どうしてそこでクリックくんの名前が出るんですか」
「えぇ、だってテメノスとクリックは恋人同士なんだべ?」

 当然の如く言うアグネアに、はあ、と大きなため息をテメノスはついた。

「……そうですね、あの子羊くん、私が承諾したとたん、言いふらしてましたからね……」
「ほんっとうに申し訳ないっ!って、その、か、身体の方は大丈夫?」

 アグネアも少し落ち着いたのか、方言が取れてきた様子で、テメノスは内心ほっとしていた。本来ならば自分が一番混乱しているはずなのだが、周囲の二人も冷静なものだから妙に落ち着いてしまっているのだ。

「だってこれ、単に私が女性になってしまっただけでしょう?何か不都合でも?」
「だ、か、ら、それが不都合なんだってば名探偵」

 腰元をぐい、とひっぱるソローネの目は冷たい。

「あら細い。こんなに腰細かったっけ?なんかずるくない?」と凍えて続けてから、ねめつける様にテメノスを見上げてその鼻先に向けてキリリと指を指す。

「あんた、その状態でセックスでもしたら、子供出来る可能性だってあるんだよ?」
「はあ」
「はあ、って……状況わかってんの?」
「ですが、この舞の効果はそう長くはもたないじゃないですか。一度や二度のセックスで子供が出来るわけありませんよ」

 飄々と笑いながら言うテメノスに、ソローネは何を言っても無駄だと肩を竦め、耳と尻尾の生えたオズバルドの肩をぽん、と叩く。

「既婚者、なんとかいってやってよ」
「……何を言えというのか」
「……なんでもいいからさ……」
「……いうべきことなど、ない、当人同士の問題だろう」

 尻尾はせわしなく動いているくせ、当人は動じないオズバルドに、ソローネのため息が盛大に落ちる。

「そういう問題じゃないってわかっていってんのかね、まったく」
「ともかく魔獣も倒したことですし、宿に戻りましょう、皆さん」
「そ、そうだね!そのうちにみな戻ってるかもしれないしね!」 

 テメノスの言葉に対して精一杯明るく振舞うアグネアが、この状況ではいっそ哀れだった。



「やあ、クリックくん。待っててくれたんですか」

 夕刻過ぎ、労働が終わった帰宅者たちでにぎわう街並みの中、いっとう目立つ聖堂機関の鎧を着た青年が満面の笑みで手を振っていた。だが、異変に気付いた瞬間、その秀麗な顔が変じる。心配げに恋人を見つめ、そっと頬に触れた。

「は?テメノス……さん?お声が……」
「ああ、これはですね、アグネアくんの摩訶不思議の舞でどうやら女性になってしまったようで」
「はぁああああ?!」

 これにはこの場にいた全員が頭を抱えた。オズバルドですら、だ。
 ともかく街中でこれ以上は騒げないと判断したソローネがいち早く近場の酒場へと皆を連れ込んだのは、英断だった。
 そしてその後。特に状況をその回転の速い頭で飲み込んだパルテティオは早速クリックにちょっかいをかけている。

「こりゃあ、夜はお楽しみだな?」

 肘でつついてにやにやと笑うパルテティオを押しのけて、クリックは顔を真っ赤にして否定した。

「なななななっ、なんていうこというんですかパルテティオさんっ!」
「テメノス、女になったのかー?ふうん?」

 オーシュットはそう興味はなさそうで、屋台で買ったであろう肉料理にがっついている。

「もし何か必要な薬がありましたら、調合しますから、言ってくださいね」
 たおやかに笑うキャスティも、あっさりと状況を受け入れてしまっているようだ。

「その、……女人になってしまったのであれば……」

 言いづらそうにヒカリがクリックを眺めるのだが、クリックはといえば真っ赤になってプルプルと震えている。その視線はテメノスの胸元に釘付けだ。

「でも、テメノスさん、あまり、その……」
「何が言いたいんですか、子羊くん」

 がつん、といい音がして、クリックは断罪の杖で殴られた。

「い、いいえ!ぼ、僕は別に大きな方が好きとか、肉感的な方がよかったとか、全然、そんなことは、思って、いませんから!」

 がつん。もう一度派手な音がした。

「うーわ痛そー」

 他人事のようにソローネがジュースをすすっている。そう、まだソローネもオズバルドも症状は治ってないのだ。ワインに手をつけようとしたソローネの手からそれを奪い、ジュースに変えたのはオズバルドである。

「はあ、酒も飲めないなんてね。こんな状態じゃなきゃあ面白がるところなのに」
「面白がらないでくださいっ!もう、とにかく、テメノスさんは僕と一緒に」
「一緒に?寝るの?」
「そ、そうです……っ、いえ、みなさんを信用はしてますけど、何があるかわかりませんから……」
「出た、保護者面。ま、その方があたしらも安心だけどね。なにかがあったって、聖堂騎士殿が責任とってくれるでしょうし」
「せっ、責任はっ、取ります!」

 ソローネの言葉に、前のめりに応えるクリックに苦笑しながら、テメノスはクリックに寄り添う。なんだかんだとこの愛らしい子羊は頼りになるのだ。そう、胸中全く不安がなかったわけではない。
 だが、摩訶不思議の舞の効果はそう長続きはしないし、テメノスもこの時は楽観視していた。していた、のだが――



 いざ。という段階になると、この愛らしい子羊は固まってしまうのだ。或いはトンチキな行動に出てしまう。それがなければもっと……と何度からかったことだろうか。

「それじゃあそろそろ寝ましょうか、テメノスさん」
「そうですね……て、クリックくん?」
「はい?」

 毛布を持ち上げてさっさと寝る態勢に入ろうとするクリックに、テメノスは制止をかけた。

「君、何か忘れてるんじゃない?」
「はい?何も、忘れて、ません、よ……?」

 その声がたどたどしくなるのがわかって、テメノスはクリックの大きな手を取ると、わざと自らの胸元に触れさせた。当然毛布などはぶん投げてある。

「——!!」
「ほら。小さいけど、ちゃあんと、あるんですよ。おっぱい。触ってみたく、ないですか?」

 テメノスは、今は下着姿で、その下着姿というのがまた目に毒だった。レース素材を使った薄地のもので、華やかなレースの飾りの下、テメノスの白い肌がうっすらと透けて見えるのだ。当然、ほんのりと盛り上がっている乳房も、その頂の桜色の果実だって、クリックの視界にしっかりとはいっている。下は履いているのだが、それもまた薄い下着で、見えてはいけないものが見えてしまっているのだ。

「そ、そ、……その……」
「クリックくん?」
「さ、……さわり……たい、です……テメノスさんの、お、おっぱい……」

 小声になるクリックに、にっこりと満面の笑みでテメノスは笑い、更に大きな手を更に乳房にあてるように押した。

「ふあぁ……」

 クリックはテメノスの乳房に触れた瞬間、感極まったような声を上げた。実際に目元が若干潤んでいるのは気のせいだろうか。

「ね?柔らかいでしょう?わかります?ん、乳首、君に触れられて、ちょっと立っちゃってます」
「あ、あ……ほんとに、柔らかい……」

 テメノスにされるがままに、クリックは小さな乳房を揉みしだきだした。大きな手にすっぽりと収まってしまい隠れるほどの小さな乳房だが、その感触は柔らかく、男のテメノスにはないものだった。

「きもちい、い、です、か?」

 ふにふにと恐る恐る乳房を揉むクリックの様子がおかしくて、テメノスはくすりと思わず笑ってしまった。

「テメノスさん!僕は、これでもものすごく気を遣ってるんですよ!」
「わかってます、わかってますよ。ただね、私のおっぱいに恐る恐る触ってる君を見て、なんだか可愛いなあと思っちゃって」
「可愛いだなんて!そんなことを言うテメノスさんには、こうしちゃいます!」
「あんっ!ちょっと!急に乳首を抓らないでください!」

 先ほどまでの柔らかな触れ方から急に変じて乳首を指先で抓り上げたクリックに抗議の声をあげるテメノスの息が上がっていることに気づき、クリックはそれをよいことにコリコリと乳首を弄りだした。

「テメノスさん、男の時も乳首ものすごく弱かったですもんね……女性になっちゃったら、もっと弱くなったんじゃないですか?僕に触れられただけでこんなに立っちゃってるし、すごく、いやらしいし、おいしそう……」
「や、やめ……」

 じいっとクリックに眺められるだけで乳首がぴんと立ち、存在を主張してくる。それにつられて乳輪もふっくらとふくらんできていて、小さな乳房が少しだけ大きくなったようにクリックには感じられた。

「あ、おっぱい、少し大きくなってませんか?感じると大きくなるのかな……?」
「そんなわけないじゃないですか!あ、いや、でもあの舞の効果だから……なんとも、いえませんね……んっ、だから乳首はやめてくださいって!」

 涙声になって抗議されたところで、クリックの手はとまらない。ふにふにと今までにはなかった感触を楽しむ様に、笑みを浮かべながらテメノスの乳房を愛撫している。時に乳首に悪戯をしたりしながら。

「や、乳首、転がさないで……、ちょっと!そこ、押されたら……あんっ!」
「ふーん、やっぱり、前より感じてますよ、テメノスさん。乳首もおっきくなってますし」
「れ、冷静に分析しないでくださいっ!」
「ね、これ、とっちゃっていいですか?直に触りたいです」
「え」

 今までずっと、クリックは薄布の下着越しにテメノスの胸を触っていたのだ。それはそれで布がこすれたりして今までにはない感覚にぞくぞくと快楽が背筋を上ってきていて堪らなかったからそのままにしていたが、クリックはそうではなかったらしい。

「で、でも……」
「こわい、ですか?」
「は、はい……どうなっちゃうか、わからなくて……」
「ふふ、テメノスさんにも怖いことがあるんですね。大丈夫ですよ、きっと」
「君のその大丈夫は、一体どこからくるの?」
「なんとなく、です!」

 堂々と根拠もなく言うが早いか、クリックはテメノスの下着を肩からずらして乳房を露わにする。しかも半分だけ。片側の乳房は、今も下着の下に納まっている。けれども乳首はツンと存在を主張していて、それがやけにいやらしい。

「ちょ、ちょっと、クリックくん、これは……」
「うわあ、テメノスさん、……すごく……いやらしいです……」
「君がそうさせたんでしょうっ!」
「うあっ、いたっ!」

 ごん、と容赦のない鉄拳がクリックの頭頂部を襲う。その勢いに合わせて淡い乳房がぷるん、と揺れる様を、それでもクリックは見逃さなかった。

「うわ、小さくても揺れるんですね……」
「小さくて悪かったですね」
「い、いえ、そういう意味じゃなくて!」

 謝るが早いか、クリックははだけていない方の乳房にむしゃぶりついた。

「ちょっ、き、君は行動がっ、早すぎますっ!」
「んっ、……ぷは……」

 舌先で下着ごと舐めとり、乳首を転がして更に歯で軽く食んでやると、テメノスは甘い声を上げた。

「やぁんっ、噛むのはっ、だめですっ」
「でも、気持ちいいんでしょう?ほら、乳首、こんなに大きくなりました。こっちのおっぱいも揉んでみましょうか」
「や、やめて……」

 テメノスの抗議をよそに、クリックは下着ごとやわやわと乳房を揉みだした。濡れた感触と薄絹、そして動いたことでかいた汗で下着が肌に張り付いて、ひどくいやらしい。放っておかれているもう片方の乳房を、テメノスが自ら弄りだしたことにもクリックは気づいていた。

「は、ぁあん……おっぱい、きもちい……」
「すっかりいやらしくなっちゃいましたね。テメノスさん。いっつもこうしているといやらしいですけど、女性のテメノスさんはいつもの倍くらいいやらしい気がします」
「う、……やめて……」

 テメノスの手をどけて、今度はクリックは両手で両方の乳房を揉みしだきだした。緩急のついたその優しい揉み方は、時折騎士の逞しくごつごつとした手が乳首に当たり、快楽が背筋を走ってゆく。その都度腰が揺れ、秘所がしとどに濡れているのがテメノスにもわかった。

「く、くりっく、くん、おっぱいはもういいですから……その……」
「僕はまだ満足してないんだけどなあ」

 そんなことをいいながら、クリックはテメノスの乳首をしゃぶりだした。ちゅうちゅうと音を立てて、まるで赤子が乳首を吸っているかのようだ。

「うぁっ、やっ、……それ……やぁんっ……!!」

 テメノスが下肢をもじもじと動かし、腰を揺らしながらもいやいやをするように顔を動かしても、クリックは乳房を吸うのを止めない。まるで赤子のようなその行動に、徐々にテメノスの中に情愛が産まれてきていた。

―—クリックくんは、甘えたいのかな?

 そう考えると、自分の快楽よりも、という思考が先行する。テメノスもクリックのことが好きだった。まっすぐで、強くて、実直なこの青年のことを愛している。すると、自然に金髪の癖毛をテメノスは撫でていた。まるで母親が赤子にする様に、それは優しく、丁寧に。
 夢中でテメノスの乳房に吸い付いているクリックは気づいているのかいないのか、テメノスの細い腰に腕を巻き付けて未だ乳首から口を離さない。

「クリックくん、クリックくん、そろそろ、赤ちゃんモードはお終いにしてもえらえませんか……?こっちが、疼いて、しょうがないんです」

 言いながらテメノスはクリックの手を自らの下肢へと導こうとした。しかしそれは、クリックの手によって止められる。

「は、す、すみませんテメノスさん!つい夢中になっちゃって……!でも、見てください、母乳まで出てきてるんですよ!」
「な、なにを言ってるんですか?」
「ほら、よく見てください。こうやって乳首をぎゅってすると……」
「やんっ、……」

 確かに、クリックが二本の指でテメノスの乳首を挟み、刺激し続けると、先端の部分からぷっつりと乳白色の液体が出てきた。

「テメノスさんのおっぱい、もう少し吸いたいです、だめですか?」
「そ……そんな顔されたら、断れないじゃないですか……」
「ありがとうございます」

 返事をもらうなり、クリックは再びテメノスの乳房に吸い付いた。もう片方の乳房の方はクリックの太い指先により常に刺激が与え続けられているために、たらたらと乳白色の液体が垂れてきている。頃合いになるとクリックは吸い付く乳房を変えて、それを繰り返すのだ。本当にまるで赤子のようで、テメノスは再び自然とクリックの頭を撫でてしまっていた。勿論、快楽も拾っているから少々の我慢は必要だったのだが。

「ん、テメノスさんのおっぱい、美味しかったです。もう十分です、ありがとうございました」
「どういたしまして?なんだかんだ可愛い君の姿が見れましたから。それよりも、ね?」

 わざとらしく妖艶に笑うと、テメノスはクリックの指をとり、下肢へと導いた。そこは既に愛液でたっぷりと濡れそぼっており、下着は全く役に立たなくなっていた。下着は腰の横で紐を外せば外れる簡素なものだったから、素早く外してしまい、テメノスはクリックの指を自ら秘所へと宛がう。くちゅ、といやらしい音をたててクリックの指を飲み込んだ膣は、熱っぽくてクリックは思わず吐息を吐き出していた。

「ん……はぁ……」
「テメノスさん……いいんですか?」
「いいも何も、……私が、欲しいんです。……だから、ね?おねがい」

 悩まし気にしなを作られ、指先を自ら唇に当ててねだるテメノスのさまときたら、娼婦さながらだった。

「テメノスさんっ!」

 感極まってぎゅうぎゅうと抱きしめてくるのは、この青年騎士の癖のようなものだ。分厚い胸板に潰された乳房と乳首が再び刺激されて、テメノスは甘い声を上げてしまう。

「あんっ、ちょっと、君は、加減ってものをしてください!」
「す、すみません!それじゃ、その、あの……」
「はい。どうぞ。いらっしゃい、子羊くん」

 テメノス自ら秘所を下着をずらしてくぱぁと指先で開き、クリックを誘っている。そこは真っ赤に熟れ、ひくひくと男を誘っていた。
 クリックは最早我慢できず、履いていた下着を乱暴に脱ぎ捨てると、猛りに猛ったペニスをテメノスの秘所に宛がう。愛液でしっとり濡れている秘所は、宛がった矢先からクリックを飲み込む様に蠢いた。

「ん、……くりっく、くん……」

 何もせずとも飲み込まれてゆくペニスに、クリックの気持ちとペニスはどんどんと昂ってゆく。

「テメノスさんっ……最高に……熱い、です……あぁ、持っていかれそうだ……!!」
「はぁん……、は、……や……こわい、くらい、きもちい……」

 ぬるりと侵入したクリックのペニスは何の抵抗もなくテメノスの膣内に入ってゆき、それを良いことにクリックはぐい、と思い切り腰を押し付ける。

「やぁあっ、ちょっとっ、くりっくくん、まってっ!」
「待てませんっ、こんなにっ、女性のテメノスさんの中が、気持ちいいなんてっ」

 がつがつと腰を動かしながら、テメノスの淡い乳房を揉みしだいてクリックは叫ぶ。

「やっ、おっぱいもっ、ナカもっ、一緒にっ、されたら、わたし……わたし……あぁんっ!」
「テメノスさん……テメノスさん……っ!!僕の子供……孕んでください!僕と、テメノスさんの子供なら、きっと、とってもっ、可愛いです……!!」
「はいっ、はい……君の……子供……私も……ほし……もっと、奥、奥に……ちょうだい……っ!」

 クリックのペニスはテメノスの膣内で質量を増し、ぐいぐいと奥を目指す。肉と肉がぶつかり合う音が辺りに響き渡り、淫らな水音が粘着質に聞こえる。やがてクリックの先端部分がテメノスの子宮口に届くころ、クリックの子種は今か今かと解放を待ち望んでいた。

「テメノスさんっ、ナカにっ、子宮の中にっ、僕の精子、出しますねっ!!」
「あ、は……はいっ、たくさん、たくさん、くりっくくんの、せいし、ちょうだいっ!」

 欲に塗れた翡翠の目はクリックだけを見ていて、そして同じように欲に塗れたクリックの蒼もテメノスだけを見つめていた。そして膨張したペニスから、思い切りクリックは精子を子宮の中へと吐き出す。

「ああっ―――――!!きてる、くりっくくんの、あつい、せいしっ、たくさんっ!」
「孕んでください、僕の、僕たちのっ、子供……!」

 どくどくどくどく、と何度も何度も腰を押し付けてクリックはテメノスの子宮内に精子を放った。ありったけの精子を放つと、ゆったりとした動きでペニスを抜く。

「あぁんっ……」

 その動きですら感じてしまうのか、甘い声を上げて身体を捩るテメノスはひどく淫靡で、ペニスを抜き出した後に秘所からたらりと零れ落ちた精子が太ももにかかる様子もひどくいやらしかった。

「はぁっ……はぁっ……テメノスさん……、大丈夫、ですか……?」

 ぐったりと横たわるテメノスの前髪を梳きながら、クリックは茫洋としているテメノスに声をかける。するとクリックの声で現世に戻されたかのように急に翡翠の目は光を灯し、クリックを見つめてきた。細い腕が伸びてきて、クリックの首に回される。

「これで、私と君の赤ちゃん、できたら、どうします……?」

 その言葉に、クリックはテメノスをぎゅっと抱きしめた。

「それは、大切にしますよ!テメノスさんと、同じくらい、大切に、愛します!」

 クリックは大まじめにそう告げると、テメノスの額に優しい口づけを落とす。

「ふふ、君は、優しいね……」
「当たり前です!愛する人との子供を愛せないなんて、人としてどうかしてます!責任はしっかりと、とりますから!」
「うん、ありがとう……夢でも、……仮定でも、嬉しい……」

 言うとテメノスはクリックの逞しい胸板に頬を寄せて、ふう、と息を落とした。

「これからどうなるかわからないけれど、万が一にもそうなったら、よろしくね、子羊くん」
「もうっ!こんな時でも子羊扱いなんですか!」
「ふふふ、私にとっては、君はいつだって可愛い子羊くんなんですよ」

 汗で濡れた金髪の髪の毛をゆっくりと梳きながら、テメノスは蕩けた笑みを浮かべる。その笑みに、つられるようにクリックも笑みを浮かべ、その薄い唇に口づけを落とした。



「んで、結局、治ってないワケ」
「そうみたいですね」
「あたしらは治ったんだけどねえ。やっぱり中出し生セックスしたのがまずかったんじゃない?」
「あのねソローネくん。女性がそうも白昼堂々と言う言葉じゃないと思うんですが」
「何いってんのさ、あたしはとっとと治ってくれて、こうしてワインもたしなめるようになったからよかったけど。本当にどうするの?このまま妊娠したら、産むワケ?」

 真昼間から二人でワインを傾ける影、ふたつ。勿論オズバルドの症状も一夜にして治っており、今は仲間たちと共に談笑している――といっても殆ど無口な彼は、頷くだけなのだが。

「そうですねえ、クリックくんの子なら、産んでもいいと思ってます」

 そう告げるテメノスの顔は、母性溢れる笑みを浮かべていて、ソローネの怜悧な目が余計に冷たくなった。

「はー……」
「ソローネくん、溜息は幸せが逃げますよ」
「逃げてもいいよ、あんた達ののぼせっぷりにあてられて、全く熱くて困ったもんだ」
「のぼせてなんていませんよ。いたって私たちは通常運転ですよ」
「だから、それが、のぼせてるっつってんの。んで肝心の子羊はどうしてんの」
「今は仕事中です。でも、朝も彼、優しかったですよ。私の身体を心配してか、早起きして料理を振舞ってくれたりして。まあ、味はご想像にお任せしますが……」
「はあ、そう。もういいわ」
「あれ?話を振ってきたのは君の方じゃないんですか?ソローネくん」
「後悔してる。むちゃくちゃ後悔してる。ただのノロケ話じゃん。ま、この旨いワインに免じて許してやるけど」
「言っておきますけど、奢りませんからね」
「名探偵、こういう時は奢るのが筋ってもんよ。あんたのそのどうでもいいノロケ話を聞いてやったんだから」
「そういうものですか」
「そういうものなの」
「おーい、いつまで昼間っからこそこそ飲んでんだ!こっちきてもっと楽しくやろうぜ!」
「肉もあるぞーー、肉ー!」

 パルテティオとオーシュットの声にソローネは助け船が来たとばかりに席を立ち、そちらへと向かってゆく。

「はあ。まったく……女性の心理は、わかりませんね……」

 そして一人残されたテメノスは、小さく息を落としてから、自らの腹をさするのだった。

「ここに本当に命が宿っているとしたら……ふふ、クリックくんはどんなお父さんになるんでしょうね」

 その表情は蕩けるように甘く、それをちらりと見たソローネが溜息をこっそりと再び落としていた。