鳥籠
2011年8月発行の同名タイトル同人誌再録になります
ドラマCDに萌えてできた執事由良×お嬢様カイネパロ
自慰描写&暴力描写あり、強姦からの快楽落ち
新宿時代の設定なのでカイネはふつうの女性です
【新宿某所/???】
じっとりとした熱、腸の中に巣食っているドス黒いかたまりのような、忌々しいもの。それは時折疼き、蛇の舌を伸ばして隠微な欲を耳元で囁く――抗いがたいどろどろの欲の塊を、真っ白い陶器のように済んだ素肌の中にこすりつけるようにじれったく、そしてほんの少しだけ、切なさを孕みながら。
「んっ、ハ……ァ……ハッ、は、…アッ!」
薄暗い屋内で、甘さを含む声とともに濡れた音が控え目に響いた。
ぶあついカーテンの閉められた屋内は、しっとりとした空気が淀み漂っている。質量のある空気の中で疼く熱が、神経を焼くようだ。もっと刺激を、より一層の快楽を――囁きに導かれるままに、彼女は身体を自ら辱め続けていた。
透明な唾液が半開きの唇から漏れ、形良い頤をゆっくりと落ちてゆく。しっとりとぬれた頤からおちてゆく均整のとれたラインが時折蠢き、わずかに色気を孕む細い吐息が漏れる。滑らかな素肌には、玉のような汗が浮いていた。
繊細な細工めいた指先が、そのはかなさとは裏腹の乱暴さでもって柔らかな乳肉を掴み、桜貝のきれいな爪ははれぼったく立ち上がった乳輪を不規則に舐る。或いは、更に敏感な乳首を掠める。
つつ、と口端から落ちてゆく唾液に舌を絡めて舐めとると、コクリ、と音を立てて飲み込んだ。生ぬるく、甘ったるく、じわりと口腔内に滲む欲の味をじっくりと味わい、紅い舌先がチロリと塗れた唇を再度舐める。 外気に晒されたままの乳首はいよいよたまらなさに奮え、痛々しく勃起していた。一方下腹部に這わせた指は、そろりと恥毛を掻き分けて目的地へと辿り着く。
「はぁ…ぁン!」
ちゅっ、と密やかな水音。瞬間、ビクリと白魚のような肢体が跳ね、下腹部をまさぐる指先はいよいよ熱に塗れた陰唇を探り当てた。ぬるりとした熱い迸りを爪に絡ませながら、一方のたっぷりの乳房をてのひらが鷲掴むようにねぶり、大きな乳輪をなぞるように二本の長い指が滑る。汗に塗れ、切なさに破裂しそうな乳首の勃起は、僅かに掠めるだけでも想像を絶するような快楽を導く。
「ひぁ、…は、ぁ、ぁ、あぁ!」
悲鳴に近い細い声を断続的に絞り出しながら震える喉は、ぶあついカーテンの隙間から洩れてくる僅かな光に照らされて、艶かしく怪しげにおののいた。
細い指先は、どちらも性急な動きで身体の奥底に疼く熱を引き出そうと性急に動き、最も疼きを覚える蜜壷は既にたっぷりの愛液に塗れ、指にまとわりつく陰唇は、淫らな音を立てながら貪欲に蠢き快楽を求める。
くちゅくちゅとひっきりなしに漏れる音すらも、興奮を加速させ快楽を導くようにしか思えない。躊躇うことなく熱く濡れた秘所に細い指先を埋めるや、ふるりと肢体が震えた。
「ぅん…」
静かな音と共にあっさりと指の一本は第二関節あたりまで入り込み、少しばかり上下に動かしながら更に奥へ奥へと進める。が、それでは足らず、彼女はもう一本の指を更に其処へと導いた。はれぼったい花弁を割り入り、二本の指を折るように膣内を刺激しながら、乳房を舐る指に力を込める。しなるように指が折れて、桜色の爪の色が失われるほどにその爪先が乳首へと食い込んだ。
「ぁひっ!」
細く括れた腰は、快楽を求めるようにゆるやかに動き、素肌はすっかり上気して染まり、玉のような汗が浮かんでいる。
「あ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁあ、あっ、ああぁっ!」
彼女は、その稀なる白い素肌を一枚の薄布に包んだきりの姿で、天蓋付のベッドの上で背筋を伸ばした。
乱れたシーツの上にある黒いストッキングに包まれた爪先がびくびくと痙攣する。
「あひっ、…ひっ、…ぁ……」
徐々に勢いを失う声とともに、濡れた吐息が落ちてゆく。やがて、その身体が弛緩した。
「は、……ぁ……」
未だ快楽が抜けきらぬように、秘所からゆっくりと指を引き抜けば身体がぴくりと動く。「ん…っ」すっかりと指を抜き出すと、それを追うようにトロリとした愛液が流れ出しシーツを汚した。華奢な身体に対してあまりにも大きな乳房だけを露出させ、下着は一切身につけてはいない。太ももほどまである黒のストッキングと、白色のシュミーズだけを纏い、未だ蠢く蜜壷を露に彼女はベッドの上で放心したかのように胡乱な眼差しを虚空へと向けていた。
だから、わずかに開いた扉の隙間に彼女が気づけるわけもなく、忍ばせた足音が遠ざかることなど、知る由もなかった。
【新宿某所】
「くっだらねえな」
興味なさげに呟き、若い男は煙草を床に投げ捨てた。
「貴様!」
「おっと、悪ィ、火の始末はちゃあんとしねえとな…」
ククッ、と喉奥で不愉快な笑いを漏らして、悪びれもせずに無造作に煙草の吸殻を靴でもみ消した。この家の主である初老の男が何かを告げたげに口を開きながら睨んだ所で、口端を歪めるだけだ。そうでなくとも素行の悪いこの由良正義という男は、天災による天涯孤独という身を憐れに思い引取り育てた男の恩を散々に踏みにじり、せせら嗤うような人間だ。恩と情けをひたすらに仇で返され続ければ、いよいよ堪忍袋の緒も限界である。
「誰のお陰で今のお前があると思っている…」
我慢できずに机を叩きながら怒鳴りつけるが、由良はギロリと薄気味割るく光る猫のような目をこちらに向け、チッと舌打ちをした。
「だいたい、貴様は…!」
「うるせぇな!」
男の声に被せるように、由良が怒鳴る。あまりの剣幕に男がびくりと体を震わせ息を飲むと、不機嫌そうに眼を細めながら机を蹴飛ばし、さらにどかりとその上に腰を据え、鼻を鳴らした。そして大仰そうに溜息を一つつき、「だぁから…やる、つってんだろ」ひどくめんどくさそうな物言いとは裏腹の勢いでぐい、と顔をつきつけられ、目つきを除けば端整な顔立ちと射抜く鋭い目線に、一瞬、男は呑まれてしまった。
「やってやるよ。俺も、あいつは元から気に食わなかったんだ……」
ニヤリ、と笑う様は殆ど獲物を見つけた猛獣のそれだ。
「あ、あぁ…」
初老の男は、それだけを言うのがやっとだった。そうして、ごくりと唾を飲み込みながら、由良の猫背が遠ざかってゆくのを視線で追うだけで、精一杯だった。
【新宿某所/カーリーの花壇/お屋敷】
しっとりと濡れた空気の中にも一種清清しさを感じさせる――長雨の間の、ほんの少しばかりの休息期間とでもいうように、久しぶりに垣間見える青空と太陽の光の中、すらりと背の高い白を纏う女性が緑庭に佇んでいた。陽光をきらりと反射する美しい銀糸の髪は丁寧に編みこまれ、後ろでまとめられている。綺麗に切りそろえられた前髪と対照的に左の一房を長く垂らし、彼女が動く度にキラキラと輝きながらそよいでいる。 銀糸にこの辺では珍しいくらいに透明感のある白い肌は、異人種の血を引いているからか。掘りの深い美形ともいえる面立ちも、その印象を強くしている。が、その強い印象の顔立ちを彼女の雰囲気自体が打ち消していた――ひどく物憂げで、常にその瞳には灰色の悲しみのようなものが散見する。
すらりとのびた手足と、女性であるということを否応なしに見せ付ける胸元や括れを、清楚な白のワンピースがすとんと包み込んでいる。素朴なようで、けれども品のよさが伺える装いだ。
彼女は、窮屈な空気からようやく開放されたというように深呼吸をした。
深い緑の空気を吸い込むと、それだけでも心の中にふわりと安らかな、それはとてもささやかではあるがそういうようなものが生まれる気がする。
と同時に、自分が置かれているひどく狭く恵まれている空間が非現実的なもののように思え、だがそれすらも結局はこの世界ではひどく贅沢で自分は矮小でくだらなく、どうしようもない人間なのだという思考にとってかわる――彼女は力なく首を振り、視線をふと落とした。
そこには、先ほどまで振っていた雨に濡れてしっとりとした、白い花が咲いている。真っ白な花弁は見る角度によってはほんのりと青白さを含むも、まるで雪の結晶のような透明さを持っている。すらりと伸びる花弁は薄く、たった六枚のそれが重なる箇所はより白さと青みを濃くし、風に揺れると時折光をきらめかせるようにも見える。
まるで月の光に輝くような神秘的な美しさを持つこの花の名前を、彼女は知らない。
この花を慈しみ、庭師にすら手を出させない祖母カーリーも知らぬのだという。名もなき花、それもこの清楚な花にはよい名なのかもしれない。そういうことを思わせる、どこか陰のある淑やかなこの花の存在感は、彼女の不安定な心には清涼剤のようにしっとりと染みこんでいった。
「カイネ、私たちは数日、留守にします。家のことは由良に任せておきますが、とにかく貴女はいつも通りにしていればよいのです。わかりましたね」
祖母の言葉はこの家においては絶対だ。ゆえに、反論の余地などはない。
実際に孫娘がその通りにする、と彼女は思っている。そこに、孫娘の意志などは介在していない。
カイネは素直に「はい」と応じ頷いた。その素振りにフン、と小さく鼻を鳴らし一瞥を投げる祖母の後ろに控える背の高い男の事をカイネはあまり好きではないのだが、彼は祖母が連れてきた男なのだ。実際に仕事はきっちりとしているし、余計なこともしない。他の使用人たちの評判はあまりよくはないが、それは彼をどうこう言う理由にはならなかった。祖母は、彼を気に入っているのだから。
そして何が気に食わないのかといわれればただの好き嫌いのようなものなのだが、特にその不敵な黒い目――ねめつけるような、あからさまに見下しているような、そんな感覚を憶えさせる眼が、カイネは嫌いでたまらなかった。
「それでは、行ってくるわ」
「はい、行ってらっしゃいませ」
カイネが礼をしている間に、祖母は扉を開け出て行った。バタン、と無機質な音が響く。カイネが顔をあげると扉の前には不遜に笑う男の姿。カイネは思わず己の腕を抱きながら眼を逸らした。くくっ、と小さな笑い声がカイネの耳に届いた瞬間、古めかしいエンジン音がそこに重なり、やがて遠ざかる――カイネは、小さく溜息をついた。 憂鬱だった。というよりも、カイネが憂鬱でなかったことなど、殆どないかもしれない。特に、最近は――― 「それじゃあ、お嬢様。俺は仕事がありますんでね」軽く言う由良の顔を一瞥もせず、カイネは自室へと向かう。もう、今日の予定はない。さっさと部屋にひっこんでしまった方が、この男の嫌な視線を見ることもないだろう。その思いが、カイネの足を早めていた。
メイドが用意してくれた昼食を済ませ、カイネは部屋で寛いでいた。家の中の事は使用人たちにまかせているし、庭も祖母の花壇以外は庭師が手入れをしてくれている。元々そう行動的というわけでもないカイネは、今日もぼんやりと窓辺に佇み、庭師の剪定作業を眺めていた。
都市の中にぽっかりと存在する広大な敷地――その殆どを森が支配しているのが、カイネが住まう「お屋敷」だ。ゆえに都会の喧騒とは程遠く、こうしてぼんやりと午後の時間を過ごすにはもってこいの場所であるのだが。 庭師は、パチンパチンと小気味良い音を立てながら剪定作業をしてゆく。それ以外に音は、存在していない。空は薄曇で、白い午後の光が時折ガラス越しにやってくる程度だ。
突然、身体の最奥がふるりと震える感覚を覚え、カイネは目を瞑りこめかみを抑えた。 ―――まただ。
時折、発作のように訪れるそれは、静かにカイネの理性を侵食してゆく――何の前触れも無く下腹部が火照り、熱が疼いてたまらなくなるのだ。 その疼きをハッキリと意識したのは、胸が膨らみ始めた頃だろうか。
妙に痛む膨らんだ乳房が疼く感覚と初潮を迎えた不安定な心。下腹部の妙な疼きをどうすべきかなど知らぬ無垢な少女は、当然どうしてよいかなどもわからない。ただ、明らかにやせっぽっちの身体には不恰好な、その大きな乳房が嫌でたまらず、どうにかできないかと触れてしまったことが間違いだったのか――まるでそこだけが腫れているように、異物のようにすら思える巨大な乳輪と乳首、鏡で見ればいっそうおぞましくて不気味だとあの時は思った。
痩せた枯れ木にぶらさがる腐れた果実を連想させるようなおぞましいモノに触れたのは、何故だったかわからない。ただ、これが自分の身体の一部なのだと認めたくなくて――あるいは逆だったのか。
だが、そうした思いを抱えながら触れたところで、身体はカイネの望むような感覚を憶えることはなかった。
触れたとたん下腹部の疼きはいっそう鮮明になり、ひくひくと内側から澱んだ熱が蠢く。
おかしい、これはおかしい。そう強く思うのに、カイネの手は別人のように自らの乳房を捏ねていた。柔肉を潰し、薄く変色している乳輪に指先が至ると熱は一層増し、身体には刺激が走った。
そしてその瞬間も、快楽を求めている間も、思考は止まっていた。
不安定な心がどこかに飛んでゆくようで、その刺激を、少女はもっと欲しいと思った。指先が熱っぽくなっている乳首に触れると、刺激はいっそう強くなる。最初はただ乳房を弄っていればよかったが、やがて更に刺激と熱を欲しカイネは自分の身体のどこが反応するのか、どこが最も刺激を得ることができるのかを、まるで溺れるものがワラに縋るかのように捜し求めた。快楽により熱を帯びて蠢く秘所に触れ、自分でもまともに見たこともない膣内に指を入れ、蠢く肉壁を初めて憶えた肉欲の赴くがままにかき回した。何故そんなに求めたのかはわからない。けれどひたすら、飢えたように熱を、欲を、ただ求めた――そうしていれば、不安はすべて消し飛んでしまうから。恐ろしさも違和感も感じることはなく、ただ、そうすれば楽になれる、と少女は知ってしまったのだ。
刹那の安寧のため、それ以降、カイネは密やかにそれを繰り返し続けていた。疼きを忌々しいと感じながらも、一方ではそれを願う。が、熱が引いてしまえば、己の浅ましさを蔑み後悔する。
けれど、こんな話を誰かに相談できるわけもなく、結局それすらも己を慰めることで発散させていた。この発作の理由をカイネは知らないし、身体の周期とは全く無関係で予防しようもないし一度発作が起きてしまうと、カイネにはどうすることもできない。雁字搦めのこの家の中でできることなどそう多くはないし、緩やかに過ごすことでどうにかできるものでもないのだ。
いいようのない罪悪感も常に背負いながら。
―――お祖母さまはいない。けれど――
チラ、とカイネの脳裏を掠めるのは、あの浅黒い肌の男の不穏な眼差しだ。由良とかいう男。どういう理由か、最近執事の座に就いたあの男だ。
カイネは唇を結び、頭を振った。私は何を考えているのだろう。それもこれも、この正体不明の熱の所為だろうか。ひとりごちるまでもなく、胸の中で吐き出してからカイネは溜息をついた。
埒の明かぬ思考をしたところで、一度発作が起きてしまえば下腹部に淀む熱は確実に蓄積してゆく。それがカイネの意志などは無視する暴君であることを、他ならぬカイネ自身がよく理解していた。薄手の夏服の下、身体は静かに欲情している――それでも、以前ならばこんな風にすぐ反応することはなかったのに。堪えるようにギリ、と奥歯をかみ締めて、カイネは窓辺をぐっと掴んだ。
そこに、ノックの音が響く。
「お嬢様、失礼します」
カイネが声をあげるよりも早く扉が開き、件の執事が部屋に踏み込んできた。
ノックの音はカイネの理性を奮い起こす救世主たりえるかと思いきや、絶望を連れてきたというわけだ。
「な、何か用ですか…?」
ぶるりと身体を震わせてから、カイネは歓迎せざる客へ精一杯の拒絶の意志を込めた言葉を返す。が、男はチラとカイネを一瞥すると、小さく嗤った。
「お前…」嫌悪感もあからさまに、が、カイネの意志とは裏腹に疼く熱は膨れ上がっている。由良はねめつけるような視線を向けたまま、喉奥で笑った。
「くっ、く……やっぱり、な…」
にたにたと不快な笑みを浮かべ、由良はくいと頤をあげた。
「何だというのです!」
毅然と、己の内に巣食う忌々しい熱を払うようにカイネは立ち上がり、叫んだ。
「おおっと、これは失礼。いやね、何…」
その声色に、カイネの背筋をぞくりとした悪寒が抜ける。じっとりとこちらを見据える目に射抜かれ、カイネは立ちすくんでしまった――少なくとも、この男はまっとうではない。そう感じさせるようなおぞましい色がそこには沈んでいるように見えたのだ。
カイネが立ち竦んでいるのをよいことに由良は大股で近づき、唐突にカイネの頤を掴んで顔を上げさせた。乱暴な行為に文句を言おうにも、顎をしっかり抑えられてしまい声も出ない。そうしている間にも熱は静かに蓄積し、下肢が淫らに蠢いているのをカイネは感じていた。
「お嬢様、暇つぶしにしちゃあ…少しばかり、やってることに品性が感じられねえな?」
唐突に、男の態度が変じる。
「な…!?」
下卑た言葉をぶつけるや、由良はカイネの身体をぐいと窓辺に押し付けた。そして衣服に手をかける。あまりに唐突な早業にカイネが抵抗する暇もなく、暴漢の手は薄手の服を乱暴に引き剥がし素肌を露にした。繊細なレースに包まれた大きな乳房が、男の視線に晒される。
その目的は明らかだ。カっと頬に熱が昇り、カイネは男を睨みつける。
「き、さま…!」
「おおっと、騒ぐなよ…?」
優しささえ感じるような声で由良はささやき、カイネの耳朶から顎までのラインをそうっと撫でながら耳朶を食んだ。
「……ッ!」
その瞬間に、悪寒とは明らかに違うものがぞくりと背筋を奔り抜けて、思わず熱っぽい吐息を吐き出してしまう。しまった、と思うも由良はしっかりとソレを捉え、耳元に生暖かい息を吹きかけてきている。
「やっぱりな…既に出来上がってるみたいじゃねえか……ククッ、そりゃあ、発情した牝犬みたいな目ぇしてるワケだ!」
言うなり、由良は乱暴にカイネの胸元に手をかけ、下着を剥ぎ取った。
「ひっ!」
抵抗する暇もなく、たぷん、と弾けるように露になるたっぷりの乳房。由良は耳朶から鎖骨へと舌を這わせながら、視線は胸元へと向けつつ囁いた。
「お嬢様のでっかい乳首は既にビンビンじゃねえか…ケケッ」
嬲るような言葉の癖に囁く声は相変わらず恋人へ告げるそれのように優しく、その声色だけでも熱が淀む肢体はひくりと痙攣してしまう。この男は、どうすれば女が感じるか、知っているのだ。絶望にも似た思いがカイネの脳裏を過ぎる。身体の細やかな動きにつられ、張りの良い乳房がその都度揺れて、その存在を主張していた。
由良は、そのまま鎖骨付近をぴちゃぴちゃとはしたない音を立てながら舐めている。
「や、やめ…」
カイネは必死に懇願するが、由良は一切意に介することはなく、どころか乱暴にカイネの肩を掴むや、身体の向きを変えさせて窓ガラスに乳房を押し付けた。
「ひ、や、ぁ…」
ひんやりとした無機質な感触が肌に伝わり、最も疼く箇所をも刺激する。乳房から背筋を貫くものは明らかに快楽に近いソレだ。あまりに浅ましく無様な己の態に、カイネは泣きたさを必死に抑える。
「変態お嬢様は、こうされた方がいいんじゃねえの…クッ、…クカカッ」
誰にも見せたことのない乳房を、外に向けているという事実に、顔から火が出そうなほど恥ずかしかった。涙が出そうだった。だがそのくせ、カイネの秘所はじくじくと疼き、トロリとしたものが下着を濡らす。誰よりも、カイネがその事実に愕然としていた。
だが、カイネがショックを受けている暇はなかった――唐突に、由良の手がカイネの足元に割り込み、強引に下着をずらして熱の渦中をかき回したのだ。
「ひっ、…ぃ…あぁ?!」
「ハハハハ、ハハッ、こりゃあいい、変態お嬢様は乳晒したらマンコぐちょぐちょに濡らしちゃいましたってか?傑作だな?!」
由良の嘲笑が脳をずきずきと刺激する。それは痛みのようでもあり、逆にそのひどい侮辱がカイネの中にある人知れぬ闇を刺激し、快楽の渦へとやさしく誘うようでもあった。
そんな己を認めたくはない、認めるつもりもないカイネの感情はひどく揺さぶられ、混乱し、思考もままならなくて、するとひどくわかりやすい由良の刺激に意識を委ねようとしてしまうのだ。ひどい言葉で罵られて、乱暴なことをされて。けれど、身体はまるで望んでいたかのように反応している。じくじくと疼く秘所もその奥も、そしてそれらを快楽なのだと知っているカイネ自身ですらも。抵抗らしい抵抗など、できるわけもない。
無様だ。
無様で、淫らで、最低だ――自嘲気味な思考がカイネの中で渦を巻いていた。
「あ、…ァ…」
由良の行為は止まらない。カイネの秘所を獣の指で犯して嗤う男は、更にそこに疼く女の熱を煽るつもりかひどく丁寧な動きをしている。強引に抉じ開けられた乙女の秘所が疼き熱を欲するようになる手段を心得ているのか、指先は丁寧に花びらを解し、時折快楽の中心でもある肉芯を掠める程度に動くのだ。そうなると浅ましい肉欲をカイネは拒めない。ぴちゃぴちゃと響く淫らな音が何なのか、カイネ自身がよく理解しているからだ。
はぁ、と荒く熱っぽい吐息とともに、とうとうカイネの双眸からは涙が溢れてきた。羞恥と悔しさと快楽、拒絶と否定と逃避、そして諦めそのすべて同時にこみあげてきて、声すら出ない。
出てくるのはあさましい喘ぐような声と荒い吐息だけ。由良の太い指先はぐっちゅぐっちゅとカイネの秘所をかき混ぜるように動き、時折膣口や肉芽を掠め、そのたびにカイネは小さく声を漏らしてしまうのだ。
「ぁ…ぁ…」
「蕩けまくってるなぁ……?」
ニヤニヤと嗤いながら囁き、逃れるように顔を背けるカイネの頤をペロリと舐める由良の臭いは、ひどく牡を感じさせるそれで、ビクリと身体を震わせながらもカイネの疼きは一層強まった。
「いぁ…ああ…あ…」
由良の指先はカイネの膣口をこじあけ、いまや内部へと侵入しぐいぐいと内側を押し付け、或いは引っかくように動かされている。ちゅぷ、くちゅ、わずかな水音が互いの荒い呼気と共に耳に届く。 その度に、冷たい窓ガラスにカイネは胸を押し付け、いつのまにか快楽を求めるかのように動かしていた。疼く乳首はガラスに触れる度に更に刺激を欲し、乳房が切なさを訴える。
もしかしたら誰かに見られるかもしれない――そういうことを考えると、由良に犯されている膣内が、子宮がきゅっと切なく疼くのだ。そこに男の指がでたらめに動かされ、カイネの理性などはいまや風前の灯だった。
「これじゃあ、俺のモノなんかじゃあ物足りないんじゃねえのか?ギャハハハ…!」
ぐちゅっ、ぐちゅっ、と激しい音とともに、由良は複数の指を抽出させる。
「はっ、あっ、……あっ、んっ!」
いつしかカイネも嬌声を漏らし、由良の指の動きに合わせ、かくんかくんと腰を振っていた。
「クッ、傑作だな!感じてやがる!ははは、なら、変態お嬢様のためにチンポをくれてやるか…」
言うや、由良はカイネの秘所から指を抜き去り、ベルトに手をかけた。カチャカチャという音が背後で聞こえる。何をされるか、漠然と予感しながらもカイネが快楽に淀みつつある眼差しを向けると、赤黒く脈打つ男性器が、既にカイネの尻に押し当てられていた。
「ひっ、…あ……?」
「けっ、物欲しそうなしまらねぇ面しやがってよ……ほらよ!」
「ひぎィ…!?」
ずんっ、と、唐突にうちこまれたソレは、まるで熱の杭だった。
突如打ち込まれたペニスが、カイネの膣内を強引に割り開く――未だ、男の身体などは知らないそこは、流石に唐突に侵入した異物に対して、今までの快楽が嘘のように一瞬驚いたように収縮した。
「ぎ、ぃ、いた…ぁああっ!」
ぶちぶちっ、と生々しい感触が伝わってくる――今まで誰にも許したことのない箇所を、よりにもよってこの、忌々しい男に犯されているのだという実感が、カイネの理性を殴打した。思考は一気に決壊し、悲しみとも絶望ともつかぬ境地に至り、だがカイネは飢えた牝犬のように快楽と苦しみが入り混じる悲鳴をあげるしか、術はなかった。
「ぎぁ、あひ…ぁあああ!!」
「ったく処女かよ…最初からデカ乳首おったててマンコ濡らしたド変態だから、どれだけ使い込まれてるかと思えば…俺は、別に処女に特別な価値なんかあるとは思っちゃあ、いねえんでな…ケケッ」
男の軽蔑しきった声がガンガンと脳裏に響く。ふっ、ふっ、と獣のような息を吐きながら、由良はカイネの腰を両手で固定すると、そのまま背後から前後運動を始める。
「ああ、でも、まあ…締まりは、イイ、なぁ…?」
「ぎっ、いあっ、あっ、ひぁ、あ!」
愉しげな声と共にぐいぐいと膣内を熱した鉄棒で犯されているかのような、擦り切れるひどい痛みと熱にカイネの口からは悲痛なものしかこぼれてはこない。が、それですら男には興奮の材料になるのか――カイネの膣中に埋め込まれた肉杭はいっそう質量を増し、下腹部を圧迫してきた。
「あ、が、ぁ……あ、熱ひぃ…いぐっ!」
痛みに耐えるように歯を食いしばるも、乱暴に犯され身体は揺さぶられ、下肢に力は入らずカイネは窓枠に必死にしがみついてしまうので、結果尻を突き出すような格好になってしまう。
「何だァ?そんなに欲しいのか!」
嘲笑うような由良の声。下品な笑い方で由良はカイネの尻肉を鷲掴みにするや、持ち上げた。 続けて、ずん、と今までにない質量を持つ楔がカイネの膣へ埋め込まれる。
「ひぁあぁああ?!」
あまりの圧迫感と痛みにカイネの双眸からはボロボロと涙がこぼれた。
「こうすりゃ、よーく届くじゃねえか…カカカッ!」
「ぃあっ!」
カン高く耳に障る由良の笑い声と、ぎちぎちと抉じ開けられ穿たれる内部の痛み、膨大な熱と息苦しさで、カイネは呼吸すらままならない。ずんずんと下から突き上げられるたびに身体ががくがくと揺れ、たっぷりの乳房が弾む。最早羞恥心も何も無かった。ただただ、この拷問のような時間が過ぎ去るのを待つのみだ。そう、カイネが心を決めた矢先のことだ。
「…ふむ、これじゃあ面白くねえよなあ……」
不穏な声で由良が囁く。カイネが何かと問う暇もなく、由良はカイネの腰をぐいと持ち上げ――よりによって、由良の一物がカイネの性器にしっかりと銜え込まれているソコを、窓の外へと向けたのだ。
「な、が…あ、…や、やめ……」
「はぁあ?何バカなこと言ってんだよこのクソ変態が!俺らが楽しいことしてる様を、もしかしたら幸運な腐れ使用人が見てチンコ擦るかマンコ濡らすかできるじゃねえか?こいつぁ俺様のささやかな優しさってやつだ」
カイネの顔から色が失せる。そんなことになったら…そんなことになったら!どうして、この屋敷にいられようか。あの厳しい祖母に優しい祖父に自分がこんなことをされているなどと知られたら、どうなるか…とっさに思いついたそれらがして、カイネの顔色を失わせたのだが、そのようなことは由良には一切関係がなかった。
「やぁ…ぁああ!!」
「ケッ、甘ったるい声出してんじゃねえよ、ソレとも何か?あ?俺のチンポで感じちまったか?」
再び重い衝撃が来た。膣内を、子宮を灼熱のような肉棒で蹂躙され、血と汗に塗れ強引に抉じ開けられた秘所は外部へと曝け出され、乱暴に突き上げられてたっぷりの乳房が淫乱に揺れ、カイネの思考の中に既に理性の灯火はなかった。男の動きに同調するようにカイネの身体が揺れる。
肉と肉のぶつかる音、鈍く濡れた淫靡な音、獣のようなハァハァと荒い呼気。淀んで爛れた空気の中で、深層の令嬢はその全てを、大きな乳房も腫れぼったく尖った乳首も、均整の取れた美しい肢体も、熱欲に緩み唾液と汗に塗れた顔も、男根を咥え込んで蕩けきっている秘所も、まさにすべてを曝け出していた。
「あひ、ひぎぃ……ぅああ…」
だらしなく開かれた口からは幾筋も涎が滴り落ち、普段は怜悧で静寂に沈む金色のまなざしは胡乱に濁り切って虚空を見詰めている。
「おいおい、コワれるのが早いだろうよ?」
下品な口調でけたたましく笑い、カイネの耳元をベロリと舐めたあと、由良は抽出運動を再開する。乱暴に、だがリズミカルに音を立てて出入りする由良の性器のその質量が子宮からいちいち響き、身体を揺さ振り、思考を内側から掻き回す。 そのおぞましさと心地よさ―相反するものが一体となり、カイネというひとりの少女を揺さ振るのだ。唾液に塗れ弛緩した唇から漏れるものはすでに獣のそれでしかない。窓の向こう側に見えるのは、あの花壇だ――ひどくつつましく咲き誇る可憐な花々。それを見ている自分は、こうして汚らわしい男に犯され愚かしく腰を振っているのだ。じわりと滲む思考が、カイネの精神を緩やかに侵してゆく。
無様だ。
汚らわしい。
おぞましい。
快楽に飛ばされている筈の思考は、由良に犯されそこに快楽を感じる度にカイネにそう囁く。お前は無様だと。お前は汚らわしく、おぞましいものなのだと。貞淑の皮を被った淫乱で浅ましい獣なのだと。
「ぁひっ、うっあ、ぁあっ、がっ」
「どれ、そろそろっ…出す…ぜっ」
由良が再び、異様に優しい声で囁く。その言葉の意味するところをカイネは暫く理解できなかったのだが、カイネの膣内で由良の性器がいっそう膨れ上がり、男の言葉が現実だと認識させ、そこでようやく気付いた。
「そ、それはやめ…」
カイネが荒い息の中ようやく意志を伝えようとするも、由良はニヤリと悪辣な笑みを浮かべるだけだった。
「今更、そんなお願いが聞けるわけが、ねえ、よなぁ…?キヒヒッ」
言うや、由良の腰の動きは激しさを増す。重さと痛みが加速して、熱欲が交わり灼熱の快楽が一気にカイネの理性を焼き尽くしてしまうようだった。侵入者は内側を、無秩序にかき乱して蹂躙してゆく。
「いぎっ、ぁっ、やめっ、そっ、あっ、いぁっ、ぁあっ!」
結合部から響く忌々しく艶かしい音も激しくなり、互いの呼吸音も荒さを増した。
痛みから逃れんと全身に力が入るも、同時にそこからほんのりと生まれている快楽に戦き欲するのも同じ身体だった。逃れんとする意志と捕えんとする意志は拮抗し、だが強引にねじ込まれる由良の性器はカイネの奥を乱暴に刺激する。 散々刺激され熱に浮かされている淫肉は、結局当人の意志を無視して肉欲を求め、伸縮する。びくびくと痙攣し刺激を求める身体がそれに抵抗出来るわけもなく、ただただ己の内から溢れるそのおぞましさと気持ち悪さに、だらしなく潤んだカイネの双眸からはボロボロと涙がこぼれ、鼻水と涎が混じり声すらもまともに出せる状態ではなくなっていた。
「はぐっ、ぎっ、いっ、いあぁっ!」
「出、る…ぞっ、おっ……!」
絶望を告げる声が、荒く乱れた呼気と共にカイネの耳を舐る。
そして―――――
「あぁああ、いあぁああああ!!」
どくどくと中に注ぎこまれた大量の熱が、容赦なく膣内を、子宮を灼く。どろどろとしたものが内側に満たされてゆく感覚は気持ちが悪かった。おぞましかったし、それを受け入れざるを得なかった己が酷く矮小で下らない存在だと思った。
が、汚された、とは不思議と思わなかった。絶望感もそう感じることはなかった。
ただ、空虚だったのだ。
ぴったりと背後に張り付いた由良の肉体が蠢くさまも、中でその凶器が弛緩した感触も、内側に吐き出されたモノのことも、どうでもよかった。
ただ虚しく、何もない場所にぽっかりと支えもなく、妙にぼんやりと暑くじめじめとした空気の中に自分の身体が漂っているかのような感覚だ。
己を慰め白亜の中に意識を飛ばした直後の空虚感ともまた違う、全身に鋼鉄の鎧をまとったような、手足に枷をつけられているような、逃げ場の無い虚しさが覆いかぶさってくるようだ、と、カイネは思った。
カイネの秘所から億劫そうに由良がペニスを抜き取り、ついで腰に回されていた手が外され、支えをすっかり失ったカイネの身体はそのまま床に投げ出される。床まで切り取られている窓辺に足の付け根を晒し、ひくつく陰唇もそこから流れ出す血液と精液に塗れた液体も、外からは丸見えだった――だが、今のカイネにとってそんなことはもうどうでもよいことだった。
「おい、何やってんだ?まだ終わりだと思ったか?あ?」
「へ……」
乱暴に頤をつかまれて無理矢理に上げさせられた顔、鼻先にぐい、とつきつけられたのは、先ほどまでカイネを犯していたもの――カイネの血と体液に塗れながら再び熱を取り戻しつつある、由良のペニスだ。鼻をつく臭気とグロテスクさにカイネはさっと視線を逸らそうとするも、由良の手がカイネの顎をがっちりと掴み、逃げを許さない。
「しゃぶれ」
ぶっきらぼうに告げられた言葉の意味を、カイネは捉え損ねた。そもそも、こんなものをずっと見ていたくなどない。眉を顰め視界を閉ざそうとするが、「聞こえなかったのか?しゃぶれって言ってんだよこの牝犬が!」
「おぶっ?!」
強引に捻じ込まれた、臭くて熱く蠢くものに口腔内が満たされ、息苦しさに鼻で喘ぐように呼吸するも、うまくいかず再びカイネの双眸から涙が零れた。
「たくよ、変態行為に耽って処女の癖にチンポ突っ込まれてよがってた癖にその程度の知識もないのかよ?え?」
ぐいぐいと乱暴に腰を動かし罵倒してくる由良の言葉がカイネの心をぐりぐりと抉る。悔しさとおぞましさに涙しつつも、口の中に広がる忌々しい臭いと味にすら己の女の部分が反応している事が、由良の言葉の正しさを告げている。
無様だ、という何度目かの諦観がカイネの中に染み渡る。が、諦めたところで口腔内を犯すものがが消失するわけでなく、喉奥につっこまれた息苦しさから逃れられるわけでもなく、カイネはされるがまま、声にならぬ声を上げることしかできないのだ。
「おい、少しはやる気見せたらどうなんだ?え?それとも、その発情マンコに突っ込まれる方がいいってか?」
嘲笑的な言葉の後にあの乾いた笑が続く。その言葉に、子宮の奥がずん、と蠢くのを感じて更にカイネは情けなくなった。無理矢理犯された痛みが抜け切っていないのに、すっかり蕩けてしまったそこは浅ましくも欲に塗れていることが情けなかった。疼きはまだ収まらず、こんなにも嫌悪感を感じる口の中につっこまれている生臭い男のペニスにすら、欲情しているのだ。銜えるにも限界がきて僅かにカイネが顎を動かすと、由良の満足げな吐息が漏れる。
「そうそう、あぁ、歯は立てるなよ?てめぇのマンコ無茶苦茶に犯して、二度と使い物にならないようにしてやっても、いいんだからな…カカカッ」
忌々しい。おぞましい。汚らわしい。だが、何よりも絶望しているのはこの行為に自分が快楽を覚えているということだ。精液に塗れ体液を垂れ流しながらもひくついた性器を外界に晒し、快楽に蕩け痙攣する乳房を露に男の性器をしゃぶっている自分自身が一番汚らわしくどうしようもない存在なのだ。
その諦観ですらカイネの中の快楽を静かに刺激して、口の中で少しずつ質量を増すペニスの味わいを増している。こんなにも臭くて汚らわしいのに、一方ではたまらなく極上の味覚を憶えている。疼く下肢に、たまらずカイネは既にじっとりと熱をたたえつつある秘所に指を這わせる――くちゅりと蕩ける粘着質の音と、火照りがそこには確かにあり、触れた瞬間電撃が身体に奔る。
「だいぶ、…よく、なって来たじゃねえか…」
由良の腰の動きも、先ほどよりも忙しくなってきた。口の中で由良のペニスが震えているのがわかる。カイネの手は秘所とクリトリスを執拗に弄り、もう片方は乱暴に乳房をこねていた。
粘着質で隠微な音だけが、カイネの脳裏に直接響く。臭さも熱っぽさも、最早刺激でしかない。
ひたすらに、カイネはひたすらにそれだけを淀んだ眼差しで欲していた。
「へっ、よし、そのまんま…そのまんまだ…出すぜ…」
由良の甘い囁き。ああ、そうだ、この口の中にたっぷりと臭くて汚らわしい精液を寄越せばいい。息苦しさに喘ぐような、獣じみた声を漏らしながらカイネは思う。
どうせ、こいつも私も獣なのだ。これは獣同士のまぐわいだ。
やがて、由良の呻き声と共に、カイネの口腔内に精液が溢れる。
「うぶっ…ぅ……」
気持ちが悪かった。
気持ちが悪かった。気分は最低だ。ぐちゃぐちゃと自分で自分の秘所を掻き回しながらカイネは生臭い精液をごくりと喉の奥に落としてゆく。子宮が疼き、膨らんだままの大きな乳輪と乳首がひくつく。全身が、びくんびくんと痙攣する。臭い。汚い。だのに、こんなまずいものが、身体の奥を焼いてゆく感覚がたまらなく、疼く。
カイネの顎から由良の手が乱暴に外される。再び、床上に落下する己の肉体。それでも、カイネの指先は執拗に己の秘所にもぐりこみ、ぐちゅぐちゅと音を立てている。
「あぅ……んっぁ!」
剥き出しの尻がひくついて、思わず唇に残る由良の精液を舌で舐めとる。
手が、止まらなかった。蠢く肉は更に欲を欲し、淫らに痙攣している。
「いっ、ひあ…」
「クッ、カカ、こりゃあ……お嬢様は変態で淫乱で、チンコしゃぶってまた感じてるってワケか?本当に最低でクソったれだな!そんなにこのチンポが欲しいのか?あ?」
ゲラゲラと耳障りな声で由良が笑っている。
「ぁ……」
思わず、カイネはこくりと喉を鳴らしていた。
それを認めた由良の漆黒の瞳に残虐な光が奔る。悪魔のような笑みを浮かべて、男は続ける。
「…大丈夫だ、何度だってかわいがってやるぜ…心配するなよ、この牝犬が!カカカカカッ!」
その声が遠く、カイネは切なそうに熱欲に熟れた眼差しをあげる。嘲笑する、まるで黒い影のような黒尽くめの男の、それだけがまるで別の生き物のようにひくついている性器が目に入った。カイネの唾と、精液に塗れているそれは、ひどく隠微だ。
あれが、 ほしい。
ほしいのか、私は あれが 男の、あの、くさくてけがれた、 おとこの もの こくり、と白い喉が鳴り唾を飲み込む音が頭の全体に響いた。自ずと口中に沸いてくる唾は、先ほどたっぷり味わった男の精の味を覚えているからのものなのか。侮蔑するように嘲笑う眼差しに、残虐な炎が灯っている。それですらも、カイネの内側からじわじわと侵食してくる熱が、一層増す。子宮が、疼いた。
「はぁ……ァ、…ぁあ」
「あ?なんだ?」
「あ、……ぅあ……ん…」
くちっと湿った音を立てて秘所から指を離し、膝ともう片方の手で獣のように四つんばいになって目の前にあるペニスへと手を伸ばす。が、それに気づいた由良はくいと腰を動かしてカイネの望みをあっさりと絶った。
「おっと、そう簡単に楽しまれちゃあ面白くねぇからな……ククッ」
愉しげに嘲笑う声と共に、カイネの背後に男は回りこむ。続けて尻の肉を乱暴につかまれ、腰を持ち上げられる。その体勢から、これから起きるであろうことに淡い期待を抱いたカイネの陰部が、再びじわりと疼く。
「どれだけ淫乱で変態なんだよ、お嬢様!汚らしい濡れマンコが弛みきって、中まで丸見えじゃねえか……!」
唾棄するように告げられる声にすら、陰唇が震え愛液がトロリと零れ落ちる。
「よーーーく、見えるなぁ…?精液ぶちまけられてとろっとろに蕩けた、クソマンコ!ハハハッ、感じてやがる、感じてやがる!!」
両腕の肘と膝で身体を抱え、重力にとらわれ垂れ下がった乳房の乳首が床にこすれ、甘い刺激をカイネに与えた。「あ、は…ん!」ビクン、と痙攣するカイネの尻肉に由良の指先が食い込む。その痛みすら心地よく、秘所はいよいよ来るであろう刺激を待ち望むように、ぽっかりと淫らな口をあけていた。
「マジで犬みてぇに発情しやがって…」
嘲る声が、心地よく身体の最奥を刺激する。熱が、いよいよ近づいてくる。
「はぁん……ッ!」
自ら股を開く商売女のように、カイネは腰を揺らして由良の男根をねだっていた。
「……そんなにチンポが欲しいなら、くれてやるよ」
静かな、こんな場合にはそぐわぬほど硬質な由良の声が聞こえる。潤んだ金色の瞳があらぬ方向を向き、半開きの唇からは涎が垂れ喘ぐ吐息はねばっぽく空中に響く。だが―――
「ひぎぁっ?!いっ、ぐっ、ぁああああ!!!!!」
強引に、唐突に捻じ込まれた杭は、カイネの求めていたものではなかった。
唐突に、灼熱の杭がカイネの尻を焼く。
「ぎっ、ぁあああああああ!」
ぶちぶちっと嫌な音がした。
「ひゃーははははは!!!どうだ、イイか?イイだろう?ケツの穴掘られる感覚、たまんねぇだろう?!」
「んぐっ、おぶっ、ぎっ…ぁあ!」
ぐいぐいと、無理矢理に抉じ開けられた肛門は、痛みの感覚そのものだった。
が、そうして痛みに拒絶を示し暴れるカイネの様子は、由良の嗜虐心に火をつけたのか――由良の片手がカイネの髪を掴み、ぐいと引き寄せられる。
「あぁあ!」
「なぁ、感じるんだろ?ババァに隠れて自分でマンコ弄りまくってたんだ、コッチだって弄ってたんじゃあねえのか?!」
「そんなっ、…ひぎぃ、痛…いぁ!」
快楽と形容しがたい痛みに乱暴に揺さぶられ、最早カイネの意識はどこにあるのか、自分自身ですらもわからなくなっていた。
由良に髪を引っ張られ、上半身が仰け反りたっぷりの乳房が乱暴に揺れる様が例え外に丸見えでも、由良に肛門を犯され悲鳴を上げながらも塗れそぼる秘所がじくじくと疼いても、カイネには、もう、どうでもよいことだった。
「痛ぃ、ぁあああ、いあ、あやぁ、止め…!」
「そら、よがり狂うんだよ!オナニー中毒の変態お嬢様が!」
言葉と共に灼熱の杭がカイネの直腸を蹂躙する。強引に割り開かれた割れ目からは出血し、潤滑油代わりになっているのか、純粋な痛みはやがて徐々に別のものに変質していっていた。
「あひ、ぃあ…ぁあああ!ぁあああああ!」
悲鳴に混じる僅かな変化を、由良は見逃さなかった。残酷な笑みがその口はしに浮かぶ――が、既に意志が飛んでいるカイネがそれに気づける由もない。
獣のような格好で肛門を犯されながら腰を振り、乳房を自ら乱暴に揉みしだいて唇からは涎と真っ赤な舌が垂れ、普段は静けさをたたえる金色の瞳はあらぬ方向を向き淀みきっている。
質素な部屋に響くのは、肉がぶつかりあいこすれる濡れた音、獣めいた呼気、甘ったるく蕩けた声。
「あひぃ、あぁあん!ぁああ!」
「ククッ、まったく……牝犬に相応しい格好だなあ?なあ?カイネお嬢さま…?」
髪の毛を手繰り寄せられ、更に上半身が仰け反る。
「はぁ…んあああ!」
由良の吐息が耳元をふっとなぞり、熱っぽく濡れた舌先が耳朶を舐める。低く、やさしく、恋人に囁くような声。肛門を犯され痛みを感じながらも、欲望にまみれた身体はびくびくと痙攣し、刺激を、熱を、欲を、カイネという存在は、ただ求めていた。
【新宿某所】
「ったくどいつもこいつもクズの塊みてぇなゲスどもだらけだぜ……」
ククク、と耳障りな声を喉奥に潜ませ、男は嘲う。
「あのババァも馬鹿だぜ、少しばかり煽てて言いなりになりゃ、あっさりと屋敷の鍵を預けて自分はクソ爺と休暇旅行だと?金持ちは流石にこんな腐った世界でも、やることが違うわな」
見上げれば、空は晴れ渡り、閉鎖された都市の中とは思えぬような空気が流れている。
「大事に大事に腫れ物みたいにして育てた孫娘は、チンポ欲しさに涎垂らして土下座するような腐れ淫乱女だってのに、それも知らずに優雅に自分たちが壊した世界を見物か」
半分ほどの長さになった煙草を面倒くさそうに吐き棄て、残り火に静かに侵食されてゆく整然と刈り込まれた芝生にじっと視線を落とし、やがてその火が草に含まれる露に敗北し、まるで最後の狼煙のような僅かなか細い煙を残してすっかりと消え行く様を眺めていた。
ややあって、由良の表情が歪む。忌々しそうに、苛立ちを隠そうともせず狂犬のように歯を剥き出しにして、小さな舌打ちと共に足元の草を、煙草の残骸ごと、蹴り上げた。
「くだらねぇ」
しっとりと塗れた土と生え揃った芝生が、何度も空中に蹴り上げられる。
庭師が丹念に世話をし驚くほどに秩序だった庭の一角を、男は、何度も、何度も、腹の中に蟠る制御し難い感情をぶつけるかのように、蹴り上げた。
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