ねぇ、ヴァリックならホークの居場所は知ってるのよね?
え?私?私が知ってるわけないじゃない!確かに、ホークの屋敷にあったいろいろな本は貰ったし、前は顔を見に行くこともあったけど…だって、それならヴァリックだって知ってるはずよ。
そういうことじゃない、ってどういうこと?
隠してることなんかないわよ。
そうかなあ、たぶんホークが誰かに居場所を教えるとしたらアヴェリンじゃないの?だって、ホークとアヴェリンは仲良しだったじゃない。それか、イザベラかな…あ、イザベラなら勝手に探しちゃうね、きっと。
それで、話って何だっけ。ホークのこと?何かまた面白いこと思いついたの?違う?
ヴァリックほど優しくはないけど、でも、ちゃんとずっと私のことを見てくれてたんだって、ようやく私わかったの、遅すぎたけど。私、いつも気づくのが遅いの、いつも…全部、後悔ばかり。マレサリ様のことも、ホークのことも。
ううん、いいの、私は平気。それに今の私には、この異民族区でやることがあるもの。私でも結構やれることがあるのね、知らなかったけど。
そういうこと教えてくれたのはホークなの。私バカだから、なんでもホークが教えてくれるって、いつでも、シェムレンの中で色々ワケがわからなくなったら、多分首吊り亭とかロウタウンのバザールとかで、そこにホークがいて、私がわからないことは何でも教えてくれると思ってたの。そうね、ヴァリックとホークは私に教えてくれることが違うかな、あと、イザベラも。
私には家族も故郷も、部族も、なくなっちゃったからね。ほんとのこと言うと、ホークについてけばよかったかも、って時々思う。もう慣れちゃったけど、シェムレンの住処はたまに息苦しく感じる時があって、雨のにおいに砂や埃が混ざってると悲しくなる時があって――うん、そうね、地底から出てきたドワーフが空を怖いとか思うのと、多分同じこと、わけのわからない不安ってあるでしょ、そういう時に、あぁ、もし私がホークについていけていたらなあ!って、想像してみるだけだけどね。だって私はここが故郷で、それはホークが教えてくれたかもしれないけど私が決めたことだから。そんなこといってたら、またホークに怒られちゃう。だから、このこと、言わないでよ?絶対!
ヴァリックもカークウォールを離れるの?
うん、なんとなくね。ホークが街を離れるんだって言い出す前と、なんとなく、感じが似てたから。気のせいだといいけど。
だってイザベラもいなくなっちゃうし、少し寂しいかな。おかしい?
そうよね、おかしくないよね、ああよかった、ヴァリックにまでおかしいだなんていわれちゃったら、結構ショックだもの。
シェムレンが私たちより先にいなくなるのは、仕方のないことだから、私もそう思うようにしてる。でもね、こういう風に考えるのって初めてなの。多分、部族の皆だってあまり考えたことはないだろうし…ふふ、そうね、信じられないってまた気味悪がられるかも。でもいいの、そういう風に思えるようになったってことは、たぶんいいことよ。
友達と離れちゃうのは、寂しいんだって感じるのは、ふつうよね。
違うわよ、ホークが言ったんじゃないの。マレサリ様は誉めてくれるかな。どうかな。
……うん、ありがとう、ヴァリック。森は懐かしと思うけれど、大丈夫、私の故郷はここだもの。
ホークはどうしてるのかな。会いに行きたいとは思うけど、私は迷惑にならないかな。
なんだかね、…私、ちょっと辛いの。ホークは私が会いに行くと喜んでくれるし、おかしなことを言って私を笑わせるのは変わらないのに、少し、少しだけ、…私の知ってるホークと違うって思っちゃう。変わってないって私は思いたいんだけど、でも、違う感じがする。うまく言えないけど、ホークと話をしてても私、急に寂しくなっちゃったりするの、なんだろう、こういうの。
でもね、もし、もしかしたらホークに助けが必要だってわかったら、私はホークのこと助けたいと思う、私は今までずっと、沢山、ホークに助けてもらってきていて恩返しなんかできてないから。何もわからない馬鹿だった私のこと見捨てないで、ずっと見守ってきてくれてたから。ああいうときに、一人じゃないって…すごく、…ほんとうは、すごく、幸せななことだったって、ようやくわかったの。私は独りだってずっと思い込んでたけど、そうじゃなかったの。
それに…マレサリ様には、結局、何も、…私、何も、できなかったから。
あ、勿論、ヴァリックにだって沢山感謝してる。ちゃんと恩返しはするわよ。だから、ヴァリックがあんまり色々と変な事を書かない範囲で、私の知ってる教えていい部族のことだって教えるの。あと、異民族区のことも。うん、ヴァリックは悪いようにはしないって知ってるもの。
ホークみたいな言い方?そうかな、ホークならこういうことは、もっと意地の悪い言い方しない?ふふふ、そうだよね、私なんか、まだまだだもの。